芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


 統制官が得意げに右手親首を立て指し示したのは一斉に尾崎に群がるミュータント兵士達である。

「へぇ、一度に複数のミュータントを操れるんだ。でも私とその尾崎は操れないみたいだね。」

 藤崎は地陸軍にいた頃尾崎と面識があり、統制官曰く藤崎も尾崎同様カイザーだという。

「いけません、マルコム・マンデラさん。邪悪な者に操られないで下さい。」

 この石香炉の声が脳内に優しく響き、マンデラは我に返った。

「わ、私はいったい何を?」

「私はいつも貴方に綺麗にしてもらっていたあの石香炉です。貴方が元に戻れて本当に良かったです。」

 この声は一ノ瀬達にも聞こえていて、藤崎は即座にマンデラを解放している。

「フン、何者かが俺が操るのを邪魔したようだが一人ぐらい操れなくなっても構わん。今からこの男の中に眠るカイザーの力を覚醒させるからな。貴様らもよく見ておけ、カイザーが目覚める瞬間を。」

 統制官は右手から白い稲妻状の念力を放ち、操り人形状態のミュータント兵士達に組み伏せられ身動きもままならない尾崎にその念力を躱す術など無い。

「全てを支配する力を持ちながら下僕共の味方をする愚か者よ!カイザーとして目覚めよ!この俺同様に!」

 全身に稲妻状の念力を浴びた尾崎は両目が冷たく耀き、統制官はニヤつきながら彼の上に覆い被さるミュータント兵士全員にもう束縛は不要と命じた。

「目覚めたか、カイザーよ。貴様には筆頭参謀の地位を与える。俺の右腕となり共にこの地球に帝国を築こう。そもそもX星人が地球人と交配しミュータントを生み出したのは、その中から俺達のようなカイザーが生まれ支配者となるのを期してのことだ。」

 起き上がった尾崎に統制官が右手を差し出したその時である。何と尾崎が統制官の右腕を引きちぎったのだ。

「ぐわぁあああ!き、貴様何を!?」

「たった今貴様は右腕を失った。そして今からこの俺が統制官だ。」

 以前X星人の司令官が筆頭参謀だった頃の統制官に「力だけに頼る者はいずれそれよりも強い力に滅ぼされる」と言ったのを覚えているだろうか。たった今尾崎の蹴りにより首の骨が折れ絶命した統制官を見れば司令官の「予言」が的中したのは火を見るよりも明らかだろう。

 統制官の仇討ちと言わんばかりに側近達は尾崎に向け光線銃を撃ったものの、カイザーとして目覚めた尾崎の念力により全て反射され全員統制官の後を追う格好に。

「尾崎、今すぐあのガイガンとかいうサイボーグ巨獣達を止めて。巨神達も操るのを止めて。X星人が飛ばした大量の無人攻撃機も全部撤収して。もう終わった、全て終わった。これ以上の破壊は不毛なだけ。今の貴方なら止められる。」

 藤崎は画面の向こうの元同僚にそう呼びかけ、瞳から溢れ出た涙が両頬を伝う。

「不要なものは滅ぶべきだ。X星人、地球防衛軍、反政府活動家、皆滅ぶべきだ。そして今の俺にはそれらを滅ぼす力がある。藤崎、手を組もう。地球人もX星人も超えた俺達カイザーなら新たな秩序を築ける。ここは俺達の星だ。そしてこの宇宙も。」

 真顔のままこの発言をする尾崎はかなり危ない。つい先程まで生きていた統制官ならこの手の発言をする際はニヤつくだろうか。

 藤崎がかつての同僚の衝撃的な発言に愕然とする中、一ノ瀬は大画面に映る尾崎を一喝した。