暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。
「ありがとう。ご苦労でした。」
そう言ってヤシオリ作戦に従事した地球防衛軍人達を労う矢口を巨大な爆炎が飲み込んだ。突如大阪に核ミサイルが撃ち込まれたのである。この核実験を兼ねた核攻撃により楠木肝煎りの新型戦略核ミサイル、ハチワリの威力は80メガトンどころか40キロトン止まりと判明したとはいえ、巨大不明生物も矢口もまとめて消し去るという楠木の目的を果たすには十分過ぎる破壊力だ。
「ざまぁみろ、青瓢箪!この楠木を出し抜いてゴジラを討伐し名声を独り占めしようという腹積もりだろうがそうはいかんぞ!グハハハハ!」
大画面一杯に映し出された巨大なキノコ雲を眺めながら下品な声を上げ大笑い、これぞまさしく悪魔の哄笑。ヤシオリ作戦が失敗したことにして大阪にハチワリを撃ち込み矢口も巨大不明生物もまとめて消し去る、こんなおぞましい計画を何の躊躇もせず実行した楠木の邪悪さは矢口のそれを遥かに凌ぐ。
「く、楠木閣下、やっ、矢口閣下はこの後芸人デビューが控えていたのでは?」
敢えて矢口を芸人デビューさせる話を持ち出したあたり、マンデラはその矢口を核攻撃により消滅させた楠木の暴挙を遠回しに非難したいのだろうか。
「馬田、貴様黒人に生まれたのが勿体無いぐらい律義だな。だがあの矢口蘭堂には貴様と違い律義さの欠片も無い。さっきこの楠木が電話した時も偉そうに口答えしてきたからな。そんな不届き者が律義に芸人デビューすると思うか?大体あいつは目的のためなら手段は選ばんし、感情的になると何をするかわからん危険人物だぞ。」
己の危険人物ぶりは棚に上げつつまたもや黒人差別発言をした楠木は左手に持つスマートフォン端末を操作し、矢口が泉を殺害する瞬間の映像をマンデラに見せた。八尾基地内の防犯カメラに映っていた泉殺害の証拠映像は矢口の命令により消去されたものの、楠木の息のかかった地陸軍兵士が楠木のスマートフォンに消去前の映像を送信していたのである。その兵士も楠木にとっては捨て駒だったらしく、結局矢口共々核攻撃の餌食となった。
「後はこの映像をネット上に拡散するだけ。これであの青瓢箪の名声も地に落ちる。この楠木にとって代わろうとする不届き者がどうなるのかを草葉の陰の矢口に見せてやろう。」
亡き矢口が何としてでも隠し通したかった映像をネット上にばら撒く楠木の笑顔は実に嫌らしく、マンデラも一瞬ながら矢口に同情した模様。ただマンデラも泉殺害を隠蔽、コンクリート作業車並びにタンクローリーを操縦する民間人に巨大不明生物への事実上の特攻を強要し大勢犠牲にする等悪行三昧な矢口がお咎め無しで良いなどとは一切考えていない。
核爆発の直撃により全身が消し飛んだ矢口の魂は冥府に行き、瞬く間に火車に捕食された。楠木の意に反し草葉の陰から己の名声が地に落ちるのを見ずに済んだのは不幸中の幸いか。
「この者の魂には楠木武とはまた違った汚れがあり、それがまた美味だ。偽善者の味といったところか。閻魔サン、あの世界の楠木武はまだまだくたばりそうになくて正直待ちくたびれていたが、今頂いた矢口蘭堂は丁度良い前菜だよ。」
矢口も楠木同様様々な世界から地獄に送られ、楠木だらけの地獄の再発を防ぐ観点から閻魔は火車に矢口の魂の捕食を許可している。
「そういえば、以前
別世界の矢口蘭堂を頂いたのではなかったのか?」
「あの矢口蘭堂も美味かった。確か今頂いた矢口同様巨大不明生物を打倒するためヤシオリ作戦とやらを決行し、作戦終了後程なくしてCIAの諜報員に消されたんだったな。協力してくれた大統領特使を裏切りホワイトハウスの機密情報を世界中に漏洩させた上悪びれもせず、約束は破ったが後悔は無い、と特使本人に言うようではそりゃホワイトハウスが生かしてはおかないだろうよ。それはそうと物凄い数の亡者だな。あの世界の楠木武はどれだけ殺せば気が済むんだ?」
現在冥府には楠木の核攻撃により亡くなった大勢の人々が押し寄せ、略奪に明け暮れ丸腰の民間人を遊び半分で射殺した地陸軍兵士をはじめ汚れた魂を持つ悪人も相当数いるとはいえ火車は一切手を出さない。平然と他人との約束を破った上居直る矢口とは異なり、火車は閻魔との約束を絶対に破らないのだ。
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