芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


 楠木が打倒し損ねた巨大不明生物を打倒すれば楠木のお株を奪い世界的な英雄になれる、そうなれば楠木も自分に対し裸踊り強要など出来はしない、この矢口の考えには希望的観測の臭いがプンプン漂う。

「今回のヤシオリ作戦遂行に際し、熱線の直撃や急性被曝の危険性があります。ここにいる者の生命の保証は出来ません。だがどうか実行してほしい!我が国の最大の力はこの現場にあり、誇り高き自衛隊の系譜、地球防衛軍はこの国を守る力が与えられている最後の砦です。日本の未来を、君達に託します。以上です。」

 かくして矢口主導の巨大不明生物凍結作戦、ヤシオリ作戦が開始された。この作戦の根底には泉殺害の件を楠木に勘付かれたから何とか逃げ切りたいという矢口個人の不純過ぎる願望が横たわる。

「無人新幹線爆弾、効果あり!目標転倒!」

「作戦最終段階!特殊建機小隊、行動開始!」

 巨大不明生物に爆弾を搭載した新幹線の車両をぶつけて転倒させ、コンクリート作業車により血液凝固剤を投与するのがヤシオリ作戦の骨子。巨大不明生物が新大阪駅構内に棒立ちし続ける愚鈍な存在であって欲しい、巨大不明生物に破壊された大阪の街の線路も電力系統も無事であって欲しい、転倒した巨大不明生物が口を開けたままコンクリート作業車による血液凝固剤投与に応じて欲しいといった具合に何処までも希望的観測頼み、このお粗末極まりない作戦は希望的観測頼みの矢口らしさが全開と言えよう。

 あれだけあちこちに撃ちながら新大阪駅に繋がるどの線路も電気系統もほぼ無傷という紫色熱線の破壊力の乏しさ、標的が線路から少し離れるだけで頓挫というヤシオリ作戦の初歩的な欠陥さえ見抜けない間抜けさ等、人智を超えた完全生物には程遠い巨大不明生物の愚劣さに助けられ、本来なら机上の空論のまま終わっていたヤシオリ作戦は矢口の希望的観測通りに進む。

 一方的に痛めつけられ転倒した巨大不明生物は紫色熱線を撃とうともしない。つい最近紫色熱線をあちこちに撃った際に体力を使い果たしたという矢口らの読み通り、今の巨大不明生物は紫色熱線を撃ちたくても撃てないのだ。体力を使い果たすまで撃ちまくった割に、コンクリート作業車そして血液凝固剤を搭載するタンクローリーが普通に走れる道が都合良く残ったのは一体どうしたことか。

「凝固剤、注入開始!」

「よし!回転上げろ!出力最大!出来るだけ奴の中に流し込め!」

 無様に転倒した上意味も無く口を開き続け、コンクリート作業車がブーム先端から己の生命を脅かす血液凝固剤を放出すると馬鹿正直に飲み続ける、この巨大不明生物の絶え間なき醜態はまさしく愚劣の極み。

「特殊建機第1小隊、全滅!」

 矢口により「アメノハバキリ」と命名されたコンクリート作業車部隊を中心とする特殊建機第1小隊は巨大不明生物が身体を起こした際に悉く押し潰され、運転していた民間人達は全員死亡。楠木の死体遺棄を黙認しつつ白骨死体を脅迫材料に利用と矢口は日頃から人命を軽んじ、ヤシオリ作戦に徴用した民間人を何人犠牲にしようと心の痛みなど感じない。

「この機を逃すな!無人在来線爆弾、全車投入!」

 先程無人新幹線爆弾とやらが大爆発した筈なのに線路にも架線にもこれといって損傷が無いのをいいことに、今度は爆弾を搭載した在来線の車両が巨大不明生物を襲う。先程起き上がった際線路の上に戻らなければ回避出来たにも拘らず、特に意味も無く線路の上に戻り無人在来線爆弾とやらを全身に浴び再び無様に転倒、ここまで茶番劇丸出しの展開が続くと矢口らに都合良く仕組まれたヤラセ番組に見えてくる。

「ゴジラ、再度転倒!全車、一斉に投与を開始!」

「目標、表皮に凍結が認められます!」

「胸部中心部の温度、マイナス196℃に低下。ゴジラ、完全に沈黙しました。」

 再び血液凝固剤を馬鹿正直に飲み続けそのまま全身凍結と相成った巨大不明生物、あらゆる環境に対する適応進化を行い必要に応じ自己退化能力も有し自由に進化退化が可能な完全生物などと称されたとはいえ、結局その自由な進化退化を見せることなくやられ役のまま終わった。