糸冬いずく
2024-09-16 00:16:00
157796文字
Public 二次創作:キリングミュータント
 

キリングミュータント【リブーテッド】

完結、夢主あり、赤羽業、暗殺教室、Paranoia

三日月が爆誕した春、新しいクラスが三年E組だろうと、担任教師が犯人だろうと、隣が赤羽業だろうと、成すべきことは変わらない。ミュータントは、すぐそこにいる——。

あなたは椚ヶ丘中学三年E組の女子生徒[$名前が見つかりません]です。
トラブルシューターが前世のミュータントな[$名前が見つかりません]と、隣の席の赤羽業が、ミュータントを殺す話。

クロスオーバーです。複数の作品の要素が登場します。
異世界の描写を含みます。主人公または周辺人物が別の世界へ渡ります。
転生の描写を含みます。主人公または周辺人物が死んで生まれ変わります。
主人公または視点人物が異性からの性暴力の被害に遭います。
主人公または視点人物が暴力の被害に遭います。


  四

 その日は終業式まで行われた。答案返却後、本校舎体育館での式のためだけに山を下り、終われば最後のホームルームのために山をのぼり、それも終われば下校するためにまた山を下りる。そうして荷物諸共、下り坂に向かって校門を抜けたときのことだ。
「あんたさ、俺に言いたいことがあるんじゃないの」
 少し後ろを歩いていたクラスメイトが、わざわざ隣に並んできた。
「赤羽くん」
 位置関係は互いに把握していたから、特に驚くことはない。特に共に帰る意図もなかったが。放課後になったから教室を出ただけ。最終日だったから放課後訓練もなかっただけ。だから結果として多くのクラスメイトと共に、山を下りることになっただけ。そうした流れに沿って、隣の席の赤羽と偶然同時に教室を出た。靴を履き替えた。同じ道を同じ速度で歩いて、同じ門を抜けることになった。
 しかし私と赤羽はこの認識を、共有するものではなかったようだ。特に驚くことはない。とはいえ、それには意図が必要だ。
 同様の質問を受けた覚えはある。ちょうど相手も赤羽だった。修学旅行の夜のことだ。長い雑談を挟んでようやく、昨冬の私のE組落ちに関して贖罪しようとしたのだった。当時それまで謝罪の一つもなかったから、さすがにこの私も然るべく思い当たって、およそ想定内の問答の中で彼を快くゆるした。——つまりは今は済んだ話だ。
 だからやはり見当もつかないのだが、私は少し考える素振りを見せて、
「何のこと」
 正直に質問を返すことにした。赤羽に対して言いたいことなど、この私にはもはや何一つとしてないのだ。しかし速度は合わせてやった。今の私は気分がよい。この程度は譲歩の内にも含まれない。
 隣の顔は正面を向いていた。「そんなにうれしそうなとこ初めて見た」
 はるか前方に茅野さんと奥田さんがいる。
「ふふ、なんだ、そんなこと」
 私は急に笑いたくなった。「実はね」と少しだけ声を潜めて。「テストの成績があがったの」
「すごく難しくなってたのに」と、付け足すと、返事があった。「そうだったね」と隣から気の抜けたような声。成績の上昇か問題の難化か、彼がどちらにうなずいたかは私にはわからなかった。だが今はどちらでも構わなかった。
「学年一位は無理だったけど、理科と数学が特にあがってて」
「そっか」
 赤羽が平坦に音を紡ぐ。声色は読みとれない。思いついて再び隣を見るまでもなく、彼は正面を向いている。顔には影が生まれていた。過去の退屈な会話の中で、今のような表情をつくっていたかもしれないが、私は初めからどちらでも構わなかった。今はいつにも増して、どうでもよい。ふと頬が緩み、息がこぼれる。一方、赤羽はそれきり口を閉じた。
 一歩、二歩、五歩、十歩。この私も困惑しつつも隣人にならったら、十メートルも二十メートルも無言のまま下ってしまう。それは決して悪い時間ではなかったが、いよいよ三十メートルを過ぎる頃、さすがにと思って隣の様子をうかがったら、
「幸せそうだね」
「うん、私は幸せだよ」
 考えるより先に答えることになった。答えた瞬間、視線が交わった。すっかり感情を押し隠した瞳に、満開の笑顔が映り込む。
 赤羽の中間テストは学年四位だった。赤羽の得意科目は数学だった。赤羽の期末テストは学年十三位だった。赤羽の数学は学年十一位だった。私の総合点は、やはり赤羽には及ばなかったが、数学の学年成績は三位だった。
 まもなく赤羽が正面を向きかける。はたして配慮が必要だったか、いや

「赤羽くんは」

 そのようなものが一分でも備わっていれば、それは問うまでもないことだった。この夏の三年E組には総合点一位を期待された生徒がいた。——そして私は幸福だった。
 それは自問自答より自己暗示より、この私より、誰より、何より、普遍的に必然的に果たされるものだ。