芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


 奮闘虚しく放射熱線が押し負け、反重力光線3発を顔面に浴びたゴジラは悲鳴を上げ仰向けに倒れ込んだ。ぐったりとしているゴジラに対しカイザーギドラもガイガンレクスも攻撃の手を緩めずそれぞれ反重力光線と破壊光線を撃つ。重力を歪ませ標的を束縛しつつ一旦空中に浮かせ叩き付ける、地面を引きずり回す等反重力光線の性能は凶悪極まりなく、その反重力光線に加え2種類の破壊光線を同時に浴び続けるゴジラの苦痛は察するに余りある。

「こんなのもう戦いじゃない、ただのなぶり殺しだよ。志保先輩、カイザーの力使ってあの3本首の魔物止めるのは無理、だよね。」

「うん、無理。由衣、私悔しいよ。あんな邪悪な相手二体に単身立ち向かったゴジラがやられかけているのに何も出来ないなんて。」

 一ノ瀬並びに藤崎が二体の魔物になぶられ続けるゴジラの映像を観て涙を流していると、夜空から「イビ」に一筋の光が差し先日二人が参拝した補陀洛山寺の本尊、千手観音が現れた。

「私はこちらの石香炉に導かれ、やって来ました。先日はお二人が亡くなった大勢の方の冥福を真摯に祈る姿勢、厨子の扉の向こうから拝見し貴方達なら悪しき者の手から石香炉を取り戻せると確信しその手引きをした次第です。さあ、般若心経を唱えて下さい。あの魔物達に抗う龍を異世界より召喚します。」

 合掌し無心に般若心経を唱える一ノ瀬そして藤崎、何としてでもゴジラを救いたい思いが二人を突き動かす。

「観自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空度。一切苦厄舎利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識亦復如是。舎利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不浄。不増不減。是故空中。無色。無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色声香味触法。無眼界。乃至無意識界。無無明亦。無無明尽。乃至無老死。亦無老死尽。無苦集滅道。無智亦無得。以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。心無罣礙。」

 久高島の二人が般若心経を唱えた途端に都心の空に時空の穴が開き、中からキングギドラが出現した。翼が矮小故飛翔出来ず黒色混じりの黄金のゴツゴツした皮膚が全身を覆い4足歩行のカイザーギドラに対し、胴体も3本の首も相対的に小さく見える程巨大な蝙蝠状の翼により成層圏まで飛翔可能、黄金の鱗が全身を覆い2足歩行とこの巨神龍はカイザーギドラに酷似した姿ながら差異も目立つ。



「そうだ、これだよ。私はこの龍を夢に見たんだ。」

「ひょっとしたら隊長も私みたいに予知能力があるのかもしれませんね。」

「いや、これは予知能力とは違う。私はとにかくあの龍を見たかったんだ。もし仮に平行世界というものがあってそこに別の私がいるなら、その私はあの龍の名を知っているかもしれない。」

 出現した途端に巨大な積乱雲を手足の如く操り関東全域を覆う暴風雨を発生させたキングギドラ、この天候操作能力も以前ジョナの夢に出てきた黄金の三つ首龍と全く同じ。

 着地したキングギドラはキングギドラ側から見て右の首がカイザーギドラ並びにガイガンレクスを睨み、左の首はぐったりしているゴジラを悲しげに眺め、中央の首は注意深く周囲を見回すといった具合に各首それぞれに個性があり、左右の首に何か指示をしている中央の首が司令塔の模様。

「貴方は今その身体に巨神モスラの力を宿していますね。その力をこれからも保持し続けますか?それとも侵略者達に抗い今倒れているあの巨神ゴジラに渡しますか?」

 千手観音の問いに対し藤崎はこう答えた。

「私と同じような力を持つ者がその力に酔い侵略者に成り果て破壊と殺戮を重ねた挙げ句己の身を滅ぼしました。つい先程の出来事です。私はその者と同じ過ちを繰り返さないためにもこのモスラの力をゴジラに渡します。」

 途端にゴジラの全身が翡翠色に輝き、素早く身体を起こした地球最強の巨神は再び闘志をその両目に宿す。

「志保先輩は尾崎とは違うね。尾崎なら巨神モスラから貰った力をそのまま占有していた筈。そもそもX星人の同類に成り果てた侵略者にモスラが力与えること自体があり得ないか。」

「由衣が言った通りカイザーも所詮はヒト。たとえモスラの好意だとしてもヒトが巨神の力を持ち続けるのはおこがましいよ。この力でゴジラが助かるなら私は喜んでゴジラに渡す。」