暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。
序章 南極にて
夜明けが近付く都心の空に天地鳴動の咆哮が鳴り響く。
首相官邸、
国会議事堂等が建つ永田町、日本を代表する官庁街として知られる霞が関、名だたる大企業の本社・本店が集積し巨大なオフィス街を形成する丸の内等は壊滅した上高濃度の放射能に覆われ、聖域とされていた
皇居も今ではただの瓦礫の山。一体何故こんなことに?
いきなりだがここで約20年の時を遡り2005年7月29日、南極の地には荒涼たる氷原が広がり、南半球故現在冬の真っ只中なこの地に吹き荒れる猛吹雪は時としてコウテイペンギンをも凍死させ得る。その苛烈な猛吹雪をものともせず地球最強の
巨神ゴジラが南極の地を闊歩し、氷原に散らばりその殆どが炎に包まれている夥しい残骸は無謀にもこの地球最強の巨神に挑んだ戦車隊の成れの果て。誘導放出されたマイクロ波を照射する指向性エネルギー兵器、メーサー光線砲を搭載した最新鋭の4式メーサー戦車も多数出動したとはいえ、従来の戦車共々燃え盛る残骸と化している。
突然ゴジラの目の前の氷山が砕け、潜水艦に似た形状の戦艦が艦首の巨大ドリルを回転させながら飛び出してきた。水中も地中も移動可能かつ飛行能力を有する
轟天号のご登場だ。この万能戦艦は第二次世界大戦時に大日本帝国海軍が設計したものの敗戦により建造中止を余儀なくされた。
麻生孝昭一等陸佐は皇居地下の秘密工廠に半世紀以上放置されていた未完成の轟天号の建造再開を実現して完成に漕ぎ着け、完成したばかりの万能戦艦に搭乗し地球最強の巨神に挑む。
「見たか、俺の轟天号の機動力を!南極の分厚い氷を掘り進みゴジラお前の目の前に飛び出すことが出来るんだ!ここ南極をお前の墓場にしてやる!撃て!」
艦長席に座る麻生が檄を飛ばすと轟天号は艦体上部にずらりと並ぶ砲身をゴジラに向け一斉砲撃を行う。全身に砲撃を浴びながらもかすり傷さえ負っていないゴジラはそのまま突き進み、108mある身長を上回る長さの尾による強烈な一撃を万能戦艦の艦体に叩き込んだ。
「麻生艦長!制御不能です!轟天号は墜落不可避です!」
悲鳴を上げる
楠木武二等陸尉に対し麻生は激昂した。
「貴様それでも楠木正成公の末裔か!この麻生が毎日のように軍人精神を注入してやっているのだから弱音を吐くなど断じて許さん!早く何とかしろ!俺の轟天号が墜落などあってはならんことだ!」
麻生が怒鳴り散らしたところで轟天号の失速が止まる筈も無く、結局万能戦艦は全長150mという無駄に巨大な艦体を広大な氷原にめり込ませる羽目に。
「メインエンジン停止!」
「怯むなぁ!海自のヘタレ共に代わって轟天号を完成させた我々陸自の底力をゴジラに見せてやれぇ!」
本人がこのように怒鳴るあたり、麻生が海自を敵視し轟天号の建造は海自を排しつつ陸自が主体となって進め現在轟天号に搭乗中の乗組員全員が陸自所属なのは最早自明か。
「ミサイル発射用意!」
轟天号は巡航ミサイル潜水艦同様VLS即ち垂直ミサイル発射装置を有し、そこから多数の巡航ミサイルが発射された。狙うのはゴジラの足元だ。複数発の巡航ミサイルがゴジラの足場に着弾した途端に巨大な地割れが生じ、ゴジラは悲鳴を上げ落下した。
「トドメだぁ!楠木あの氷山を撃てぇ!」
「わぁあああああっ!」
両目に涙を浮かべながら絶叫し麻生の命令通りミサイル発射レバーを手前に倒す楠木、軍国主義プロパガンダ映画の一場面にそのまま使えそうな構図ではある。
楠木が発射した巡航ミサイルがゴジラの落下地点近くの氷山を爆砕し大規模な雪崩を生じさせ、見事ゴジラを地中に封じ込めることに成功した、筈だった。
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