糸冬いずく
2024-09-16 00:16:00
157796文字
Public 二次創作:キリングミュータント
 

キリングミュータント【リブーテッド】

完結、夢主あり、赤羽業、暗殺教室、Paranoia

三日月が爆誕した春、新しいクラスが三年E組だろうと、担任教師が犯人だろうと、隣が赤羽業だろうと、成すべきことは変わらない。ミュータントは、すぐそこにいる——。

あなたは椚ヶ丘中学三年E組の女子生徒[$名前が見つかりません]です。
トラブルシューターが前世のミュータントな[$名前が見つかりません]と、隣の席の赤羽業が、ミュータントを殺す話。

クロスオーバーです。複数の作品の要素が登場します。
異世界の描写を含みます。主人公または周辺人物が別の世界へ渡ります。
転生の描写を含みます。主人公または周辺人物が死んで生まれ変わります。
主人公または視点人物が異性からの性暴力の被害に遭います。
主人公または視点人物が暴力の被害に遭います。


  二

 E組は期末テストでA組と賭けをした。突発的な対決だったが主要五教科の各点数を競ったのだ。結果は三対二でE組の勝利。勝者は事前の取り決めに従い、敗者に一つの命令を下した。これがこの夏まさに今現在の沖縄旅行につながっている。
 特別夏期講習といった。当校の誇る優等生たちが、さらなる向上のために、たとえ夏休みだろうといや夏休みだからこそ環境を変えて将来のために励む合宿。つまり三年A組に選ばれたら、夏に離島旅行二泊三日が楽しめると。それも学校予算の内から。
 とはいえ今年はこうしてE組に与えられた。そしてE組はこの権利をもう一つの賭けで得た権利と組み合わせることにした。海に囲まれた南の島で、水を弱点とする賞金首を満を持して暗殺する。
 ふと口の中で味を感じた。一年に一度、広がる空気。海のにおいだ。海水浴は夏の恒例行事だった。二歳頃から両親と、小学校高学年頃からは友人と、一昨年も、昨年も。今年は沖縄旅行の予定で、このとおり私はE組に落ちてしまったが、このとおり私だけが南国の海に来た。歩きながら顔だけ横に向けてみる。水着も砂浜も見えないものの、世界はいまだ毒々しい。
「海のにおいだ」
 ふと反対側で声がした。振り向いたら目が合ったから、どうも対象は私らしい。潮臭い磯臭いと訴えたいのか。それならば当然にわかりきったことだろうが。私たちはつい十分前までダイビング——海に潜っていたのである。体はシャワーで流したけれど、満足するには宿泊施設に戻らなければならない。このことも当然にわかりきったことだろうが。
 赤羽はその明白な事柄について笑みさえ浮かべるものであった。横では奥田さんもくすくすと笑みを漏らすのだから、私もくすくすとこたえなければならない。
「赤羽くんもでしょ」
「俺はクリック音とか使えないから」
 赤羽は数百メートル先を見据えた。私たちのの目的地だ。私は首を横に振った。
「私もイルカじゃないよ」
「あ、そう」
 赤羽はとぼけた。
「奥田さんは」と矛先を向けられて、奥田さんが慌てて否定する。だが彼女は体の前で両手を合わせると、指を交差させ、「イルカ、クジラ——は言語を持つんじゃないかって研究ですよね」
 話題は実に科学的に発展した。情報伝達能力、知性の可能性、体重に占める脳の割合。赤羽が何気なく会話を進め、奥田さんは当然に、この私も便乗した。
 この先に建つ小屋からはイルカを観察できる船が出ている。合宿予算で利用できる施設で、標的を島から引き離す機会につながるため、私たちの班にあてがわれた。結局のところ、これも今日の暗殺の一環なのだ。
 修学旅行と同様に班をつくり、修学旅行と同様に班別に行動し、修学旅行と同様に班ごとに担任教師と遊ぶ。修学旅行と違うところは、職業暗殺者との共同計画ではないところ、班別の暗殺計画でもないところ。
 今日はクラス全員で暗殺する。
 E組生徒は今夜の超生物暗殺を念頭に、一日の計画を立てた。一つの班が標的の注意を引きつけ、残りの班が準備をする。その繰り返しを、どの班も滞りなく済ませたと報告してきて、瑕疵は一つもあがらない。標的も監督者も殺し屋も、何を注意することもない。私の横では奥田さんと赤羽が心身とも健全に談笑している。
 ——時々、奥田さんと席が逆だったときのことを考える。
 私は頭をゆるゆると振った。顔をあげると目的地までいつしか数十メートル。ちょうど渚くんが声をかけた。班員がそれぞれ準備して、やがて足並みをそろえて待つこと少し、先生が飛んでくる。開襟シャツに麦わら帽子。すっかり南国を満喫した様子だ。妙な日焼けまでつくっている。
「えっと、殺せんせー、その日焼けは」
 さっそく班長の渚くんが先陣を切った。担任の先生はぬるりと笑った。
「グライダーで遊んだらすっかり焼けてしまいました」