芹沢亀吉
2024-09-07 01:06:07
257331文字
Public キングギドラ
 

巨神聖戦記

2020年6月11日にTwitterに投稿した暴虐な軍国主義者、楠木武が恥をかく物語の通算11話目の加筆修正版をPrivatter+に投稿。キングギドラが主人公を担いゴジラ、モスラ、ラドンも大活躍。残忍描写濃い目なので閲覧注意。菊タブー?何それ?


「母さん出て行ったって嘘だよね。あの置き手紙は父さんの字だ。ひょっとして父さんは母さんを殺して遺体をどこかに隠したの?」

 ワイングラスが武の右手から滑り落ち、床に直撃し粉々に。会場内にて鶴が独唱中の『Time to Say Goodbye』がテラス出入り口付近にいる楠木親子の周囲にも響き渡り、違う意味で場を盛り上げる。

「な、な、何を言う!久代は確かに出て行ったんだ!俺は久代が自宅から出て行く瞬間をこの目で見たんだ!ま、間違いない!」

 突然正義から配偶者殺害を糾弾され、ほろ酔い気分が吹き飛んだ武は苦し紛れの嘘をついた。

「父さんは嘘をつくとボロが出るね。この前は帰ったら置き手紙だけあったと言ってたじゃないか。身内殺しを隠蔽する殺人犯が出世する組織とか最低過ぎて陸自に入った僕自身を呪いたい気分だ。あれ?僕を在日認定しないの?この前だって一ノ瀬由衣は在日と言ってたし、目障りな人を在日認定するのは父さんの趣味だよね。だから父親に刃向かう無礼な僕を在日認定してよ!早く!」

 一人息子の剣幕に圧倒され、楠木は一目散に会場へと逃げ込んだ。一部始終を遠巻きに見ていたホシェルがオレンジジュースを飲み干すと、ゆっくり接近してくる正義の姿が視界に入った。身長170cmに満たない正義の痩躯が何故か妙に大きく見える。

「先程僕はパンを食べワインを飲みました。イエス・キリストが最後の晩餐で弟子達に分け与えたものと同じです。轟天号を完成させたのは父ではなく貴方達金星人なのは存じております。貴方達はこの国を滅ぼすおつもりですよね。滅ぼすのはなるべくお早めにお願いします。あんな殺人犯が防衛相として威張り散らしている国なんて早く滅ぶべきです。ではまず僕自身が滅びます。」

 正義の悲壮な決意と父親の比ではない聡明さに驚愕し、ホシェルは全身の震えが止まらない。ホシェルに一礼し会場に戻った正義は演台に立ち、9mm拳銃を取り出して自分の頭を撃ち抜いた。途端に会場全域を悲鳴が覆い最早祝賀会どころではない。

「正義お前、酔った勢いで俺を罵倒したことを死ぬほど悔やんでいたのか。だけどな正義、本当に死ぬことはなかったんだぞ。」

 自ら死を選んだ一人息子の本心に全く気付いていない楠木は体中の血液を抜き取られたような表情である。呆然と佇む武の目線の先の正義は仰向けのまま両目を見開き瞬き一つせず、お洒落な模様の絨毯には赤黒い血がべっとり。

「あの時楠木正義は父親をいつでも射殺出来た筈なのに最期まで撃たなかった。我々金星人の本心とこれからすることを承知の上で母親の仇、楠木武に究極の絶望を味わわせるためだ。我々の計画を母親の復讐に利用する本当に恐ろしい青年だよ。」

 拠点に戻ったホシェルから祝賀会の一件を聞き、ヨヴェルは怯えながらこう言った。

「楠木正義、あの青年のクズ父親には無い純真さと聡明さが本当に恐ろしいです。やはり私は祝賀会に行かなくて正解でした。」

 一方サンフランシスコでは猿達が自動小銃を撃ちながら暴れている。猿達を率いるボノボ(※チンパンジーの一種)のコバはジェネシス製薬会社の実験室にて新薬を投与され続けた影響により極めて知能が高く、実験動物にされ続けてきたためヒトへの憎悪が非常に強い。コバは同じく実験動物にされた猿達と共に蜂起し、動物園の猿達にも新薬を投与済み。

「サイバーテロに日本の侵攻の次は猿達の反乱か!いい加減にしろ!」

 サイバーテロ及び日本の軍事侵攻によりアメリカ政府自体が瓦解したため警察も州兵も組織立った行動を取れず、ただでさえヒトを上回る身体能力を持っている上自動小銃の撃ち方を即座に理解する知能を得た猿相手にヒトは防戦一方。サンフランシスコのランドマーク、ゴールデンゲートブリッジも今ではSWAT残党と猿達の戦場に。

「猿共に負けるな!奴らをサンフランシスコ湾に叩き込め!」

 猿達を愚弄するSWAT残党は横倒しにしたイエローバスに進路を阻まれ、橋の鉄骨部分や上部のケーブルといったヒトが通れない場所からオランウータンやチンパンジーが一斉に襲撃というコバの作戦により次々やられていく。そこに『ワルキューレの騎行』を大音量で鳴らしながらUH-60ブラックホークヘリ部隊が襲来して猿達への一斉射撃を開始し、怒りに震えるコバが力の限り叫ぶ。