芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


 楠木の弱みを握るため配偶者の白骨死体を隠していてそれが無くなった、などとは口が裂けても言えないため、矢口は平静を装いつつ質問に質問を返しお茶を濁した。

「俺と一緒に上野公園に来て欲しい、今すぐに。」

 矢口は泉に先導され上野公園内に足を運び、上野大仏を祀る大仏山を登る。「山」といっても実際は小高い丘だが。

「いっ、泉、これは一体?」

 矢口が指差した樹木には生首が二つ打ち付けられ、その首は両方とも顔面をズタズタにされ蠅数匹が翅をブンブン鳴らし周囲を飛ぶ。眉間に釘を深々と突き刺すやり方は安倍貞任並びに藤原泰衡の生首が丸太に打ち付けられた故事に倣ったのだろうか。

「矢口、上の首は牧野副総裁、そして下の首は蓑田みのだ元総理、いや前総理のものだ。」

 蓑田喜徳よしのりは楠木の菊門を舐め過ぎて健康を害した門長の後を受け総理となるも、1年足らずで政権を投げ出し広池が組閣してからは閑職に追いやられていた。何を隠そうヤマト皇国「建国」を受け真っ先に日本国を見限ったのはこの蓑田である。しかしながら鞍替え後も広池らに主導権を奪われまたもや冷や飯を食う羽目になった蓑田は早くもヤマト皇国に嫌気が差し、ティアマトが新轟天号を返り討ちにしたことにより元首清仁の生還が絶望視された途端に日本国への帰順を表明した。

「何故あの二人がこんなことになったんだ!?」

「矢口、いきなりこんなものを見せられ気が動転しているのはわかるが、まずは君が落ち着け。君が落ち着き次第説明するから心して聞いてくれ。」

 それでは少しだけ時間を遡ろう。日本国への帰順を表明し東京に戻った牧野そして蓑田を地球防衛軍兵士共が取り囲んだ。

「貴様らこの俺を誰と心得る!元勲大久保利通を高祖父に持つ元総理にして保守第一党副総裁の牧野正助だぞ!」

「おいそこのカメラマン、俺ではなくこの無礼者共の顔をしっかり撮れ!俺の言うことが聞けないなら貴様らの会社の代表取締役に左遷するよう厳しく言っておくからな!蓑田善徳を舐めるなよ!」

などと怒鳴る牧野そして蓑田に対し人垣の向こう側に立つ政仁はこう言った。

「静まれ逆賊共、そなた達が我が息子を無理矢理連れて行きヤマト皇国とやらの元首に祀り上げたことも、息子の人の好さにつけ込み危ないところに行かせ帰らぬ人にしたことも全て分かっておる。」

 政仁から直々に逆賊呼ばわりされ相当こたえたのか、牧野も蓑田も一気に青ざめ黙り込む。総理だった頃公共職業安定所を視察し求職者に対し上から目線な物言いをした牧野にせよ、門長内閣の官房長官だった頃報道記者達に対し無礼かつ不誠実な発言を連発した蓑田にせよ、相手が上皇ならここまで卑屈になるのか。

 清仁が自発的にヤマト皇国に鞍替えしたのも、自発的に新轟天号に搭乗しティアマトに挑んだ結果返り討ちに遭ったのも百も承知とはいえ、政仁は息子との確執が世間の目に触れ皇室の体面が大きく傷付くのを恐れ、牧野と蓑田が清仁を強引に連れ出した、ということにしたいのである。

「上皇陛下、これ以上汚らわしい逆賊共を目にするとお身体に障ります。後はこの楠木にお任せを。」

「頼んだぞ、楠木。我が子清仁の無念の思いを晴らすためにも厳罰に処してやってくれ。牧野に至ってはナチスの手口を見習ったらどうかとまで言ったのだから、そのナチスの手口を見習い処罰して構わぬ。」

 政仁は「逆賊」2名を横目で見てニヤリと笑い、楠木もまた嫌らしく微笑む。

 牧野並びに蓑田は上野公園に連行され、楠木から短刀を手渡された。