芹沢亀吉
2024-09-07 01:06:07
257331文字
Public キングギドラ
 

巨神聖戦記

2020年6月11日にTwitterに投稿した暴虐な軍国主義者、楠木武が恥をかく物語の通算11話目の加筆修正版をPrivatter+に投稿。キングギドラが主人公を担いゴジラ、モスラ、ラドンも大活躍。残忍描写濃い目なので閲覧注意。菊タブー?何それ?


「女の分際で長州一の超絶美男子、リョウアズマ様の楽しみを邪魔するなオラ!自分が大和撫子だからって調子乗んなオラ!俺様は高校時代に美女5人と付き合っていた超絶モテモテ美な、って、熱い!熱い!熱いぃ!」

 ロケット花火が直撃し頭髪が勢いよく燃え始めた徳山にはアイリーンらに罵詈雑言を浴びせる余裕など無い。ネット上にて非難が殺到し収拾がつかない事態を俗に炎上と呼ぶとはいえ、今の徳山の場合文字通り頭髪が炎上中。

「何かもう色々間抜け過ぎでかける言葉も見つからない。アイちゃん行こう。明日は奈良だよ。」

「うん、あの人あれで少しは頭を冷やしてくれればいいな。」

 鉾流橋ほこながしばしを渡る一ノ瀬とアイリーンは岸に上がったずぶ濡れの炎上野郎を呆れながら見下ろす。中央公会堂が建つ中之島は先程炎上野郎が飛び込んだ堂島川及び土佐堀川に挟まれ、近くに建つ東洋陶磁美術館は日本、中国そして韓国朝鮮の貴重な陶磁器を所蔵している。突然「へっへっへっへっ」と息を上げ駆け出したペロは炎上野郎など見飽きたのだろう。

畝傍うねびぃ、畝傍でございます。お降りの際はお足元にご注意下さい。」

 JR桜井線、通称万葉まほろば線が畝傍駅に到着し、古びた無人駅に日差しが照りつける中改札口からでてきたのは一ノ瀬とアイリーンの2人。奈良市内のペットホテルにペロを預け、女性2人は「神武天皇陵」へと向かった。

「ここは幕末に天皇陵ということにされた場所で、国を挙げての拡張工事で全国から集められた巨木が植えられたんだよ。天皇陵としてでっち上げられる前は田圃の中の小さな塚だったことを示す絵図もある(※後藤秀穂『皇陵史稿』木本事務所 1913年 P.192、住井すゑ・古田武彦・山田宗睦『天皇陵の真相』三一新書 1994年 P.161)。神武天皇自体が架空の存在なのは考古学界の常識。」

「流石アイちゃんは考古学者だね。宮内庁が各地の天皇陵の発掘調査を許さないのは、天皇陵でも何でも無い場所を天皇陵だと言い張っているのを隠すためなのは私でもすぐにわかるよ。」

「中国人の私がこんなこと言ったらまた工作員だとか言われそうだけど、天皇陵はちゃんと調査するべきだし、私もその調査に参加したい。天皇陵だと嘘をつかずに当時の人達が残したものを一つ一つ丁寧に調べるのが考古学だから。」

 考古学者としての抱負を語りながら目を輝かせるアイリーンを見て一ノ瀬は微笑んだ。国家権力にも多数派にも媚びず純粋に考古学者としての使命を追究、このアイリーンの真摯な姿勢は同じ研究者として見習うべきものだと一ノ瀬は考えている。

 100年ほど前、この「天皇陵」を見下ろす位置にあるのが不敬という差別丸出しの理由により畝傍山中腹の被差別部落が強制移転させられた。アイリーンと一ノ瀬の目の前の「天皇陵」は現在も根強く残る部落差別の歴史を語る際には欠かせない。皇族共は出自により貴いとされ、被差別部落の人達は出自により賤しいとされる。天皇制と部落差別が表裏一体なのは「貴あれば賎あり」の言葉通り。

「由衣ちゃん、そろそろ行こうか。」

「丁度いい時間帯だし近くのおふさ観音でお昼食べよっか。あそこのハーブカレーは私のお勧め。」

 2人が向かった十無量山観音寺は、おふさという娘が白い亀に乗って現れた観音菩薩を祀ったのが起源という350年ほど前の伝承からおふさ観音と呼ばれている。この寺院の本堂は庶民の自発的な寄付により建立され、近くにある国家権力が多額の税金を浪費し人々を動員してでっち上げた「天皇陵」とはものの見事に正反対。境内では約4000種類のバラをはじめ、四季の草花を見ることが出来る。

「由衣ちゃんのお勧めのハーブカレー、上品な辛さが程よく口の中に広がる感じが素敵。」

「アイちゃんにそう言ってもらえるとお勧めした身として凄く嬉しい。このハーブティーもいい香りしているよ。」

 境内の茶房『おふさ』に入ったアイリーンと一ノ瀬は昼食のひと時を満喫し、国境の枠を超えた2人の友情は傍目から見ても誠に微笑ましい限り。昼食を終えた2人は本堂に行き十一面観音像を参拝した。本尊を祀る厨子は毎年4月17日と18日のみ開扉され、現在2人が拝んでいるのは本尊を守護する「お前立ち」。おふさ観音を出て畝傍駅に戻った2人は再びJR桜井線に乗り奈良市内を目指す。