糸冬いずく
2024-09-16 00:16:00
157796文字
Public 二次創作:キリングミュータント
 

キリングミュータント【リブーテッド】

完結、夢主あり、赤羽業、暗殺教室、Paranoia

三日月が爆誕した春、新しいクラスが三年E組だろうと、担任教師が犯人だろうと、隣が赤羽業だろうと、成すべきことは変わらない。ミュータントは、すぐそこにいる——。

あなたは椚ヶ丘中学三年E組の女子生徒[$名前が見つかりません]です。
トラブルシューターが前世のミュータントな[$名前が見つかりません]と、隣の席の赤羽業が、ミュータントを殺す話。

クロスオーバーです。複数の作品の要素が登場します。
異世界の描写を含みます。主人公または周辺人物が別の世界へ渡ります。
転生の描写を含みます。主人公または周辺人物が死んで生まれ変わります。
主人公または視点人物が異性からの性暴力の被害に遭います。
主人公または視点人物が暴力の被害に遭います。


五月、そして転校生

  一

 私の席は、教室最後方その中央の列に位置する。廊下側から性別ごとに交互に並んだ四列目、つまり運動場側から数えて三列目だ。昨冬のE組落ちに伴う自宅謹慎処分で、四月に入っても登校初日からは出席できなかった都合だろう。だから転校生の席も同じく最後方にそびえ立つこととなった。
「おはようございます。今日から転校してきました。自律思考固定砲台と申します。よろしくお願いします」
 私の二つ左隣、運動場側の窓際の席だ。ただし机と椅子はなく、かわりに黒色の筐体が、席の辺りに根づいている。身長が百七十センチ、体重が推定五百キロ、顔は相応の位置に設けられたディスプレイが、ようやく少女の絵姿描画している。姓を自律思考、名を固定砲台、いや逆かもしれない。当然一般人ではありえない彼女が、ノルウェー出身であるらしいことを、クラスメイトが苦労を重ねて聞き出していたので。
「おはようございます。今日から転校してきました。自律思考固定砲台と申します。よろしくお願いします」
 転校生暗殺者の到来である。だがクラスメイトは多少は冷静だ。教室はかつてない静寂に包まれても、転校生暗殺者の登場は薄々と予期されていた。まず潜入暗殺者ビッチ先生の前例がある。そして何よりは百億円の賞金首が教職にありつくための契約だ。国家機密の破壊生物のふざけた提案に対して、政府がつけた注文が一つ。E組の生徒には絶対に危害を加えないこと——
「おはようございます。今日から転校してきました。自律思考固定砲台と申します。よろしくお願いします」
 暗殺者はむしろ生徒としてこそ投入されるべきだった。だからといって機械を転校生に仕立てあげるとは、なりふり構わぬ状況らしいが、ともあれ理事長は転校生を認めた。名前があって、顔も示され、曲がりなりにも自律している。だから射撃特化の戦闘ボット——ごとき——が一生徒として登録されて、だから先生は——たかが——ボットを——破壊——もできない。
「おはようございます。今日から転校してきました。自律思考固定砲台と申します。よろしくお願いします」
 口から出ようとしたため息を、すんでのところでこの私がとどめる。隣の隣のかつて空席だった場所に、見ても見なくても転校生が着席して目を閉じている。しかしクラスメイトが教室に足を踏み入れるたびに、瞬時に反応して、
「おはようございます。今日から転校してきました。自律思考固定砲台と申します。よろしくお願いします」
 定型文を繰り返した転校生が返事も待たずに元に戻ると、新たに登校してきたクラスメイトはしばし間を置いて感嘆し、やがて私の右隣で椅子を引いた。机の上に荷物も置かれ、「おはよ」と表情のにじんだ声。
「おはよう」
 私は遅れて返事した。
「あれが転校生なんだ」
 登校してきたばかりのクラスメイトは「女子じゃん」と私の向こうを見た。「女子みたい」と私は顔をあげたまま肯定する。
 転校してきたばかりの女子の黒々とした全身を眺めた彼は口角をあげる。「何かしゃべった」
 私は顔をあげたまま否定した。「ううん、なんにも」
 と、クラスメイトの気まぐれに始まった会話は、私の返事に飽きたら終わりだ。やがて黒色のカーディガンは正面を向く。誰かが聞き出した出身地でも教えてやればよかっただろうか。曲がりなりにも人工知能を搭載しているものだろうと、講釈でも垂れてやればよかっただろうか。いや、まさか。いずれにせよ長続きはしなかったのだ。まもなく始業時間になる。
 ——しかし遅刻の常習犯も転校生が来る朝くらいは時間を守れるものらしい。