芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


 一ノ瀬が嫌々尾崎と歩いていると、廊下の向こう側からもっと嫌な者、即ち楠木が現れた。先日官邸に乗り込んだ時と違い迷彩服を着ているのは楠木の全裸姿など見たくもない一ノ瀬にとって不幸中の幸いか。

「ほぉ、貴様が足利で唯一生き残ったミュータント兵士か。この楠木も20年前ゴジラを倒すため南極に出向いた際唯一生き残った身だけに親近感を感じるよ。もっともムートー撃退がX星人頼みだった貴様と違い、この楠木は己のイチモツに宿る聖なる力を使いゴジラをビビらせた上氷の下に封じ込めたがな。そして知っての通りつい最近氷の中から出てきたゴジラも完全に消し去った。」

 一ノ瀬即ち女性が目の前にいるのに己の股間にぶら下がるモノの自慢話、やはり楠木は筋金入りのセクハラ野郎だ。

 すると楠木の右隣にいるマンデラがこう言った。

「楠木閣下、お食事を急がれた方が宜しいかと。午後から天皇陛下がおいでになられ、閣下がお出迎えされるのでは?」

 このセクハラ野郎を自分から遠ざけてくれる配慮を感じ取った一ノ瀬はマンデラの方を見て小さく頷き、マンデラもまた楠木に気付かれないよう彼女の方を見て小さく頷く。

「そうだった、馬田貴様本当によく気が付くな。それでこそ名誉日本人。それでは尾崎とやら、このあたりで失礼させてもらう。これからもこの楠木を応援してくれたまえ、グハハハハ!」

 楠木は目の前の女性学者を本当に韓国人だと信じ込み、嫌がらせのため無視し続けた。もっとも尾崎以上に楠木とは口もききたくない一ノ瀬からすれば無視されたのはかえってありがたいぐらいだが。

 地防研の地下に収容されている謎のミイラは身長約120m、尾を含む全長に至っては200m近く、つい最近シベリアの凍土の中から発掘されたという。そしてこのミイラの調査こそ一ノ瀬が潜入任務を買って出た目的に他ならない。

 一ノ瀬を出迎えた初老の主任研究員、神宮寺じんぐうじ友幸ともゆきが、

「あ、アンニョンハセヨ。」

とたどたどしく話すと一ノ瀬は、

「初めまして。私は日本語普通に話せますので日本語で大丈夫ですよ。」

と言い後ろに立つ尾崎には決して見せない笑顔を見せた。

「ではお言葉に甘えて日本語で話そう。この分野の研究に長年携わってきたが正直お手上げだ。機械と生物の融合体、サイボーグ巨獣とでも呼べばいいのか。付着物を分析した結果12000年前のものだとわかった。知っての通り今現在この地球上に機械と生物を融合させる技術など無い。12000年前なら猶更だ。」

「要するにこの巨大ミイラは地球外から来た存在である可能性が極めて高いわけですか。少し前なら地球外生命体など一笑に付されていたでしょうけど、X星人という地球外生命体の実在が確定した今なら十分信憑性があると考えられます。」

 先程「老い耄れで、理屈っぽくて頭ガッチガチ」などと見下していた一ノ瀬の理路整然とした話し方に圧倒され、尾崎は顔中から血の気が失せていく。

「ところでこのM塩基というのは?」

 神宮寺にそう訊ねながら一ノ瀬は手元の資料を指差した。

「地球上の生物のDNAが基本的にアデニン、グアニン、シトシン、チミンと四つの塩基から構成されるのに対し、今貴方の後ろにいる尾崎君のようなミュータントのDNAにはその四つの塩基以外にもう一つ、未知の塩基がある。そいつをM塩基と呼んでいるわけだが、それがどういうわけかこの巨大なミイラからも検出されたんだよ。」

「ミュータントは人間の突然変異ではなく、12000年前のこの巨獣と生物的な関わりがあるわけですか。」