芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


 皇宮護衛官に諭され幾分か納得したのか、義仁は怒鳴るのを止めた。

「よし、理子は新型インフルエンザに感染し急逝ということにしよう。化け物の遺体は貴様に処分を任せる。いいか、皇宮護衛官を辞めても今晩の出来事は口外厳禁だぞ。誰かに言ったりしたら命は無いと思え。俺は地防研にスナイパー送り込むぐらい朝飯前だからな。貴様が何処に逃げようと必ず見つけ出し仕留めるぞ。肝に銘じておけ。」

 たった今本人が言った通り今回の偽清仁暗殺未遂事件の黒幕は義仁。この皇嗣なら裏人脈を使い警備の厳重な地防研に狙撃犯を送り込むのも然程難しいことではない。ちなみに偽清仁暗殺に失敗した狙撃犯は義仁の怒りを買った以上最早逃げも隠れも出来ないと悟り、隠し持っていた青酸カリ入りカプセルを護送中に服用し自ら命を絶っていたりする。

 皇宮護衛官が怪人の遺体を袋詰めにして寝室から退出したのを見計らいベッドに入った義仁ではあるものの、目を閉じる度自分を襲おうとした理子の姿、理子とばかり思っていた怪人の姿が交互に浮かび上がり、結局一睡も出来なかった。

「只今戻りました。先程お伝えした遺体はこちらになります。」

 実のところこの皇宮護衛官は前々からジョナに内通しており、先程皇宮警察本部に辞表を提出し今丁度怪人の遺体をジョナ達に見せている。

「何とも奇妙な姿だ。明らかに地球人ではない。」

「この怪人のDNA情報、私が調べてもいいですか?」

「ありがたい。ではDNA情報を調べるのは一ノ瀬さんにお任せしよう。必要な器具は全て揃えてある。」

 一ノ瀬が怪人のDNAを調べた結果、ミュータント並びに地防研地下の巨大ミイラ同様M塩基が検出された。

「偽清仁の血液からもM塩基が検出されているため、巨大ミイラ、この怪人と何かしらの関係があるでしょう。偽清仁は明らかにX星人の回し者ですし、この怪人が理子、即ち皇嗣義仁の妃と入れ替わっていたなら、偽清仁の正体もこの怪人、もっと言えばこの怪人こそX星人の正体かもしれません。」

「なるほど地球人と同じ外見で友好を装いつつ裏で皇族を一人ずつ片付け成り代わるわけか。皇族なら潜入者が入れ替わっても一ノ瀬さんのように菊タブーを恐れない者以外は畏れ多くて調べようともしないだろう。X星人もなかなか悪賢いな。皇族共がどうなろうと知ったことではないが、X星人共がそれで侵略を進めこの地球の母なる大自然を滅茶苦茶にする気なら話は別だ。」

「隊長、X星人の言う友好が全くの欺瞞であることを示す証拠があります。」

 そう言いながら藤崎は左手に持つタブレット端末を操作し、妖星ゴラスの画像を複数枚映し出す。

「これらの画像は全て時間も地域も全く違う場所から観測された筈なのに、このように重ねると僅かな誤差も無く完全に一致します。」

「要するに背景だけを変えさも妖星ゴラスが地球に迫っているかのように見せかけているだけか。とんだ偽映像だな。」

「この偽映像を真に受けた地球人達がX星人に言われるがまま地球上の軍事力全てを一ヶ所に集約すれば、他の地域全てが無防備となり侵略を進めるにはこの上ない好条件が揃う。志保先輩、よくこれに気付いたね。」

 愛しの後輩に褒められ、藤崎の両頬に仄かな紅が差す。

「ミュータントの私にもM塩基がある。ひょっとしたら私達ミュータント自体がX星人の邪悪な意図に基づく存在かもしれない。でも私はその邪悪な意図に断固抗う。地陸軍兵士として為政者共に巨神退治の駒扱いされていた頃の自分と決別したように。」

 一ノ瀬もジョナも藤崎の話に真摯に耳を傾け、静かに頷く。

「藤崎志保さん、貴方のその決意に私も胸を打たれる思いです。」