芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


 途端にこの世のものとは思えない凄まじい轟音が鳴り響き、太陽のそれに匹敵する激しい閃光を伴い広島そして長崎に投下された原爆を遥かに凌ぐ核爆発がゴジラの巨体を飲み込む。ゴジラへの熱核攻撃が決行された瞬間である。

 アメリカ海軍の将校共が巨大なキノコ雲を眺めニヤつく中、一人砂浜に伏せ号泣し続ける藤崎。この熱核攻撃によりゴジラが消し飛んだと思い込むアメリカ海軍の連中とは違い、藤崎はゴジラが生きていて核爆発時の膨大な核エネルギーをそっくりそのまま頂き一層強大化したのを知っている。この熱核攻撃により第五福竜丸をはじめ夥しい放射能汚染被害が発生したことも。

 間髪入れずに藤崎の周囲が砂浜からベッドの中になり、藤崎を組み伏せる若いアメリカ兵の姿が優しく藤崎に抱きつきながら眠る一ノ瀬へと変化した。どうやら夢を見ていたようだ。念のためベッド横のリュックから放射能測定器を取り出し自分が被曝していないのを確認すると、藤崎はスヤスヤ寝息を立てる愛しの後輩の白い背中を優しく撫でた。

「可愛い寝顔、私と違って良い夢見ていそう。」

 翌朝一ノ瀬が目を覚ますと隣に寝ていた筈の藤崎がいない。昨夜蜜事を始める前に部屋の中に干した洗濯物が綺麗に折り畳まれている。戸惑う一ノ瀬ではあるもののかすかに響くシャワー音に気付き、ベッドから出て浴室へと向かう。

「おはよう、シャワー借りてるよ。洗濯物も乾いてたから全部畳んでおいた。部屋干しでも扇風機の風当てると乾くのが早いね。由衣の寝顔が余りにも可愛いから起こすに起こせなくてそのままにしちゃった。」

 藤崎がいたずらっぽく微笑むと、一ノ瀬は浴室に足を踏み入れつま先立ちしながら朝の挨拶代わりに憧れの先輩と唇を重ねた。藤崎はそっと身を屈め、一ノ瀬が極力背伸びせず済むよう気遣う。一ノ瀬の身長が160cmに満たない一方、藤崎の身長はおよそ170cm。

「由衣の厚ぼったい唇、プニプニしてる。由衣はただでさえ両目がクリクリしてて可愛いのに、まつ毛も長いとかもう反則的。」

 一ノ瀬を性欲並びに支配欲の捌け口と見做す男共がこれを言えば単なるセクハラだ。この台詞が許されるのは一ノ瀬と心の底から愛し合い、互いに尊重し合う関係にある藤崎のみ。

「し、志保先輩の、し、心臓の音が聞きたい。」

 藤崎は発言の意図を察し両頬ばかりか両耳まで紅潮中の一ノ瀬を胸元へと抱き寄せた。直接「私を抱いて」とは言えない一ノ瀬のウブさ、不器用さそして純真さを藤崎は心底愛おしく思う。二人がシャワーを浴びながら抱き合う様子から運命と雖も仲を引き裂かせはしないという確固たる意志が見て取れる。

「聞こえる、志保先輩の心臓の音がよく聞こえる。」

 明かりが照らす藤崎の身体をよく見るとあちこち傷跡が目立つ。聡明な一ノ瀬は行方不明になってからの藤崎が危険と隣り合わせの日々を過ごしてきたことも、今まで連絡してくれなかったのはその危険に巻き込まれないための配慮であったことも即座に見抜く。

「私は他の人に、特に男共には着替えや裸見られるのは絶対嫌だけど、志保先輩になら見られたい、かも。昨日はまだする前で明るいところで裸見られるのが恥ずかしくて別々にシャワー浴びたけど、これからは私と一緒に着替えたりこうやって一緒にシャワー浴びたりしてほしい。」

 何処ぞの楠木が嫌がる他人に無理矢理己の菊門を舐めさせて楽しむなら、一ノ瀬は心から愛し合い尊敬し合える相手との文字通り裸の付き合いを楽しむ。濃厚な蜜事を重視しつつも互いに相手の身体への気遣いを忘れない一ノ瀬と藤崎、この二人の関係は淫乱な女性が男性の性欲の捌け口に甘んじる18禁作品にありがちな設定の対極にあり、婚姻制度をはじめ様々な社会的秩序に断固抗う点で社会的秩序には抗わず単に男女が愛し合う最近の純愛ものとも一線を画す。

 浴室から出た二人はバスタオルを手に取り互いの身体を丁寧に拭き合う。ドライヤーにより乾燥した藤崎の黒髪が肩甲骨にかかる瞬間を目にして一ノ瀬は思わず赤面した。藤崎はチアリーディング部にいた頃髪型をポニーテールにしていたものの一ノ瀬と交際する際彼女を真似て髪を短く切り、一ノ瀬と喧嘩別れしてからは再び髪を伸ばし現在は一つ結びにしている。

「へぇ、由衣は私の今の髪の長さが好きなんだ。由衣とより戻せたし前みたいに短く切ろうとも思ったけど、今のままで良いか。あと私をじっと見つめてくれるのは凄く嬉しいけど、早く服着ないと風邪ひいちゃうよ。」

 手早く服を着た藤崎が髪の毛を束ねながらそう言うと、一ノ瀬は慌てて下着をつけ恥ずかしそうに微笑んだ。