芹沢亀吉
2024-09-07 01:06:07
257331文字
Public キングギドラ
 

巨神聖戦記

2020年6月11日にTwitterに投稿した暴虐な軍国主義者、楠木武が恥をかく物語の通算11話目の加筆修正版をPrivatter+に投稿。キングギドラが主人公を担いゴジラ、モスラ、ラドンも大活躍。残忍描写濃い目なので閲覧注意。菊タブー?何それ?


 ジョナが楠木を放置し映像を切り替えると、画面に横倒し状態の第五福竜丸が映し出された。ゴジラが全身を灼熱化させ熱波を周囲に放射した際記念館自体は消し飛んだものの、その前にゴジラが東京に上陸した際の大波により5km以上流された第五福竜丸は結果的に難を逃れることが出来たのである。

「皇居も国会議事堂も官邸も全壊したのに第五福竜丸はほぼ無傷で残りました。これは最早偶然などではなく奇跡ですよ。1954年にアメリカ軍がビキニ環礁でやったことを忘れるなという天命としか思えません。」

「正直これには私も驚いたよ。藤崎さんが言っていることにも頷きたくなる。そういえばゴジラも第五福竜丸も同一の熱核爆弾による死の灰を浴びた存在だったな。」

 画面越しとはいえ文字通りの奇跡に直面し、危険と隣り合わせの人生を歩んできて多少のことでは驚かないジョナも驚きを隠せない様子。

 内通者達は死体の片付けを終えると信太山駐屯地内のさざれ石を的にして射撃訓練を開始した。『君が代』の歌詞にも登場するこの石は協調団結の象徴、即ち日本という国がどれだけ間違ったことをしていても一致団結しお上の命令通り動けという欺瞞の象徴故、反政府主義者集団であるジョナ一行にとっては射撃の的にうってつけ。

「てっきり鉄拳制裁されると思っていたので驚きました。」

「暴言や暴力で部下を押さえつけても真の信頼を得ることは出来ない。貴方達も暴言や暴力で押さえつけてきた上官を憎悪しているからこそ私達に内通したのだろう。私だって海兵隊に属していた頃はアラブ系かつ性別違和の身故同僚や上官から色々な目に遭わされた。そんな私達の事情を察している隊長は私達に暴力を振るうことは勿論暴言を吐くことも無い。」

 修羅場をくぐり抜けてきたジョナ一行の指導は過酷と覚悟していたものの、今は死亡している陸自の上官達と違い暴言や暴力が全く無いため内通者達は皆驚いた表情だ。この内通者達はトラウマになるぐらい理不尽な暴言暴力に晒され続けてきたのである。

 世間一般に霞ヶ浦と呼ばれている茨城県内の大きな湖は西浦とも呼ばれる狭義の霞ヶ浦に常陸利根川、そして北浦を含む。現在その北浦の水面に巨大な死骸が横たわっている。この死骸、よく見ると先程キングギドラとゴジラがいる都心に出現した古史羅の幻影に酷似、というより古史羅そのものだ。一体どういうことだろうか。

 前述したように古史羅は放射熱線を撃ち込み「特異点」を消し去ったゴジラを激しく憎悪し、執拗に付け狙っていた。しかし「特異点」消滅により生命維持に不可欠な紅塵の供給源を失った古史羅に残された時間は少なく、結局北浦に到着した途端に偽ラドン同様突然死する破目に。

 1940年頃に出現した古史羅が旧日本海軍の通常兵器によりあっさり倒されたのも、当時は「特異点」が活性化しておらず紅塵が乏しかったため身体が脆弱だったのが要因。どこまでも紅塵頼みな古史羅、これが葦原もとい超時間計算機の導き出した「破局」の実態に他ならず、自然の調和を保つため紅塵そのものを消し去る巨神の前では何の脅威にもならない。

 ゴジラへの憎悪、たったそれだけで突然死する直前に自身の幻影を生み出した古史羅の特殊能力はある意味特筆に値し、ゴジラには決して真似出来ない一芸と言える。幻影が肝心のゴジラに対し何も出来ず咆哮によりかき消されたのを知っていれば、その特殊能力は結局何の意味も無かったとわかってしまうが。

 現在古史羅の死骸が横たわる北浦の周囲に野次馬は勿論、警官や自衛官の姿は無く雨音だけが鳴り響く。全国有数の漁獲量を誇る北浦に漁師や釣り人が訪れていたのも2日前までの話。昨日は全国規模の暴動、そして今朝はキングギドラとゴジラにより日本政府が瓦解した上関東全域を高濃度の放射能が覆い、北浦があるここ茨城県も例外ではないからだ。

 核とは無関係な古史羅は核エネルギーを糧にし数十回の核攻撃に耐え抜くゴジラとは全くの別物。北浦における突然死も都心にてゴジラが吐いた放射熱線により関東全域を高濃度の放射能が覆ったのが一因とも考えられる。

 仮にゴジラが「特異点」を消し去らなかった場合、紅塵を大量に生み出す動く「特異点」と化した古史羅により海が赤く染まり赤潮同様多数の海洋生物が犠牲になっていたのは間違いない。古史羅はどこまでも自然環境にとって有害な存在でしかなく、この点でも通った場所を緑の楽園に変えていく巨神ゴジラとは根本的に異なると断じておこう。


 北浦に横たわる古史羅の死骸。身長100m以上と思しき巨体は最大水深7mの湖に殆ど浸かっていない。古史羅がろくに暴れることも出来ないまま終わりウルティマを迎えたのは巨神達が植物の成長の阻害等生態系に悪影響を及ぼす紅塵を消し去り自然の調和を保っている証。