芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


「おお、楠木閣下、大阪でゴジラに遭遇したと聞きましたがよくぞご無事で。」

 広池はそう言って楠木に駆け寄った途端に顔面をぶん殴られ、およそ1週間ぶりに眼鏡のフレームが歪む。

「先日総理に返り咲いた時は何処ぞの青瓢箪と違い20年続くこの国の慣例に従ってくれたから鉄拳は勘弁してやったが、熟慮の結果最近日本国を、そしてこの楠木を裏切ったばかりの二股膏薬クソ眼鏡にはやはりお仕置きが必要と判断した。蓑田や牧野みたいな目に遭わずに済んだだけありがたく思え!」

「楠木、その辺にしておけ。今は内輪揉めしている場合では無い。上空のあれをどうするかが焦眉の急だ。」

 義仁がたしなめた途端に大人しくなったあたり、やはりこの外道は皇室の権威には弱い。

「御意!念のため殿下は地下に避難して下さい!この楠木があの巨大UFOを何とかして見せます!」

 義仁が地下シェルターに向かったのを見計らい、楠木は服も下着も全て脱ぎ捨て上空の金属球に向かって以下の通り叫ぶ。皇居のど真ん中に全裸男が仁王立ちし絶叫など皇居の前身、江戸城を築城した太田道灌には絶対見せたくない光景だ。

「何処の星から来たか知らんがこの星を侵略など無駄だ!何故ならこの星には、地球には史上最強の男、楠木武がいるからだ!この楠木の前世、ダビデは投石器を使いゴリアテを打倒したのに対し、この楠木はゴリアテなどより遥かに強大な存在、ゴジラに対し己の全裸を、そして己のイチモツを見せつけて撃退した!ダビデだった頃と違い投石器など最早必要無い!どうだ!貴様らが見下ろしている一糸まとわぬ髭の男の凄さがわかっただろ!グハハハハ!悪いことは言わん!今すぐこの星から立ち去れぇ!」

 拡声器を使うまでもなくこの絶叫は皇居全域にガンガン響き、楠木の裸体がおぼろげに映る長和殿ベランダに張られた防弾ガラスには幾筋も亀裂が走る。広池らは懸命に両耳を塞ぐも何人かはこの騒音地獄に耐えられず白目を剥き卒倒した。少し前に皇居敷地内から野生動物達が一斉に逃げ去ったのは巨大金属球の出現、あるいはこの騒音地獄を本能的に察知したからだろうか。

 楠木が怒鳴り終えると金属球は球体の下部から一筋の光を照射し、全裸男楠木の目の前の地面を照らす。その一筋の光に包まれ人影がゆっくりと降りてきた。人影の両足が地面に着いた途端に光は消え、そこには燕尾服に身を包む初老の紳士が佇む。

「てっ、てててて、天皇陛下!」

 楠木が己の裸体の各所から冷や汗を流しつつ口をパクパクさせ驚くのも無理はない。彼の目の前に佇むにこやかな表情の初老の紳士の姿形は最近まで日本国の象徴として君臨し、海江田らと共にその日本国を見限り新轟天号と運命を共にしたあの清仁そのものだからだ。当然広池らも顔が清仁そっくりな男の出現に動揺を禁じ得ない。

「楠木さん、それに広池さん、ご無沙汰しております。」

 清仁らしき者の物腰柔らかな話し方は普段TVが映す清仁と全く同じ。以前新轟天号の艦内から画面越しに楠木と会話した際の清仁は楠木を呼び捨てにする高慢な男だったような。

「てっ、天皇陛下、ご尊顔を拝し恐悦至極に存じます。よ、よくぞご無事で。この楠木、今後とも陛下に忠誠を誓う所存であります!」

「天皇陛下、この広池一雄、陛下のご無事をずっと信じておりました!」

 楠木といい、広池といい、先程まで義仁にペコペコしていたのに随分と変わり身が早いものだ。

 清仁らしき者は右手を上げ上空の金属球を指し示す。

「危ないところを彼らに助けて頂きました。楠木さんが服を着たら広池さんと共に彼らに挨拶しに行きましょう。」

 再び金属球の下部から一筋の光が照射され、広池、清仁らしき者、そして慌てて迷彩服を着た楠木の3人を球体内部へと導く。どうやらこの光にはエレベーター的な機能がある模様。球体内部にはチューブ状の廊下が走り床部分は石畳状、壁並びに天井には古代遺跡を彷彿とさせる不可思議な模様が刻まれ、楠木並びに広池は清仁らしき者に先導され球体最深部へと向かう。

 球体最深部には巨大空間が広がり、足を踏み入れた楠木らを坊主頭の男がやや胡散臭げに微笑みながら出迎えた。