芹沢亀吉
2024-09-04 01:16:26
143708文字
Public 菊タブー
 

108と108

暴虐なナルシストかつ軍国主義者な楠木武が恥をかく物語の通算108話目。仏教において人間一人が持つ煩悩の数は108とされ今回はその108に焦点を当ててみた。いつも通り特盛の残忍描写に加え今回は性描写も色濃く、18歳未満の方が読むのはお勧め出来ない。


「それでは奇兵隊の皆様のご登場です!会場の皆様、盛大な拍手を!」

 広池の発言に伴い楽屋から出てきた全裸姿の男性アイドル達がスポットライトを浴び、両手に持つお盆により股間を隠しつつ拍手並びに歓声を浴びながら特設ステージ上へと移動する。背中がミミズ腫れだらけの者が複数人と、この若き兵士達が楠木から「指導」と称する暴行を頻繁に受けているのはまず間違いない。

 そのまま「奇兵隊」の面々が披露し始めた楠木考案の「お盆踊り」はとどのつまりただの裸踊り。その裸踊りに歓喜し黄色い声を上げる観衆は「お盆踊り」が直球のパワハラそしてセクハラであることには誰一人関心を示さないが。

「それではいよいよ元老でもあらせられる楠木武元帥閣下のご登場です!皆様盛大な拍手を!」

 ところが広池並びに観衆の意に反し楠木はステージ上に出てこない。

 さて読者の中には2025年現在の楠木が有する肩書に驚いた方もいることだろう。何を隠そう自衛隊が地球防衛軍へと発展的解消を遂げた2005年に楠木は自衛官時代中尉相当の二等陸尉だった階級がいきなり陸海空軍元帥になったばかりか、1945年の敗戦以前の日本同様内閣総辞職時の後継総理の指名等国家の重要事項に関与出来る元老の地位を得た。ゴジラを南極の地に封じ込めた自分が日本の政治並びに軍事を担うのは当然、それに見合った地位をという楠木の何とも厚かましい要望に2005年当時今上天皇の地位にあった政仁まさひとが応じたのが事の発端だ。

 現役自衛官にこれほどの地位を与えるなど天皇の国事行為の範疇を逸脱した正真正銘の憲法違反とはいえ、政仁の行いを憲法違反だと非難する者は殆どおらずむしろ英断だと絶賛の声が相次いだのだから始末に負えない。20世紀の終盤頃から巨神の攻勢に怯える日本国民共が前にも増して天皇に縋るようになったのが大きく、楠木自身極右団体との繋がりを利用し天皇崇拝がより一層広まるよう暗躍していたりする。

 それでは本編に戻ろう。いきなり楽屋方面から銃声が鳴り響き、驚いた広池が武装警備員達と共に駆け付けるとドアノブ周辺が弾痕だらけと楽屋のドアが酷いことになっていて、楽屋内では両目を血走らせた楠木が銃口から煙の出ている9mm拳銃を右手に握りながら佇む。

「くっ、楠木元帥閣下、こっ、これは一体?」

と声を震わせる広池の左頬に楠木の拳骨がめり込んだ。広池は事あるごとに楠木に顔面をぶん殴られその度にかけている眼鏡のフレームが歪む。まだ2月の前半にも拘らず2025年の元旦以来広池は既に眼鏡を10回は新調したとか。

「この楠木に気安く話しかけるな!ゴマすりクソ眼鏡!俺は今猛烈に機嫌が悪いんだ!」

 実のところ楠木は意気揚々と楽屋を出ようとしたところ、

「びりびりばりばりっ!!」

と特注品の新品スーツのポケットがドアノブに引っかかりものの見事に裂けてしまった。先程の銃声は楠木が新品スーツの破損に激怒しドアノブに向け9mm拳銃の銃弾を全弾撃ち込む音だったのだ。そして楠木がいきなり広池の左頬をぶん殴ったのが単なる八つ当たりなのは想像に難くない。

「申し訳ございません、楠木元帥閣下!すぐに新しいスーツを用意させます!」

などと土下座し叫ぶ広池はおそらく楠木にぶん殴られる度に同じことをしているのだろう。殴られた側が殴った側に土下座し詫びるというのも色々理不尽だが。

 楠木は土下座する広池の後頭部をグリグリ踏ん付け以下のように叫んだ。

「馬鹿者!貴様それでも総理か!新しいスーツを着たところでまたドアノブにポケットが引っかかって破れたら無意味だろうが!そんなこともわからん癖に総理やっているのか!恥を知れ!」

 驚いたことに秘書として毎日楠木に酷使され続ける広池は現役の内閣総理大臣、即ち日本国首相だったのである。楠木は元老の地位を得て以来総理の人選は勿論内閣の人事にも度々介入してきた。新たな内閣総理大臣が決まる度官邸に赴きその新総理に己の菊門を舐めるのを強要するあたり完全に楠木は図に乗っている。