芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


 大阪への核攻撃により世間から英雄扱いされ舞い上がる楠木からすれば、本当に自分が関与していない足利市内の略奪が明るみに出ても痛くも痒くもない。そんな楠木の意向を忖度したのか、ネット上には既に全員亡くなった足利市内の略奪の実行犯への罵詈雑言がズラリと並ぶ。実行犯を在日外国人と決めつける書き込みも目立ち、良いことは全部日本人の手柄、悪いことは全部在日外国人のせいにしたいクズ日本人共の卑劣さは底知れない。

「足利の部隊全員糞。今すぐ全員墓から出てきて天皇陛下と楠木閣下に土下座しろ。そもそもあいつら本当に日本人?日本人のフリしている在日じゃないの?知らんけど。by GAIMAX0522 23:13/2025/2/21」

「楠木閣下が断腸の思いで大阪への核攻撃を決意されたのに足利の部隊は略奪に夢中かよ。楠木閣下は人格者だから足利の部隊の連中を怒鳴りつけたりはしないだろうが、俺は喉潰れるまで罵声浴びせてやりたい。by マイナス零百組 23:57/2025/2/21」

「足利の部隊あいつら全員在日とクルド人だろ。光文の代に生きる侍である俺の目は誤魔化せない。by 有川銘 0:09/2025/2/22」

 陸自出身の楠木が足利市内にて略奪を繰り広げた地陸軍の部隊への罵詈雑言を見て見ぬふりし浮かれる中、地球防衛軍内部に自分達もいざとなったら楠木に切り捨てられるとの不安がじわじわと広がり、ジョナに内通する者を幾人か増やす結果に。地球は自分達のものという文明人の思い上がりに基づき成立した地球防衛軍にもその思い上がりを疑問視する者、軍上層部の腐敗に辟易している者が少なからずいる。藤崎は内通者を通じてそうした者達に声をかけ、地球防衛軍を内部から少しずつ切り崩す。

 清仁らしき者がX星人との共存を呼び掛け、その清仁らしき者を礼賛する大勢の人がそれに靡く、ここ数日の世界を覆う熱狂の構造は結局のところこれに尽きる。

「時は来た!X星人と共に立ち上がり巨神共を滅ぼせぇ!天皇陛下万歳!」

「We love X!We love X!We love X!」

「地球人ってすんげぇ科学力持つX星人に一目置かれるぐらいすげぇんだな。その中でも巨神でさえ倒せない天皇陛下や楠木閣下がいるこの日本は別格だな。」

 食堂に入りふとTV画面に目をやると丁度この映像が映っていたため、一ノ瀬は嫌な顔をした。今の彼女はジョナ達が用意した偽身分証を使いノ・지민ジミン(※盧志旼)と名乗り、地防研(※正式名称は地球防衛軍付属研究所)に潜入中の身。一ノ瀬は藤崎の猛反対を押し切りこの潜入を自ら買って出た。

「由衣、胸糞悪い番組やってるみたいだけど、気分悪くなってないかな?あとその研究所の連中からのセクハラも凄く心配。」

 現在一ノ瀬がかけている変装用眼鏡は先セル(※眼鏡をかけた際耳の後ろに直接触れる箇所)に超小型通信機が仕込まれ、元々両目とも1.0以上な彼女に合わせ左右のレンズに度は入っていない。

「あの清仁みたいな人に言われるがままX星人万歳を叫ぶ連中をTVに映すのは本当に目の毒。清仁みたいな人や楠木武を持ち上げながら安っぽい国粋主義に酔っているのも醜悪。だから今志保先輩の声聞けて嬉しい。私は志保先輩の声聞くと色々浄化される体質だから。他の研究員とは距離置いているし、今のところセクハラは心配無し。あ、今からお昼ご飯食べるね。」

 そう言いながら微笑んだ一ノ瀬は両頬に仄かな紅が差す。見たくもないX星人信奉者共の狂態を見せられて気分を害した直後だけに愛しの先輩の声を聞けた喜びもひとしおか。

 食堂から出た一ノ瀬を出迎えたのは彼女の警護を担う尾崎だ。

「なぁ、ここの飯どうだった?結構美味かっただろ。」

 馴れ馴れしく話す尾崎に一ノ瀬の冷たい視線が突き刺さる。つい先程尾崎がM機関の上官から노、即ち一ノ瀬の警護を命じられた際、

「韓国人の学者先生の警護なんて俺達M機関の仕事じゃないでしょ。どうせ国連から派遣された学者なんて老い耄れで、理屈っぽくて頭ガッチガチの。」

などと放言するのを彼の真後ろにいて全部聞いていただけに、一ノ瀬がこのミュータント兵士とは口もききたくないのは当然だろう。ちなみに国連内部にはジョナに内通する者が複数人いて、「調査のため分子生物学者노지민を派遣する。」と地球防衛軍側に通達済み。