芹沢亀吉
2024-09-07 01:06:07
257331文字
Public キングギドラ
 

巨神聖戦記

2020年6月11日にTwitterに投稿した暴虐な軍国主義者、楠木武が恥をかく物語の通算11話目の加筆修正版をPrivatter+に投稿。キングギドラが主人公を担いゴジラ、モスラ、ラドンも大活躍。残忍描写濃い目なので閲覧注意。菊タブー?何それ?


 ジョナへの内通者を除くほぼ全ての自衛官が皇居全壊及び皇族全滅に衝撃を受け自決したため、現在信太山駐屯地の敷地内は迷彩服を着た死体だらけ。藤崎は暗号化されたサイトを経て上官、同僚からいじめに悩む自衛官達の相談に乗り、ジョナへの内通を勧めていた。ジョナに内通する自衛官の過半数が女性なのは、上官からのセクハラに悩む女性自衛官達に親身になって接した藤崎の働きに依るところが大きい。

「ありがとう、貴方達のお陰でこの駐屯地を制圧出来た。」

「こいつら全員勝手に自決したので頂いた毒薬の出番もありませんでしたよ。それにお礼を言いたいのは僕の方です。背中にタバコの火を押し付けてきてニヤニヤ笑っていたこの最低上官に一矢報いる機会をくれたのは他ならぬ貴方ですので。」

「このクズ司令、自決強要してきたので眉間と心臓撃ち抜いてやりました。このクズ司令の部屋から私の下着全部出てきてやっと犯人わかったのが本当に良かったです。自分の下着が次々無くなるのが本当に怖くて怖くて仕方ありませんでした。」

 藤崎は戸籍上死んだことになっている自分に礼を言う内通者達に苦笑し、ジョナと共に司令室内の画面を眺めた。画面に映っているのは数分前まで皇居だった一帯に他ならず、大爆発並びに大規模な地盤沈下により全く原形をとどめていない。そして轟天号を撃墜させ皇居を全壊させたばかりの二神の目の前に突然姿を現した黒い巨体、藤崎はその姿に見覚えがあった。

「あれは古史羅です。こちらの屏風で姿を確認することが出来ます。まさか生きた個体がいたとは。」

 藤崎が指差したタブレット端末の画面は『古史羅ノ図』を表示中。この画像を撮影したのは昨年イギリス海軍兵士達に紛れミサキオクに潜入したジョナの部下達である。なおミサキオク自体は昨日暴動の最中に全焼した。外道自衛官共が在日外国人と決め付けた地元の人々を大勢幽閉し火を放ったからだ。

「そんな屏風もあったな。旧日本軍ごときに討伐された巨神には程遠い存在には興味が無いからすっかり忘れていたよ。」

 古史羅が旧日本軍の通常兵器により討伐される程度の存在であることをしっかり覚えているあたり、すっかり忘れていたという物言いはジョナ一流のユーモアといったところか。

 藤崎の言う通りキングギドラとゴジラの目の前に突然姿を現した巨獣は古史羅である。前述の通りかつて旧日本軍に討伐された個体は現在骨がロボ古史羅の素体として利用されていて、今現在二神の目の前にいる古史羅は当然別個体。この時二神はあることに気付いた。古史羅の後方、ここに姿を現すまでの経路に残した筈の足跡が全く見当たらないことに。

 ゴジラがキングギドラを睨み手出し無用と伝えると、中央の首は黙って頷いた。古史羅は放射熱線を撃ち込み例の「特異点」を消し去ったゴジラを激しく憎み、事情を把握しているゴジラは単独で片を付けることにしたのだ。そして左の首がいつも通り古史羅を興味深げに眺めているのに対し、右の首は古史羅には見向きもせず鼻息を荒げ早くやれとゴジラをせかした。

 古史羅は上顎と比べ下顎が大きく、ゴジラを睨み咆哮すると口が異様に大きく裂け何故か舌が無い口内には歯が何重にも生えている。上顎外側の犬歯が目立ち膝が無駄に太い割に膝より下は細めとただでさえ歪な姿形だけに、この巨獣が咆哮する姿は正視に耐えない。しかも自然の調和を乱す紅塵の発生源、「特異点」を消し去った恨みとゴジラを憎悪する動機が余りにも逆恨み過ぎる。

 ここでゴジラが負けじと咆哮した途端に頭部が霧散した古史羅は全身がみるみるうちに消滅していく。足跡が見当たらないことから目の前の巨獣が幻影だと気付いたゴジラの読み通り、放射熱線を吐くまでも無かったのだ。単独で片を付けるゴジラの意向を即座に理解し頷く中央の首、珍しい幻影を観察する左の首、早く幻影を始末しろとゴジラをせかす右の首と、キングギドラの各首もゴジラ同様古史羅が幻影であることはお見通し。

「あれほどの巨体にも拘らず足跡が無いのが妙だと思っていたが、なるほど幻影だったか。その幻影を一瞬で霧散させる咆哮というのも地球最強の巨神ゴジラの面目躍如だな。それでこそ王なるギドラの宿敵に相応しい。おっと今は休戦中だったか。」

 ジョナは一貫してキングギドラ派ではあるものの、咆哮だけで古史羅の幻影を消し去るゴジラの猛威を画面越しに目撃し少しばかりゴジラ派に傾きかけたのかもしれない。どちらにせよ巨神そのものへの畏敬の念は揺るがないが。


 ゴジラが咆哮した途端に霧散し始め、瞬く間に消滅した古史羅の幻影。咆哮し幻影を消し去るぐらい朝飯前なキングギドラではあるものの、今回はゴジラの意向を尊重し見物に徹している。そのキングギドラの足元の瓦礫が数分前まで皇居の桜田門だったと言っても誰が信じるだろうか。