芹沢亀吉
2024-09-07 01:06:07
257331文字
Public キングギドラ
 

巨神聖戦記

2020年6月11日にTwitterに投稿した暴虐な軍国主義者、楠木武が恥をかく物語の通算11話目の加筆修正版をPrivatter+に投稿。キングギドラが主人公を担いゴジラ、モスラ、ラドンも大活躍。残忍描写濃い目なので閲覧注意。菊タブー?何それ?


 パウルが真っ赤な両目でマリアを見つめると、彼女は優しく微笑んだ。

「鳩さんを想って真剣に泣けるって凄く素敵。それは命を慈しむ心。大抵の人は大人になるとずるくなってそうした純真さを小馬鹿にするようになるけどパウルは違うね。誰か酷い人に矢で射られて道端で苦しんでいたこの鳩さんは、最後の最後までパウルに大切にしてもらって幸せな最期を迎え天に召されたんだよ。その命を慈しむ心、これからも大切にしてくれたら嬉しいな。」

 するとパウルは涙を拭いながらマリアにこう言った。

「僕が海洋生物学を学んでいるのはこの地球の生命の源、海について詳しく知りたいからだ。お母さんはO型、そして僕はAB型だから血の繋がりが無いのは知っているよ。でも血の繋がりなんか関係無い。今まで僕のお母さんはずっと貴方だったしこれからもずっとそうだ。そのお母さんに僕は誓うよ。これからも海について学び、命を慈しむ心を大切にするって。」

 パウルの純真さ及び真摯さに心打たれ、今度はマリアの両頬を涙が伝う。

 突然夢の映像が金星の宮殿内部に切り替わり、諸侯がホシェルに頭頂部を向けひれ伏している。この時ホシェルが激しい自己嫌悪に襲われたのは自分が皇帝即ち人々を階層化し抑圧する構造の頂点であることに良心が耐えられないからだ。

「即位式は中止だ。僕は外を歩きたい。」

 そう言って一人宮殿の外に飛び出したホシェルを荒れ果てた世界が出迎えた。枯れた森、白骨化した動物達、金星人による環境破壊が数多くの生命を奪った惨たらしい現実に直面しホシェルの両目から涙が溢れ出す、大粒の涙が。

「これが、これが金星人の、金星帝国のやったこと、何て罪深いんだ。お、恐ろしい。」

 今度は夢の映像が金星帝国の参謀本部に切り替わり、宰相ヨヴェルをはじめ帝国の幹部達が自然豊かな惑星、地球を侵略する計画について話し合っている。その侵略計画の中心人物は金星帝国皇帝であるホシェル自身だ。ホシェルは納得した、自分達の自然破壊を全く反省せず他の星の侵略まで企てている金星帝国はキングギドラに滅ぼされて当然だと。

「あの三頭龍は暴悪龍なんかじゃない。本当に暴悪なのは金星の自然を破壊し尽くし他の星を侵略しようとするこの金星帝国だ。」

 途端に目を覚ましたホシェルは先程の酷い頭痛が嘘のように消えていたにも拘らず何故か気分が晴れない。そんなホシェルの首から下を覆う毛布は意識を失っている間にヨヴェルがかけてくれていたもの。

「ルクス様!お目覚めになられましたか!エレボスに到着しインドラの機体表面の放射能除染も完了しました!さあ降りましょう!」

 ヨヴェルに先導されホシェルがインドラから降りると、エレボスの住民達が総出で出迎えた。実のところアンナの先祖をはじめ金星人女性は地球への亡命後金星帝国再興に反対したため全員追放され、今現在エレボスには女性が一人もいない。男性ばかりが暮らす深海都市エレボスでは住民達の世代交代がクローン技術頼みなのは当然の帰結と言える。

「ルクス陛下、マスティマ閣下、よくぞご無事で戻られました!いよいよ地球制圧ですね!あの日の出も我々を祝福しております!」

「あの恐ろしい暴悪龍に立ち向かい見事に打ち倒したルクス陛下とマスティマ閣下の武勇は永遠に語り継がれるべきです!」

「皆さんありがとう!見ての通りルクス様も皆さんの歓迎を大層お喜びだ!」

 エレボスの住民達並びにヨヴェルをはじめ側近達がもう地球を制圧した気になり舞い上がる中、ホシェルはずっと憂鬱な表情だ。

「ルクス様、皆に向け何か一言お願いします!金星帝国皇帝として皆の魂を揺さぶるお言葉を期待しております!」

 すると先程目を覚まして以来黙り込んでいたホシェルが口を開いた。