糸冬いずく
2024-09-16 00:16:00
157796文字
Public 二次創作:キリングミュータント
 

キリングミュータント【リブーテッド】

完結、夢主あり、赤羽業、暗殺教室、Paranoia

三日月が爆誕した春、新しいクラスが三年E組だろうと、担任教師が犯人だろうと、隣が赤羽業だろうと、成すべきことは変わらない。ミュータントは、すぐそこにいる——。

あなたは椚ヶ丘中学三年E組の女子生徒[$名前が見つかりません]です。
トラブルシューターが前世のミュータントな[$名前が見つかりません]と、隣の席の赤羽業が、ミュータントを殺す話。

クロスオーバーです。複数の作品の要素が登場します。
異世界の描写を含みます。主人公または周辺人物が別の世界へ渡ります。
転生の描写を含みます。主人公または周辺人物が死んで生まれ変わります。
主人公または視点人物が異性からの性暴力の被害に遭います。
主人公または視点人物が暴力の被害に遭います。


  三

 椚ヶ丘で先生と別れた。電車通学のクラスメイトともおよそ構内で別れてしまって、赤羽と二人で電車を待つ。赤羽と私の定期券はかなり範囲が重なっているのだ。そういえば。いつものプラットホームに今日は椚ヶ丘生がただの二人だけだ。いっそ一人で帰りたかった。自動販売機程度でも寄り道をしてくれればよかったのに、少し時間が遅かったからか、一緒にまっすぐ歩いてしまった。
 とはいえ話し込むような事態にもならない。プラットホームに着くやどちらからともなく端末と一緒にイヤホンをとり出したほどだ。重い空気も引き継いでいた。今晩またも堀部イトナが標的を仕留められなかったのだ。保護者は子供に見切りをつけ、子供は独り夜の闇に消えた。私たちは彼を見つけようとしたが、触手の機動力は超人的だ。だから先生がまた捜索に出るのだろう。
 見つかればよい、とは思う。しかし依然として予感はなくならない。
 電車の到着を待つ間、私は親に帰宅の連絡を入れ、幾らかの通知に対処した。数は少ないがいずれもこの一時間の連絡で、大体はクラスメイトから、身の安全を心配する内容だった。詳細はすでに不破さんや人工知能が共有している。私は奥田さんの連絡から順に返事を送信するだけでよかった。
「大丈夫でしたか」
「私は大丈夫だったよ。それよりもイトナくんが心配だな。雨が降らなければいいんだけど」
 烏間先生からも連絡があった。ちょうど電車が到着する頃で、私は赤羽と顔を合わせて、けれども黙って電車に乗り込んだ。走行音だけが響く車内で、イヤホン越しに合成音声が内容を読みあげる。真新しい情報はほとんどないが、現場に居合わせた生徒を心配する言葉と、一連のできごとを謝罪する言葉と。「暗殺のために君たちに不安な思いをさせてしまってすまなかった」などとは、彼とて今しがたまで何も知らされてはいなかっただろうに。
 そうした通知も徐々に落ち着き、電子書籍を開いて二十分、区切りよく降車駅に着く。私は赤羽と形式的に挨拶を交わすと、いつもの扉からプラットホームに降り立った。まっすぐに、いつもの改札に向かい、外でまた親に報告を入れる。迎えを申し出てくれたが、この時間ならまだ人通りがある。彼らはすんなり引き下がった。とはいえ私も早まったのかもしれない。
 人の波に紛れて歩くうち、妙な気配がして振り返ったら、
「あ、バレたか」
 電車で別れたはずの赤羽がいた。
「ど、どうして電車降りて——
「めっずらしー、驚いてんの」
 距離をとっていたらしい赤羽が、あっという間に隣に並ぶ。私は仕方なしに足並みをそろえた。
「別の扉から出たんだけど、そっちは気づかなかったんだ」
「手も振ったし、赤羽くんはもっと先でしょ」
「まあね。でも今夜は遅いから」
「送っていこうと思って」と赤羽は言った。謝りもした。「混雑状況の想定が甘かった。ごめん。本当は改札でバラすはずだった」
 驚かせる計画ではあったようだ。
「なんで、わざわざ」
「家までしばらく歩くんでしょ。夜の一人歩きは危険だって殺せんせーも言ってたじゃん」
「そんなの赤羽くんも一緒だと思うけど」
 おとなしくやられるとも思わないが。むしろ並の相手なら、その相手側の心配をしてやるべきだろう。まともな判断がつけば逃げの一手をとってくれるだろうけれど、さもなくばたやすく倒されることになる。
 そして私に対してこそ、かような心配はお門違いというものだ。ミュータントパワーを使うにしろ使わないにしろ、たとえ相手が赤羽だろうと遅れをとるつもりはなかった。
「訓練の成績、俺より下じゃなかったっけ」
 もっともミュータントパワーをひけらかすことはできない。暗殺訓練を引き合いに出されれば、この私は確かに赤羽より劣ってもいる。よって赤羽や不審者から無事に逃げおおせる根拠も薄くなる。
「赤羽くん、また駅まで引き返すことになるよ。いざとなったら私は迎えを呼べばいいけど、赤羽くんは——
「そのときは俺も殺せんせー呼ぶから」
 赤羽に想定できていなかったことは、たしかにこの駅の混雑状況だけだったようだ。返す手があり、私の足元を見ている。説得を続ける私を、彼はみるみる退屈を表しながらも、割合辛抱強く待っていた。時間に直せば三分もかからなかったことだが、彼は確かに待っていた。何かを私から引き出せる時を。しかし、それだけは赤羽も知らなかったのだ。
 この私は決して不相応な振る舞いをしない。
 結局先に赤羽が折れた。
「俺から誘った遊びの帰りに何かあったなんて聞かされたくない」
「そんな、何もないと思うけど」
 いずれにせよ、この私も折れなければならない。