糸冬いずく
2024-09-16 00:16:00
157796文字
Public 二次創作:キリングミュータント
 

キリングミュータント【リブーテッド】

完結、夢主あり、赤羽業、暗殺教室、Paranoia

三日月が爆誕した春、新しいクラスが三年E組だろうと、担任教師が犯人だろうと、隣が赤羽業だろうと、成すべきことは変わらない。ミュータントは、すぐそこにいる——。

あなたは椚ヶ丘中学三年E組の女子生徒[$名前が見つかりません]です。
トラブルシューターが前世のミュータントな[$名前が見つかりません]と、隣の席の赤羽業が、ミュータントを殺す話。

クロスオーバーです。複数の作品の要素が登場します。
異世界の描写を含みます。主人公または周辺人物が別の世界へ渡ります。
転生の描写を含みます。主人公または周辺人物が死んで生まれ変わります。
主人公または視点人物が異性からの性暴力の被害に遭います。
主人公または視点人物が暴力の被害に遭います。


七月、そして期末テスト

  一

 木陰で先生が赤色を走らせた。「よくできていますね」ともう一人が教科書をめくる。そのまた横の先生は参考書を二、三冊ほど広げてみせ、ふとした拍子に顔をあげた。校舎の時計を見たか、はたまた空模様から時間を読んだか。私はその視線を追わなかったが、まもなく全体の中央にさらなる先生が出現する。最高速度マッハ二十の触手生物は分身の術を使うのだ。
 というと、あたかも自分が複数人いるかに見せかける技術で、実際に身体が分割されたり複製されたりするわけではない。ミュータントパワーで分割や複製をすることは不可能ではないが、先生の場合は例によってまやかしの残像だ。超人的な身体能力と思考能力のなせる業である。
 かくして生徒一人につき担任教師が二、三人、屋外での一斉個別指導となったわけだが、今は一旦中断のようだ。
「ヌルフフフ」
 私の前の先生が筆を握ってぬるりと笑った。クラスメイトの周囲でも、それぞれの先生が同じく笑って、一学期の間の学習の成果を告げる。私の筆記帳にも丸が並んで、
「この分なら期末の成績はジャンプアップが期待できます」
 生徒と先生と分身の頭上で、木の葉がさわさわと風に揺れた。七月も半ば、夏服を着てプールも来て、旧校舎はいよいよ誇らしいまでに——劣悪に——なった。昼休みに入るまで集中が続けば御の字だが、それも真昼間のプールを当てにしてのこと。当然に午後の授業を教室で受けたい——とは思えない——。教室よりも木陰が涼しい。そういう季節が盛りを迎えようとしている。
 夏、学期末である。中学生にとっては。期末テストの季節だった。
「今回は、この暗殺教室にぴったりの目標を設定しました」
 暑い夏の午後に屋外で、期末テストのための個別指導を施していた担任教師たちが、宣言とともに一か所に集まった。内一人は単語帳を口にくわえて見せびらかす。複数の単語帳を、一つの口で。それぞれの単語帳には、大文字のアルファベットが一字ずつ書かれており、続けて読むと、——ラッキーチャンス。クラスメイトの手が止まった。
 前回、修学旅行の前の中間テストでも、先生はクラスの目標を提示した。学年順位で五十位以内。五十人で構成された学年でなければ、成績優秀者で構成されたクラスでもない。E組はむしろ学年約百九十名から選び抜かれた約三十名の劣等生で構成されている。一見無理難題で、結局達成できなかったが、先生には勝算があって、実際のところも諸事情さえなければ全員五十位以内だっただろう、ということがあった。
 椚ヶ丘中学校三年E組はあくまで劣等生でなければならない。
 ところが先生はE組制度そのことを踏まえても「総合点ばかりを気にしていました」と反省したそうだ。彼はどこからともなく拳銃を拾った。「前にシロさんが言ったとおり、先生は触手を失うと動きが落ちます」
 ありふれた銃口からありふれた弾丸が勢いづいて飛び出した。あたりまえに命中したそれは先生の脚を弾けさせる。クラスメイトは目を見張った。E組には拳銃も対触手弾もありふれている。だが、いまだ珍しい光景だった。マッハ二十の標的は弾幕さえもかわしきる。裏山前の木の下で先生だけが平然としていた。
「一本減っても影響は出ます」
 先生は驚愕の最中にある生徒に向けて観察を促した。「ご覧なさい」
 示されるまでもなく先をうかがって、私もはっと息をのむ。子供の分身が混じってしまっている。深刻な事実だった。だが先生は一定の表情の下でまた躊躇することなく発砲を重ねた。
「ご覧なさい。子供分身がさらに増え、親分身が家計のやりくりに苦しんでいます」
 肉が弾け飛んだ音。しかし先生は表情を見失わない。さらに引き金に力が込められてまた一本先端が切り離されると、同時に父親が蒸発した。
 びたびたと肉が跳ねた。
「いろいろと試してみた結果、触手一本につき先生が失う運動能力は、——ざっと二十パーセント」
 跳ねた先から形が失われていく。
「教科ごとに学年一位をとった者には、答案の返却時、触手を一本破壊する権利をあげましょう」
 最近、知ったことがある。先生は本当に爆発する。次の三月に、地球ごと。