芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


 夜が明けた途端に巨人楠木の裸体が映り、映像を観ていたジョナが嫌な顔をした。どうやら轟天砲発射後に意識を失った後瓦礫に埋もれつい先程這い出てきた模様。

「ゴジラ、貴様、生きていたのか!しぶといな!大阪に来た時とはまた姿を変えたようだが無駄だ。隣にいるのはムートーか。X星人に撃退された癖に懲りん奴だ!ところでゴジラ、この楠木が貴様と目線の高さが同じになったことに気付いたか?確か貴様の身長は108mだった筈。つまり今のこの楠木の身長も同じく108m!この状況を小説とか映画にするなら題名は『108と108』が良いな!」

 期せずしてこの物語の題名を口走る巨人楠木は意識を失っている間により一層巨大化し、本人が言った通り現在の身長は108m。映像では観られないとはいえ楠木の声は聞こえるため藤崎も一ノ瀬もジョナ同様嫌な顔をした。石香炉が音を加減してくれているので先程の巨神達の激闘時の爆音同様鼓膜が破れる心配は無いが。

 ゴジラが左腕を突き出し血気にはやるムートーを制止する中、巨人楠木は再び股間のものを著しく怒張させ、今度は太さ35m、長さに至っては210mと最早轟天号の艦体を凌ぐ。

「グハハハハ!これぞ楠木の究極形態、シン・轟天号!さっきよりまたデカくなってしまったな!怪物共、ビビれ!狼狽えろ!特にゴジラ!貴様20年前南極でこの楠木のイチモツにビビって小便漏らしただろう!あの時とは大きさの次元が違うぞぉ!」

 巨人楠木の意に反し巨神二体は全く怯えた様子を見せない。

「フン、やせ我慢か。それなら貴様ら二人にこの楠木の轟天砲を味わわせてやる!消し飛べぇゲガギョバゴジャ!」

 先程同様股間のものを紫色に輝かせ轟音を伴いながら轟天砲を撃つも誘爆性光子の塊が直撃した巨神達は無傷のまま、むしろ巨人楠木自身がまたもや発射時に股間のものを大火傷し珍妙な悲鳴を上げ転げ回る始末。

「やってくれたな、貴様ら!だがこの楠木には靖国の英霊達と次なる天皇陛下のご加護がある!だから必ず勝、う、うわぁあああ!」

 既に皇統が断絶し靖国神社も瓦礫の山と化したのに一体何を言っているのだろうか。この時巨人楠木が粋がっている途中に怯え始めたのは何とゴジラの姿が麻生に、ムートーの姿がマンデラにとそれぞれ楠木が心底恐れる二人に変化したからだ。

「楠木貴様ぁ!汚い束子みたいな髭を生やしフリチン姿とは何たる醜態!貴様それでも楠木正成公の末裔かぁ!」

「楠木閣下、貴方を殺人と性的暴行で刑事告発します。証拠は全て揃えてありますので。」

 思考が恐怖一色になった途端に蓄積している膨大な煩悩並びに精気が体外に抜け出て消滅し、己の巨体を維持する力を失った巨人楠木は自重により全身が潰れ死亡。血肉の塊と化し原型をとどめていない楠木の遺体はすかさずゴジラが放射熱線を撃ち込み消滅させ、魂の方は冥府に行った途端に火車が美味しく頂いた。

「確かに美味いが長い間待たされてこの程度だと物足りないな。というわけで閻魔サン、吾輩はこれからも楠木武の魂を頂くぞ。」

「是非ともそうして欲しい。楠木武が生きている世界はまだ沢山あるからな。もう楠木武だらけの地獄は懲り懲りだ。」

 楠木の末路を見届けたジョナが何故ああなったのかを尋ねると、石香炉曰く「イビ」に戻れて霊力が完全復活したため夥しい煩悩に覆われた楠木の心の奥底に横たわる恐怖が見えるようになり、その恐怖を彼に幻影として見せたところあの末路を迎えたとのこと。

「さてそろそろ久高島を退去しようと思う。島の人間でもないのにここに居座り続けるのは現地の方々に迷惑だからな。」

「隊長、鹿児島を発った同志の機があと20分で到着との連絡が入っていますのでその機に乗りましょう。楠木武による数々の犯罪行為の公表、内通者を含め生き残った同志達の確認等これからやることが沢山あります。由衣、これからも私達はずっと一緒だよ。」

「これから志保先輩やジョナさん達との長い旅が始まるんだね。そう考えただけで凄くワクワクする。」

 ゴジラがムートーに見送られ東京湾へと泳ぎ去ったのとほぼ時を同じくして鹿児島を発ったUS-2が到着し一ノ瀬達は久高島を後にした、またいつの日かこの島を訪ねたい思いを抱きながら。(終)