芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


「矢口君!この非常時に自ら総理を引き受けるその姿勢は実に素晴らしい!同じ元老として君を誇りに思う!そんな君にはこの楠木の肉体美を鑑賞する権利がある!さあ思う存分鑑賞してくれたまえ!ところで総理を引き受けたということは、分かっているな!?」

 政仁に取り入り自分と同じ元老の地位を手にした矢口のやり方は気に食わない一方、その矢口に己の菊門を舐めさせる好機と捉え舞い上がる楠木はある意味前向き思考、かもしれない。「そんな前向き思考があってたまるか!」と突っ込みたいならどうぞご自由に。そもそも普段は個人の権利を軽視している癖に自分の弛みきった全裸姿を無理矢理見せつける時に限り権利と言い張る楠木は実に狡く、余りにも恩着せがましい。

「何のことですか、楠木元帥閣下?」

 真顔のままそう言った背広姿の矢口に対し全裸姿の楠木がいきり立つ。

「貴様惚ける気か!この青瓢箪め!さっさとこの楠木の菊門を入念に舐めるんだ!貴様の前任の広池も間抜け面しながら一心不乱にペロペロ舐めていたぞ!さあ早く舐めろ!ペロペロ舐めろ!これは20年続くこの国の慣例だ!貴様も慣例に従え!」

 前述の通り楠木が日本を離れていた2009年から2012年の3年間この「慣例」は途絶えていたため、「20年続くこの国の慣例」という楠木の物言いは正しくない。

「20年といえば最近秩父山中で発見された死後20年は経過していると思しき白骨死体、歯型が貴方様のご夫人、久代ひさよ氏と一致した次第です。」

 矢口の唐突な発言に楠木は腹を抱え大爆笑した。

「グハハハハ!矢口よ、貴様嘘をつくとボロが出るな!俺が久代を埋めたのは高尾山中だ!秩父山中で久代の白骨死体が見つかる筈がなぁい!」

 一転して青ざめ両目を泳がせ始めたあたり、楠木はたった今他ならぬ自分がボロを出したことに気付いた様子。

「失礼、言い間違えました、高尾山中で発見された白骨死体の歯型が久代氏と一致した次第です。そして今の発言はこちらに録音しました。」

 楠木の裸体の至る箇所を冷や汗が伝う。

「ま、待て!話を聞こう!矢口貴様の望みは何だ!?言ってみろ!」

「20年続く慣例とやらを私には適用せず、組閣人事への口出しは無用、今のところはこれだけです。高尾山中の白骨と貴方様の発言は当分内密にしておきます。それではこれにて失礼。」

 わざわざ「今のところは」と言うあたり、矢口がこれからも何かにつけ楠木に要求を突き付けるのは火を見るよりも明らか。楠木の殺人並びに死体遺棄を表沙汰にせず脅迫材料として利用と、手段を選ばない矢口は人命を軽んじ平然と他人を駒扱いする。

 矢口が立ち去るや否や楠木は目の前の壁に拳骨を叩き込んだ。苛立つ全裸男が壁に八つ当たり、この珍妙かつ滑稽な光景を想像し爆笑したくなったなら気の済むまで爆笑してもらって一向に構わない。

「あの青瓢箪め!絶対このままでは済まさんからな!」

 権力を手にしてからの楠木はその粗暴さ故度々人を殺めてきた。口髭の半分を剃ってしまった理髪師に逆上し理容鋏を何度も両目に突き刺したのも一度や二度ではない。理髪師が楠木の髭の半分を剃る事故が頻発するのは手の震えによるところが大きく、当然その手の震えは粗暴な楠木への恐怖に起因する。衝動的に人を殺める度権力を使い隠蔽、楠木はこれを20年も続けてきた。

 一方配偶者久代を手にかけたのはまだ二等陸尉だった頃、即ち権力を手にする前のこと。当時の武は結婚したばかりの久代に暴力を振るい麻生から折檻、性暴力を受けた鬱憤を晴らしていた。そしてとうとう久代を絶命させてしまい、まだ殺人を隠蔽出来る権力も無かったため慌てて遺体を高尾山中に埋めた次第。