芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


 実のところ2005年以降楠木が総理の人選は勿論内閣の人事にも一切口を出さなかった時期が3年間あった。エルサレムの地に赴き「シン・ダビデ」の威光を示すべきという牧野まきの正助しょうすけの進言に歓喜し、楠木本人が日本を離れたからだ。2009年当時総理だった牧野は単純な楠木をおだてて体よく日本国内から追い出し内閣への干渉を止めさせる腹積もりだったものの、その年の衆院選は保守第一党が議席を大幅に減らし与党の地位を失う結果に終わり牧野内閣は総辞職。楠木のテコ入れ無しには与党の地位を保てない自党のお粗末な実態が全く見えていない牧野の認識の甘さが明らかとなった。

 野党に転落した保守第一党が与党に返り咲けたのは3年ぶりに帰国した楠木のテコ入れに依るところが大きく、かつては楠木を毛嫌いしていた牧野がその楠木の菊門を一心不乱に舐め副総理の地位を懇願等最早党内が楠木への媚び一色と言っていい。一度組閣するも自身の脱税が明るみに出かけたため仮病を使い政権を投げ出した門長かどなが四郎しろうに至っては楠木の菊門の皺の数を覚える等楠木への媚びが度を超え、再び政権を投げ出したのは菊門の舐め過ぎが祟り健康を害したからからだ。このように他人の菊門を舐めるのは大腸菌による口内汚染を招く危険性が高く決して真似しないように。

 イスラエルに赴きやりたい放題していた楠木が何故日本に舞い戻ったかは後程触れることにしてそろそろ本編に戻ろう。結局楠木は全裸姿のままステージ中央の舞台に上がり歌と踊りを披露し始めた。某ガキ大将級の音痴かつブヨブヨ体型の楠木が披露するぎこちない「演舞」が股間部分にぼかし加工もされないまま全国に生中継、この国は一体何処に向かうのだろうか。

「これがあのゴジラを退散させた伝説の全裸!」

「尊い!衣装に頼らず身一つで踊る楠木閣下尊い!」

「建国記念日に楠木元帥閣下の全裸と歌と踊り生で見れたぁ!俺もう死んでもいいかも!」

 このように楠木を熱烈に崇拝する輩が選挙の度その楠木の発した号令通り投票するからこそ保守第一党は与党でいられる。20年前まで教祖法山のりやま伸作しんさくを熱烈に崇拝していた法華聖教の信者達が楠木崇拝に転じ、教団解散により支持母体を失った正大党は連立を組む保守第一党に吸収され、今や日本の選挙自体が楠木一人に牛耳られているに等しい。

 黄色い声を浴び続けご満悦の楠木に水を差すかのように急報が入った。地球防衛海軍中佐の海江田かいえだ浩一こういちが部下達を率いて反乱を起こし、新轟天号を強奪し姿をくらませたのだ。最近完成したばかりのこの万能戦艦は読んで字の如く轟天号の後継艦、予定では武道館の式典の後皇居外苑にて完成記念式典が開催される筈だった。

「この楠木が華麗なる演舞を披露している最中というのに!」

「くっ、楠木元帥閣下、いかが致しましょう?」

「式典は中止だ!広池貴様は早く情報を集めろ!俺は本部に向かう!」

 広池にそう怒鳴りつけた楠木は素っ裸のまま外に出てそのまま勢いよく転んだ。南極の極寒の中全裸のままいられる超人でも真冬の都心なら降り積もる雪により足を滑らせ転ぶことぐらいある。超人であるが故に自惚れ素っ裸のまま雪上を疾走したなら猶更だ。

「何をしている!?早くこの楠木を起こさんかぁ!」

 周囲に怒鳴り散らし全身雪まみれのまま手足をばたつかせるこの全裸男は何処まで恥をかけば気が済むことやら。ここまで読まれて楠木の横暴ぶりに腹を立てている読者の皆様も遠慮せず笑おう。

 取り巻き達に身体を起こしてもらった楠木は全裸姿のまま高機動車に搭乗し臨海地区の地球防衛軍本部を目指す。司令室に入った楠木を大画面に映る海江田の顔が出迎えた。

「海江田貴様!自分が何をしたのかわかっているのか!?よりにもよって建国記念の日に新轟天号を強奪しこの楠木の顔に、そして天皇陛下のお顔に泥を塗ったのだぞ!」

 突然楠木の顔色が変わったのは目の前の大画面が海江田の隣に立つ清仁きよひと即ち今上天皇の姿を映したからだ。

「へっ、陛下!なっ、何故そのような汚らわしい逆賊などと行動を共に!?」

 青ざめた楠木の表情を画面越しに眺める清仁は薄笑いを浮かべている。