芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


「もしかしてこれが例の石香炉の声か。何と透き通った声なんだ。」

 初めて石香炉の声を聞き、ジョナは珍しく両目を丸くしている。

「はい。貴方の配慮のお蔭で私は地球防衛軍兵士に再び盗まれる心配もせず霊力回復に専念出来ました。先程その霊力を使い過去に、12000年前に私自身の意識を遡らせ、当時何があったのかを見てきたところです。」

 この時藤崎がハッとした。

「以前1954年3月1日のマーシャル諸島にタイムスリップしアメリカ軍がゴジラに熱核攻撃する夢を見たんですが、夢にしては余りにも生々しくて臨場感がありました。あれもしかして。」

「藤崎さん、貴方だったんですね。今回私が過去に意識を遡らせることが出来たのは、私のすぐ近くに同じ能力を持つ者の波長を感じたからなんですよ。三種の神器の邪念が私を蝕み霊力を弱らせたのとは逆に、貴方から出る波長がかつての力を取り戻す助けになりました。それでは過去に遡り見てきたことを話します。」

 異星人が地球に襲来しサイボーグ巨獣を操り破壊の限りを尽くす、その異星人は理子に擬態していた怪人と同じ姿、巨神達が侵略者共相手に圧勝、操り主を失ったサイボーグ巨獣が機能停止し地中に埋没、異星人数人が地球人に擬態しつつ当時の地球人と交配し子を成す、その子達は身体能力が異様に高い、石香炉が語る12000年前の出来事を聞き一ノ瀬達は思わず息を呑んだ。

「一ノ瀬さん、貴方が言った通りあの銀色の怪人がX星人の正体なのはほぼ確定だな。そして貴方が遺伝子サンプルを持ってきてくれた例の巨大ミイラがそのサイボーグ巨獣だろう。」

「そして私達ミュータントは12000年前地球人とX星人が交配して生まれた子の末裔。やっぱりM塩基はX星人と関わりがあった。」

「12000年前の侵略を謝罪するどころか今回初めて地球に来たかのように振る舞う、偽清仁や妖星ゴラスの偽映像を用意し私達地球人を騙す気満々、となるとX星人が友好を装いつつ地球侵略を企てているのは自明。となると問題は何故今地球に来たのか、前回の侵略から12000年も経った後に。もしかして前回自分達を撃退した巨神達を意のままに操る技術を完成させたから?」

 一ノ瀬の発言を受けその場が凍りつく。

「由衣の言った通りなら、ここ数年間行方不明だった巨神達が一斉に出現し破壊活動を再開したのも、X星人の宇宙船が光線当てた途端に巨神達が逃げ出したのも全部X星人が操っていたからで説明出来る。となると前回は地球をX星人の侵略から守ってくれた巨神達が今度はX星人の手先に、いやいや、もうそれ地球お終いだよ。」

「そう、お終いだよ。本当に巨神達が完全にX星人に操られていたならの話だけど。」

 今度は一ノ瀬の発言に藤崎そしてジョナが微笑んだ。

「一ノ瀬さん、貴方は巨神達がX星人の操り人形に甘んじる筈が無いと信じているようだね。実は私もなんだ。」

「脅かすなよ、由衣。そもそも巨神達を完全に操れるならそのまま巨神達を暴れさせ続けるだけで私達は詰むし、一旦暴れさせたのにわざわざ退散させるのは余りにも効率が悪いとX星人側も判っている筈。にも拘らずわざわざ一旦暴れさせた巨神達を退散させ友好を装う策に出たのは前回の失敗を踏まえ慎重になっているか、騙されている地球人を見てほくそ笑みたいか、かな?」

「藤崎さん、一ノ瀬さん、いくらX星人共の本心を見抜いても我々の力では到底駆逐出来る相手ではない。かといってこのまま何もしなければ結局向こうの思う壺。そこで賭けに出たい。X星人共を挑発し再び巨神達を暴れさせるよう仕向けるんだ。そうすれば本当にX星人共が巨神達を完全に操れているかどうかがはっきりする。」

「X星人が前回の失敗を踏まえ慎重になっているにせよ、騙されている地球人を見てほくそ笑みたいにせよ、地球人側から挑発されれば本性を現すのはまず間違いないですね。私は隊長の賭けに乗るけど由衣はどうする?」

 一ノ瀬も今はジョナの賭けに乗るしかないと考え、藤崎の問いに対し黙ったまま頷く。

「決まりだな。では早速準備に取り掛かろう。」