芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


 ここで尾崎が二人の会話に口を挟む。

「おいおい、この得体の知れない巨大ミイラが俺達ミュータントの祖先だとでも言いたいのか?そんな馬鹿な。」

 間髪入れずに一ノ瀬は尾崎を睨んだ。

「私って老い耄れで、理屈っぽくて頭ガッチガチなんでしょ?そんな私の言うことにいちいち目くじら立てるってどうなの?そもそも今仕事の話しているのに口を挟むとか、ついさっき私が、仕事の邪魔しないで、と言ったのをすっかり忘れてるよ。日頃から、優しさが無くて一体何を守れる、とか言ってるみたいだけど、私の陰口叩いたり私がついさっき言ったこと全部忘れたりと私に対する優しさの欠片も無い癖にどの口が言う?」

 自分より年下の一ノ瀬にガツンと言われたのが堪えたらしく、尾崎は二枚貝の如く口を閉ざした。一ノ瀬は今回の潜入に際しジョナの内通者から送られてきた内部資料に目を通し、尾崎の日頃の発言も一通り把握済み。

「노さん、その辺にしておきなさい。それと尾崎君、見ての通り私は老い耄れ、そして貴方も生きていればいつか必ず老い耄れになる日が来る。若い者程自分が遅かれ早かれ老い耄れになる身なのを忘れがちだから気を付けるように。」

 一ノ瀬への注意は程々にして尾崎への説教に重点を置くあたり、神宮寺も科学者を小馬鹿にする尾崎を内心快く思っていないのだろう。

 先程マンデラが言っていた通り、午後になると清仁らしき者が地防研にやって来た。停車した御料車の車体右側面から研究所正面玄関に向かって赤絨毯が敷かれ、その上を歩く清仁らしき者の両側には楠木ら地球防衛軍関係者がズラリと並ぶ。

「天皇陛下、本日はご多忙にも拘らず当研究所の御視察にお時間を割いて下さりこの楠木感無量であります!」

「楠木さん、貴方最近太り気味ですね。缶コーヒーを飲むのを少しばかり控えなさい。それと少し運動する機会を増やした方が良いのではないですか。」

 確かに楠木の肥満は缶コーヒーの飲み過ぎと運動不足に依るところが大きいとはいえ、大勢の人が見ている中他人の体型をとやかく言う清仁らしき者の振る舞いは決して褒められたものでは無い。

「へ、へへっ、陛下、これは筋肉であります!高負荷の運動を行った後筋肉内に溜まった乳酸等の疲労物質を除去するため血流が増え、結果として筋肉の水分量が増え膨れ上がる現象が起きている最中であります!」

 楠木が所謂パンプアップについてここまで事細かに語れるのは、つい最近マンデラが同じことを言っていたのを聞きそっくりそのまま盗用しているからだ。

「そうですか。それならこれからも運動に励んで下さい。ただし余りご無理をなさらないように。」

「御意!では陛下、そろそろ中に。」

 尾崎、神宮寺ら研究所の中にいる人達が正面玄関から入ってきた清仁らしき者に拍手を送る中、一ノ瀬だけは皆から拍手を送られた初老の男を遠巻きに睨む。

「神宮寺友幸さんですね。父は生前貴方のお名前を何度も語っていました。これからも未知の生物の研究に励んで下さい。」

 目の前に立つ清仁らしき者にそう言われ、神宮寺は感極まり言葉が出て来ない。

 突然銃声が鳴り響き、清仁らしき者がその場に倒れ込んだ。この研究所は正面玄関を入ったところに3階まで吹き抜けのフロアが広がり、1階を見下ろせる3階の廊下に狙撃犯がいる。

「撃たれた!陛下が撃たれたぁ!」

「狙撃犯はあっちにいるぞ!捕まえろぉ!」