芹沢亀吉
2024-09-07 01:06:07
257331文字
Public キングギドラ
 

巨神聖戦記

2020年6月11日にTwitterに投稿した暴虐な軍国主義者、楠木武が恥をかく物語の通算11話目の加筆修正版をPrivatter+に投稿。キングギドラが主人公を担いゴジラ、モスラ、ラドンも大活躍。残忍描写濃い目なので閲覧注意。菊タブー?何それ?


 ペットホテルから引き取ったペロと共に帰宅した一ノ瀬並びにアイリーンは心身共に疲れきっている。射殺されそうになるわ、不当逮捕されそうになるわ、悪意ある取材に晒され続けるわとここ数日で数年分歳を取ったような気分だ。そんな中いきなり一ノ瀬のスマートフォンが振動し、表示されている電話番号に見覚えがある一ノ瀬はまた矢口かと呆れ顔。

「もしもし、もう二度と電話かけてくるなと言った筈だけど。」

「私は日本国首相の門長だ。突然の電話で申し訳ない。実は君に首相補佐官をお願いしたい。」

 電話の相手は矢口ではなく門長であった。自衛隊を動かし迫害してきた門長とは口もききたくないのが正直なところとはいえ、その門長の申し出が意外過ぎて一ノ瀬は戸惑いを隠せない。無論一般人である一ノ瀬に日本国首相である門長が直接電話すること自体が異例中の異例だが。

「今日エイプリルフールじゃないんだけど。ああそうか、あんたは年中エイプリルフールだっけ?」

「私は本気で君に首相補佐官をお願いしたいんだ。何しろ君は陛下のご落胤なのだからな。」

 門長は密かに採取したDNAサンプルにより一ノ瀬が天皇清仁と実の親子だと判明した旨を伝えた。

「陛下がまだ皇太子殿下だった頃侍従の一ノ瀬桐子と良い関係になった。彼女は陛下の子を懐妊し皇太子妃殿下、現在の皇后陛下が大層激怒され宮内庁を追われたんだ。そして君こそその時彼女が懐妊した陛下のお子だ。この件を陛下にお話ししたところ、皇族扱いは無理だが自分の血を分けた娘にそれなりの地位を与えて欲しいと仰せられた。では早速手続を。」

 一方的に話を続ける門長を一ノ瀬が凄まじい剣幕により遮る。

「勝手に私のDNA調べて清仁の子だから補佐官になってとかふざけんな!母さんは女手一つで私を育て亡くなるまで父のことは一切話さなかった。母さんを妊娠させ宮内庁から追放されるのを止めもしなかった清仁が今上天皇とか冗談じゃない!血統ばかりありがたがるからこんなふざけたことがまかり通る!私に父親なんていない!庶民から搾取した税金で贅沢に暮らす皇族共と一緒にされたくない!消費税増税で庶民を苦しめ憲法9条無視してアメリカ攻めて大勢殺したお前の悪政を補佐する気も一切無い!」

 一ノ瀬の剣幕に圧倒され椅子ごと背後に転倒した門長は後頭部を床にぶつけ失神した。電話を切った一ノ瀬はアイリーンに抱きつき号泣している。この時初めて親友の号泣する姿を見たアイリーンは両目に涙を浮かべながら優しく一ノ瀬を抱きしめた。

「由衣ちゃん、気が済むまで泣いていいよ。私も一緒に泣くから。由衣ちゃんは泣いているところを人に見られて笑い者にされるのが怖くて今までずっと泣きたくても泣けなかったんだね。でも大丈夫、ここには泣いている由衣ちゃんを笑い者にする人は誰もいないから。今夜は2人で一緒に泣こう。由衣ちゃんの父親が誰であろうと関係無い。由衣ちゃんはこれからもずっと私の親友だから。」

 この時ペロはもの言いたげな表情を浮かべ一ノ瀬の左膝に優しく右前足を置き、彼女を慰めようと一生懸命な健気さが見て取れる。

 程なくして意識を取り戻し慌てて清仁に電話をかけた門長は後頭部にアイスノンを装着していて、またもや今上天皇のわがままに振り回されたこの日本国首相は二重の意味で頭が痛い。

「そうか、彼女は断ったか。まさかと思うが彼女はこの件を週刊誌に売ったりはしないだろうな?」

「彼女と陛下の件は一切記事にするなと全出版社に通達すれば問題ありません。菊タブー様様です。第一彼女は執拗な取材で週刊誌は勿論報道陣自体を嫌悪しており、自身の着替えや入浴姿を盗撮したアダルトビデオ制作会社を他の被害者達と共同提訴し盗撮DVD販売を取り止めさせた件以来制作会社側に立ち彼女を叩いた週刊誌やスポーツ紙から敵視されています。」

 天皇清仁は一ノ瀬の件が週刊誌沙汰になるのを恐れていたものの、門長の解説に安堵しほくそ笑む。ちなみに先程曾根崎署近辺にて一ノ瀬及びアイリーンを助けた鈴木並びに工藤も共同提訴の原告団の一員。

 そもそも一ノ瀬は天皇清仁が自分の父親かつ母桐子を捨てたと知り号泣するほど傷ついた身故、その件を世間に暴露などと心の傷を自ら抉るような真似をする筈が無い。反天皇制を公言する日本舞踊家の園清そのきよ千尋ちひろを転落事故に見せかけ殺害するよう国家公安委員長に指示する等、菊タブーをいいことに陰で散々悪事を働いてきたこの今上天皇は後ろめたさから疑心暗鬼に陥っている。この後ろめたさは己の悪事がいつか露呈するのではとの不安に起因し、清仁本人はどれ程悪事を働いても良心の呵責など全く感じない。