芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


「撃たれて死にそうになっている俺に向かって腹を切れだと!?貴様何処まで腐っている!?楠木貴様こそ早くくたばれ!地獄に落ちろ!このタワシヒゲがぁ!」

 途端に両目を見開いたままピクリとも動かなくなったあたり、蓑田は最後の力を振り絞り叫んだのだろう。

「たっ、タワシッ、タワシヒゲ、だと?このスダレハゲがぁ!よくも言いやがったなぁ!」

 またしても脳内が噴火した楠木は再びサバイバルナイフを振り上げ蓑田の顔面をザクザク切り刻む。先程の牧野と違い蓑田は既に絶命しているとはいえ、この残忍な腐れ外道は自慢の口髭を侮辱されたのが相当頭に来たようだ。

 自分に対し暴言を吐いた総理経験者二人の顔面を力任せに切り刻んだ楠木ではあるものの、まだ腹の虫が収まらない。そこで楠木は刃が血と脂に塗れ最早使い物にならない凶器をその場に投げ捨て、園内の管理事務所から樹木伐採用のチェーンソーを半ば強引に借り牧野そして蓑田の首を刎ねた。

「貴様らその首を二つともあそこに打ち付けろ!用具が必要なら管理事務所に言え!」

 全身に返り血を浴びた姿のまま怒鳴り散らす楠木に兵士共は皆震え上がり、言われるがまま二つの生首を上野大仏近くの樹木に打ち付ける。

「後は首だけの大仏様に生首になった牧野と蓑田の冥福を祈るだけだ!ナンマイダホーレンソー!アーメンソーメン俺イケメン!」

 確かに現在の上野大仏は頭部のみの姿とはいえ、そのすぐ近くに生首を二つ晒されるのは迷惑この上ないだろう。ところでこの滅茶苦茶な呪文はどうにかならないのだろうか。

「というわけだ、矢口。」

 事のあらましを矢口に話し終え、眼鏡を外した泉はレンズ部分を丁寧に拭く。

「し、信じられん、ここでそんなことが。」

「無理もない。俺は現場にいて一部始終を見たからこうやって解説出来るが、もし逆に君が現場にいて俺にそのことを話しても俺は今の君と同じことを言うだろう。それと念のため言っておくがこの件を刑事告発しても無駄だ。上皇陛下から元老に任じられた楠木さんを殺人や死体損壊で逮捕出来ると思うか?そんなことをすれば楠木さんを元老に任じた上皇陛下の体面にも傷が付く。」

「わかった。もうこの件は忘れよう。」

 泉が楠木を「さん」付けで呼ぶのが少しばかり気になった矢口ではあるものの、余りにも凄惨な光景を目にした上そうなった経緯を知った今となっては取るに足らないことと退けた。

 その楠木は返り血を落とすため全裸姿になりシャワーを浴び、当然ながら牧野並びに蓑田の顔面をザクザク切り刻んだ上晒し首にしたことへの罪悪感など微塵も無い。

「ようやく汚らわしい血を落とせた。この楠木の美しき小麦色の肌に血糊など似合わんからな。」

 楠木が多量の返り血を浴びたのは勝手に激昂し生身の人間の顔面をザクザク切り刻むという己の短気、そして残忍さが原因なのにこの言い草である。

「うむ、この肉体美、何度見ても見飽きない。」

 ギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソスは水面に映る自分の姿に見惚れ衰弱死するまで池のほとりに居続け、ナルシシズム即ち自己愛の語源となったという。そして浴室の壁の鏡に映る己の裸体に夢中の楠木がナルキッソスも真っ青な自己愛に溺れているのは間違いない。

「この楠木がシン・ダビデ像としての己に目覚めはや20年、毎日太陽を浴び続けた小麦色故大理石の像には無い温かみがあるこの楠木の肢体の美しさは本家ダビデ像を遥かに凌ぐ。おっと蠅1匹追い払えない本家ダビデ像と違いこの楠木の全裸には南極にてゴジラを退散という確固たる実績があったか!やはり本家ダビデ像などこの楠木の全裸の足元にも及ばんな!グハハハハ!」