芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


「やったぞ、俺の轟天号の勝利だ!ゴジラは案外弱かったな。いや、俺の轟天号が強過ぎるだけか、ガハハハハ!って、あ、あれは何だ!?」

 ドラ声即ち野太く濁った声を上げ大笑いする麻生に冷や水を浴びせるかのように、轟天号艦内のモニター画面は雪崩により埋もれたばかりの一帯に突如生じ天に向け立ち昇る青白い光の柱を映す。、ゴジラが体内原子炉を臨界状態にして口から吐いた天まで届く放射熱線だ。程なくして氷上に這い出てきたゴジラの巨体は地中にゴジラを封じる麻生らの目論見の頓挫を物語る。

「あ、麻生艦長、ゴッ、ゴジラが出てきました!轟天号にはもうミサイルがありません!」

「狼狽えるな楠木!俺の轟天号には最終兵器絶対零度砲がある!早く撃たんかぁ!」

「御意!」

 麻生に急かされながら楠木ら搭乗員は機器を操作し、轟天号は艦首のドリルから強烈な冷気を帯びる白色の光線砲を放つ。この轟天号の最終兵器、絶対零度砲は氷上に這い出てきたばかりのゴジラの全身を瞬く間に氷結させた。

「絶対零度砲命中!効果絶大です!」

「手こずらせやがって!だが全身凍結とあってはもう悪あがきも出来まい!やはり最後に笑うのはこの麻生だぁ!ガハハハハ!」

 すっかり舞い上がり大笑いする麻生のドラ声は最早騒音の領域に達している。ゴジラが全身を青白く発光させ身体を覆う氷全てを蒸発させた途端に麻生の表情は恐怖と絶望に歪むが。麻生の意に反しゴジラは全身が氷漬けになっても生命を保ち、体内原子炉を臨界状態にして全身から高熱を発したのである。

「馬鹿な!ゴジラは生きていただと!夢だ!これは夢だ!夢に決まってる!夢だ!夢だ!夢だぁ!」



 間髪入れずにゴジラは放射熱線を吐き、轟天号の艦体を無残な形に変えていく。轟天号の艦体を消し去るぐらい朝飯前なゴジラではあるものの、核エネルギーを頂くため原子炉を壊さない程度に放射熱線の威力を抑えていたりする。原子力を動力とする万能戦艦轟天号は原子力潜水艦並びに原子力空母同様原子力の兵器利用に他ならず、日本がその轟天号を保有すること自体が原子力の軍事利用を禁ずる原子力基本法に背く。そんな轟天号も核エネルギーを糧とするゴジラにとってはおやつ同然なのだろう。

 こうして南極を舞台としたゴジラと轟天号の対決はゴジラの圧勝に終わり、当然ながら麻生をはじめ轟天号の搭乗員らは皆冥界へと旅立った。ゴジラが轟天号に放射熱線を撃ち込む直前に持ち前の逃げ足の速さを発揮し脱走していた楠木を除いて。

「見ろ!ゴジラ!このミケランジェロのダビデ像に勝るとも劣らぬこの楠木の肉体美を!おっとこの楠木の肢体は毎日太陽を浴び続けた小麦色故大理石製のダビデ像には無い温かみがあったか。いずれにせよゴジラ貴様の醜くひん曲がった鱗だらけの身体などこの楠木の肢体は勿論ダビデ像の足元にも及ばん!グハハハハ!」

 驚くべきことに猛吹雪が吹き荒れる中全裸姿の楠木が仁王立ちし、その笑い声の下品さ、やかましさは生前の麻生と良い勝負。そんな楠木の背中には無数のミミズ腫れ、即ち生前の麻生に何度も精神注入棒により折檻された痕が目立つ。楠木が口汚く罵るゴジラの全身の鱗の歪みは数十回の核爆発の直撃に耐え抜いた証に他ならず、絶対零度砲の直撃も体表面を薄い氷が覆う程度にとどめるあたりゴジラの鱗、ひいては表皮自体が並外れた衝撃耐性並びに放射能耐性ばかりか超低温耐性を備えているのは間違いない。

 自暴自棄になり全裸になった際無意識のうちに己の108の煩悩を飛躍的に増幅させ、楠木は全身を被曝しようとコウテイペンギンをも凍死させ得る猛吹雪の中全裸になろうと健康体でいられる超人と化した。一方力により他者を屈服させたい文明人の究極の煩悩の産物、即ち核兵器により長年の眠りから覚めたゴジラの身長が108mと仏教における常人一人あたりの煩悩の数と一致しているのも意味深長である。

「おいゴジラ逃げるのか!?この楠木の気迫に恐れをなして逃げるのか!?逃げろ!逃げろぉ!腰抜けがぁ!グハハハハ!」

 更なる雪崩を誘発しかねないドラ声を上げ先程這い出てきた地割れの中へと潜るゴジラを詰り、この全裸男は己が地球最強の巨神を敗走させたと信じて疑わない。108の煩悩を増幅させ並外れた生命力を得た楠木、身長が108mのゴジラ、双方共に108という数字に縁があるとはいえ、基本的に人間には興味さえ示さないゴジラは楠木など歯牙にもかけないが。そうとも知らず氷原に仁王立ちしドラ声を上げ大爆笑と、全裸男楠木はどこまで恥知らずなのやら。