芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


 新大阪駅方面に移動中の巨大不明生物は背中に夥しいメーサー光線を浴びた途端に大量出血し、凄まじい悲鳴が半径4km圏内に響き渡る。移動中もほぼ棒立ち状態の愚鈍故巨大不明生物の背中を狙うのは実に容易く、これといって意味も無く高く持ち上げた尾の動きも緩慢この上なく背中を狙うのを阻むには至らない。

「メーサー砲命中!目標、損傷!出血を確認!」

「見たか、最新鋭のメーサー砲の威力を!どうやってあの分厚い氷から出てきたのか知らんが貴様がお昼寝している間にも地球防衛軍の兵器は日進月歩の勢いで進化し続けてきたのだ!この楠木が今度こそゴジラ貴様の息の根を止めてくれるわ!」

 この楠木の物言いは南極にて旧轟天号の性能を自慢げに語る在りし日の麻生に酷似、いや最早麻生そのものか。

「現在ゴジラの背部放熱器官が発光中、詳細不明!」

「ゴジラめ、一体何をするつもりだ?」

 突然巨大不明生物が俯き全身の赤い発光を紫色に変化させ、夥しい黒煙を吐き始めた。その黒煙は瞬く間に火炎放射に変化した途端にまたもや変化し最終的に口から吐いているのは紫色の細い熱線である。巨大な獲物を飲み込むわけでもないのに下顎を左右真っ二つに展開しながら口を大きく開くも結局細い紫色熱線を撃つだけ、やはりこの巨大不明生物は無駄が目立つ。

 口から吐く火炎放射により淀川河川敷に並ぶ戦車隊を壊滅させつつ大阪市内のビル街を火の海に変え、口ばかりか背中の至る所から発射した無数の紫色熱線によりAC-25をはじめ大阪市上空の戦闘機部隊を大阪湾に集う艦隊共々一掃と、広範囲攻撃により体内のエネルギーが尽きた巨大不明生物は新大阪駅構内に佇んだまま動かなくなり、全身の発光も消えている。

「おい!あれは何グワーッ!」

といった具合に大阪市内にて乱暴狼藉を楽しんでいたクズ軍人共は悉く爆炎ないし紫色熱線の餌食になったとはいえ、この巨大不明生物は無性生殖により群体化し地球全体の生態系を歪める性質故クズ軍人共を遥かに凌ぐ害悪だと明記しておく。その害悪が全エネルギーを使い果たし群体化が先送りになったのは不幸中の幸いか。

「楠木閣下、ご無事で何よりです。」

「言った筈だ、この楠木は不死身だと。しかし馬田貴様ヘリ操縦が上手いばかりか墜落直前のヘリから見事に脱出しかすり傷程度で済むとは一体何者だ?」

「ただのモザンビーク生まれの人間ですよ。楠木閣下のお計らいにより現在は日本国籍を得ておりますが。それよりも閣下、上皇陛下はお亡くなりになり大阪に展開した陸海空部隊は壊滅しました。今はこの状況をどう立て直すかが急務です。」

 マンデラが操縦するヘリは紫色熱線の直撃によりテールローターを失ったため失速し、楠木は機内に一つしかないパラシュートを使い脱出とマンデラを見殺しにする暴挙に出た。驚くべきことにマンデラは機体が地上に激突する直前に素早く脱出し負傷を軽い擦り傷程度に留め、自分を見殺しにした外道に対する接し方も以前と同じく恭しい。

「流石この楠木が日本国籍を授与しただけあって馬田貴様察しが良いな。この際貴様が何者かなどどうでも良い。まずはあのデカブツをどう仕留めるかだ。ゴジラを亡き者にすれば無念の最期を遂げられた上皇陛下の霊を弔うことにもなる。そうだ!この戦いは上皇陛下の弔い合戦なのだ!」

 ほんの数分前にマンデラを見殺しにしておきながら一言も詫びずこの上から目線過ぎる物言い、楠木の辞書には反省という単語が載っていないのだろう。そもそも政仁の死と全く関係の無い巨大不明生物を打倒しても弔い合戦にはならないが。

「そういえば私の代わりに閣下に同行していた湊川伍長は今どちらに?」

「急に叫んで走り出したと思ったら足滑らせてコンクリート破砕機の中に落ちたよ、可哀そうに。近日中に葬式を出してやろう。」

 湊川の遺体をコンクリート破砕機に放り込む様子を見せつけ、もし事実を口外すればお前達も放り込むぞと夢洲の現場作業員達を恫喝し沈黙を強要、これが楠木のやり方だ。