芹沢亀吉
2024-09-07 01:06:07
257331文字
Public キングギドラ
 

巨神聖戦記

2020年6月11日にTwitterに投稿した暴虐な軍国主義者、楠木武が恥をかく物語の通算11話目の加筆修正版をPrivatter+に投稿。キングギドラが主人公を担いゴジラ、モスラ、ラドンも大活躍。残忍描写濃い目なので閲覧注意。菊タブー?何それ?


 この後慌てて替えのスーツを持ってきた秘書官が再び怒鳴られたのは、替えのネクタイが門長の嫌いな水色だったから。これほど短気かつ横暴な首相に毎日振り回される秘書官の気苦労は如何ばかりか。結局門長はネクタイの色に拘っている場合ではないと別の秘書官に諭され渋々着替えを済ませた。直後に未知の訪問者がいたことを思い出し、この日本国首相は再び怯えるが。

 3機から降りてきた集団は遮光器土偶に似た形状の金色の宇宙服を着込み、SP達に警護されながら恐る恐る外に出てきた門長に向かって丁寧に一礼した。彼らの低姿勢を目にした門長は急に高慢になり、いつも以上にふんぞり返っている。

「君達は一体何のつもりで来たのかな?場合によっては君達の逮捕もあり得るのだよ。覚悟したまえ。」

 すると集団の一人が左手のひらを上に向け、巨大戦闘機が運んできた巨大な生首を指し示す。

「これは先日銚子漁港を襲った化け物の生首じゃないか!君達が退治してくれたのか!?」

 門長の問いかけに生首を指し示した一人が頷く。この生首の主、全長約90mの巨獣は1週間ほど前千葉の銚子漁港に上陸しマグロ等を食い荒らしていたところを自衛隊に銃撃され、太平洋方面に逃走し行方をくらましていた。一部でゴジラと報じられてはいるとはいえ、放射熱線を吐くことが出来ず通常兵器により普通に出血する程度の耐久と本物のゴジラには遠く及ばないまがい物だ。

「君達が我々の味方だということはよくわかった。中で話をゆっくり聞こう。さあ入りたまえ。」

「総理、この者達をいきなり官邸に入れてもよろしいのでしょうか?」

「化け物を退治しわざわざ首を届けてくれたのだから門前払いはいかんだろう。そんなことより報道管制の準備を急げ。銀色の巨大機体が3機官邸に出現と全国放送されたら、また野党や市民デモの連中がうるさいからな。」

 未知の訪問者の受け入れに懸念を示す矢口蘭堂ではあるものの門長は取り合わない。門長と同じく世襲政治屋の矢口は自衛隊を持ち上げる発言が軍拡を目論む政府与党内にて持て囃され先日内閣官房副長官に任じられたばかり。

 特別機に搭乗し緊急来日したアメリカ大統領特使カヨコ・アン・パタースンが心底苛立っているのは、矢口に開示した際他国には一切流さないと約束したにも拘らずゴジラに関する機密情報がフランスに流出していたからだ。

「It's me. あと5分で永田町に着く。Randou Yaguchiに至急meetingよろしく!Hurry up!」

 1ヶ月前、グアム近海にてゴジラに集中砲火を浴びせた日米両軍ではあるものの肝心のゴジラは全く負傷せず、憲法9条を無視した国外における自衛隊の武力行使も通常兵器としては史上最強のMOAB爆弾投下も無駄骨に終わった。パタースンの来日はその時以来であり、永田町に向かう車内から官邸に電話し矢口との面談を強要する彼女は既に噴火寸前といったところ。

「Franceにdataを横流ししたでしょ?」

 官邸に押しかけたパタースンが報道管制の準備を終えたばかりの矢口を問い詰めるも、矢口本人は全く悪びれない。

「フランスだけじゃない、世界中に共有させた。約束は破ったが、後悔は無い。」

 約束を破り平然と他人を裏切る矢口の邪悪さを痛感し、現在パタースンの思考の大半を占めるのはこの裏切り者への激しい殺意。

「あの矢口蘭堂とやら、信用なりませんね。約束を破った相手に対してあんなに居丈高です。先程我々と面談した時は猫をかぶっていたのでしょう。もしあの男が私との約束を破った上ああやって居直るなら、その時は眉間か心臓を撃ち抜いてやりますよ。」

「他国の要人を簡単に裏切るなら自分に投票した有権者も簡単に裏切るのは目に見えている。絶対投票してはいけない最低な政治屋だな。無論我々に日本の選挙など全く関係無いが、確かに矢口蘭堂は信用ならない。君の言う通りだ。」

 先程門長に巨獣の生首を引き渡した集団の長並びに側近はパタースンと矢口の応酬を遠巻きに眺め、大統領特使に対し裏切り行為を謝罪すらしない無礼な振る舞いこそあの内閣官房副長官の本性だと2人は正しく理解した。