糸冬いずく
2024-09-16 00:16:00
157796文字
Public 二次創作:キリングミュータント
 

キリングミュータント【リブーテッド】

完結、夢主あり、赤羽業、暗殺教室、Paranoia

三日月が爆誕した春、新しいクラスが三年E組だろうと、担任教師が犯人だろうと、隣が赤羽業だろうと、成すべきことは変わらない。ミュータントは、すぐそこにいる——。

あなたは椚ヶ丘中学三年E組の女子生徒[$名前が見つかりません]です。
トラブルシューターが前世のミュータントな[$名前が見つかりません]と、隣の席の赤羽業が、ミュータントを殺す話。

クロスオーバーです。複数の作品の要素が登場します。
異世界の描写を含みます。主人公または周辺人物が別の世界へ渡ります。
転生の描写を含みます。主人公または周辺人物が死んで生まれ変わります。
主人公または視点人物が異性からの性暴力の被害に遭います。
主人公または視点人物が暴力の被害に遭います。


一月、そして戦争

  一

 一月八日、朝の両親は、一片の疑いもなく娘を送り出した。冬休みの前も後も変わらぬ学校生活へ。
 一度クラスメイトと初詣に出かけたら、二人からの朝の質問は途絶えた。あれからクラスの人間とは会っていないが、そこはそれ、中学三年生の冬だからとようやく納得できたらしい。合格守などに千円もはたいた甲斐があった。
 とはいえ、
「おはようございます。三学期もよく学び、よく殺しましょう」
 長期休暇に入る前と同じく、前にも後ろにもクラスメイトが見えない通学路。その頂点の玄関口に担任と副担任が立ち、二週間前に自らの寿命を告げた先生が、今朝も三日月のように笑っている。——それが異様に浮いていた。
「おはようございます」
 それだけの挨拶が響き渡るような錯覚がするほど、校舎全体に活気がない。教室が静かであることが、玄関口から把握できる。烏間先生の表情は険しい。暗殺教室の行く末を憂いているのだ。
 私は先生の顔を見あげた。いつもの顔が私を見下ろしていた。
 ——いつか暗殺に来てください。
 つぶらな瞳と大きな口が、明朗な笑顔を形づくっている。ヌルフフフと声がする。
 烏間先生が私たちに顔を向けて、瞠目する。
 私はその横を過ぎて校舎に入った。靴を履き替え、廊下を歩くと、床のきしむ音がよく響く。実際に教室にたどり着いても、やはり様子は変わらない。
 開いたままの入口から無言で席まで歩き荷物を置いた。すでに着席していた奥田さんとイトナくんが、そこで僅かに反応を示す。互いに「おはよう」を交わしたが、そうするまで二人とも、ただ椅子に座っていたようだ。そして、それだけで教室は静まり返る。奥田さんもイトナくんも前を向いた。向くだけだ。二人だけではない。皆、会話も読書も工作も、勉強も、暗殺も、方法を忘れたみたいに、しんと時間をやり過ごしている。
 初詣でカルマとは少し話したが、これが先生が過去を語らなかった理由だ。生徒の殺意が鈍ったら、暗殺教室は簡単に崩壊する。今や口実だけが必要だった。幸い、殺そうと言い出さなければ済んだ冬休みは終わり、標的との学校生活が再び始まろうとしている。監督役の烏間先生もいる。きっかけなど、いつでも、幾つでも、つくりたいだけ、つくれるだろう。
 とはいえ先生も休みの間に覚悟を決めてきたようだ。
 カルマは私の五分後に教室に来た。やはり今朝も同じ車両に乗らなかったカルマは、例に漏れず無言で入ってきて、私の読書を目に留めながらも、挨拶以外では口を開かない構えだ。あのカルマでさえこれなのだから、いくら生徒の数がそろっても教室の空気は変わらない。
 結局この重苦しい静寂はビッチ先生によって破られる。
「一番愚かな殺し方は、感情や欲望で無計画に殺すこと」
 動物以下の行為だと殺し屋は吐き捨てた。齢二十にして潜入暗殺の分野で最高峰と評されるだけのことはあって、重苦しい過去も二つ三つとあるらしい。
「次に愚かなのは、自分の気持ちを殺しながら、相手を殺すこと」
 顧みるように告げられた言葉に、生徒たちが顔をあげる。
「私のような殺し方をしては駄目。金のかわりに、たくさんのものを失うわ。散々悩みなさい、ガキ供——あんたたちの中の、一番大切な気持ちを殺さないために」
 それは、ただちに生徒たちに行動を起こさせるものではなかったが、確実にきっかけにはなった。
 英語教師が背を向けると、入れ替わるように担任教師が現れて、朝のホームルームが始まる。異様に明朗な表情で「あけましておめでとうございます」と。「今年もよろしくお願いします」と。
「まあ今年も残すところ、あと二か月と少しになりましたがね」
 先生はぬるりと言葉を選ぶ。