芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


「そんなこと無いよ。他の人にはまず話せないことを包み隠さず話してくれて志保先輩が私を特別扱いしてくれているのを再確認出来て良かったとさえ思う。愛しい人から特別扱いされるって嬉しいことだから。そうだ、私にも他の人には絶対話せない秘密があって、今から志保先輩に話すね。」

 一ノ瀬は深呼吸し全てを藤崎に打ち明けた。自分の父親が清仁であることも、その清仁が母を捨てたことも、清仁が巨神討伐に自分の研究を利用するため広池を介し接触してきたことも、清仁の誘いを一蹴した後一人トイレに籠りすすり泣いたことも、全て。話し終えた途端に泣き崩れた一ノ瀬を藤崎は優しく抱きしめ一緒に泣いた。

「私なんかよりずっとずっと辛い思いしていたんだね、由衣。あのクズ3人はそんな傷心の由衣を襲おうとしていたのか、最低!全員地獄に落ちればいいのに!まあ私も今まで色んな人殺してきたから死んだ後は地獄行きだろうけど。」

 先程藤崎が荒川らの顔面を蹴飛ばしたのは死亡確認と同時に一ノ瀬を襲おうとしたクズ3人への憤りの現れでもあったのだ。そして荒川ら3人が死後地獄行きになったのは前述の通り。荒川らの生前の悪行を鑑みると藤崎に射殺された上顔面を蹴飛ばされたのは当然の報い、あるいは然程苦しまずに逝けたのだからまだまだ生温いとさえ言える。

「もし志保先輩が地獄行きなら、私も一緒に地獄に行く。全身を炎で焼かれても、釜茹でにされても、針山の上歩かされても先輩と一緒にいて愛し合いたい。」

と話す一ノ瀬は既に泣き止んでいて無邪気に微笑む。憧れの先輩に全て打ち明けて気が晴れたのだろう。

「由衣、貴方って子は。」

「そっ、そろそろ楽しい大人の時間を再開したい。さ、さっき志保先輩が私にしてくれたように、こ、今度は私が先輩のを舐めたり揉んだりしても、いいかな?あ、終わった後私も口濯ぐから。」

 藤崎の無言の頷きは蜜事の再開の端緒となり、ベッドの中の二人は日付が変わるまで激しく愛し合った。蜜事の後疲れ果てた二人は一旦洗面所に行き口の中を念入りに濯ぎ、ベッドに戻るや否や身体を寄せ合い一糸まとわぬ姿のまま眠りにつく。

 荒川ら3人が射殺された現場を捜査中の大阪府警は真相解明の糸口さえ見つけられずにいる。通り雨が証拠を洗い流した上現場付近の防犯カメラ全てが停止中だからだ。女性を拉致する際事前に防犯カメラを停止させる荒川らのいつものやり方が自分達を冥界に送った「犯人」の解明を阻む、何と皮肉な展開だろうか。

「ゴジラ接近!ゴジラ接近!直ちに準備せよ!」

と音割れした音声が鳴り響き、藤崎は自分がいつの間にか服を着て太陽が照りつける砂浜に立っていることに気付いた。藤崎の周囲には一緒に寝た筈の一ノ瀬の姿は無く、代わりにアメリカ海軍の兵士並びに将校共が居並ぶ。今の音声は砂浜に建てられた支柱の先端のスピーカーから発せられ、声の主は藤崎の背後に設営された現地司令部にてマイクを握る将校のようだ。

 程なくしてゴジラが浮上して海面が大きく割れ、間髪入れずに響き渡った咆哮は先程のスピーカー音を遥かに凌ぐ。そしてゴジラの目線の先の沿岸には鉄骨が組まれ核弾頭が鎮座する。

「やはりゴジラはあちらに向かったか。では予定通りキャッスルブラボー作戦を開始する!」

 現場司令官が発した号令により藤崎はここが何処かを理解し、今自分が過去の時代にいることに気付いた。そう、藤崎は今1954年3月1日のマーシャル諸島にいて、アメリカ海軍が熱核実験と称しビキニ環礁に迫るゴジラへの熱核攻撃を実施しようとする瞬間に立ち会っているのだ。

 スピーカーから秒読みが鳴り響き始めた途端にアメリカ海軍の連中は遮光板を装着し両目を覆う。そんな中核弾頭を遠隔爆破するパラボラアンテナ目がけて駆け出した藤崎は最早自分が元の時代に戻れるかどうかなど考えていない。

「おい!アンテナに近寄るな!戻れ!」

 若いアメリカ兵に取り押さえられ、藤崎は懸命に叫んだ。

「放せ!あれを止める!絶対止める!止めないと途方もない核汚染が!」