Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
糸冬いずく
2024-09-16 00:16:00
157796文字
Public
二次創作:キリングミュータント
Clear cache
Export ePub
キリングミュータント【リブーテッド】
完結、夢主あり、赤羽業、暗殺教室、Paranoia
三日月が爆誕した春、新しいクラスが三年E組だろうと、担任教師が犯人だろうと、隣が赤羽業だろうと、成すべきことは変わらない。ミュータントは、すぐそこにいる——。
あなたは椚ヶ丘中学三年E組の女子生徒[$名前が見つかりません]です。
トラブルシューターが前世のミュータントな[$名前が見つかりません]と、隣の席の赤羽業が、ミュータントを殺す話。
クロスオーバーです。複数の作品の要素が登場します。
異世界の描写を含みます。主人公または周辺人物が別の世界へ渡ります。
転生の描写を含みます。主人公または周辺人物が死んで生まれ変わります。
主人公または視点人物が異性からの性暴力の被害に遭います。
主人公または視点人物が暴力の被害に遭います。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
四
「まあ初めて顔を合わせたときにわかったことはあったよ、お互いに」
私たちは足を止めずに歩き続けた。
「私たち、修学旅行で同じ班になったよね。おまえが渚くんに誘われて、私が奥田さんに誘われて」
「え、おまえが奥田さん誘ったんじゃなかったの。
——
あ、でも、そっか。おまえが渚くんの班を選ぶわけないか」
「高確率でおまえがついてくるからな」
「ってことは奥田さんは
——
茅野ちゃんが誘った」
「そういうこと。で、そのまま奥田さんをけしかけてきたの」
「ふうん、『けしかけて』ね」
べつに、背中を押して、と言い換えてやってもいいが。茅野さんはよく人を見ていた。多かれ少なかれ奥田さんの気持ちも察していただろう。
「何も全部が私を班に引き入れるためだったとは言わない。けど、奥田さんが私を誘えば儲けもの、くらいには思ってただろうよ。実際、奥田さんは私を誘ってくれたし、あれ以来、一緒に過ごす機会は増えた。お互いに、余計なことを言わないようにね」
そして私たちは互いに「余計なこと」を言わなかった。余計なこと。些末なことだ。私たちがある種の演技をしていたことは、私がミュータントパワーを隠していることと比べたら、茅野さんが
触手を隠し持っていた
ことと比べたら、本当に些末なことだった。しかし、すべてを水の泡にする可能性を秘めていた。そのことを一目で看破した私たちは、同時に看破されたことをも理解して、暗黙のうちに協定を結んだのだ。
些末な秘密を暴露しない。余計な詮索も一切しない。だから茅野さんは、私がミュータントであることは今も知らないだろう。私が茅野さんの触手を知らなかったように。
「その結果があれだ」
歩きながら、カルマは冷たく言い放った。その責めるような声色については否定しないでおく。
触手を隠し持っていたということは、単に容器に保管していたということではなく、実に半年以上も改造人間であることを隠していたということだ。つまり茅野さんはおおむねイトナくんと同じ状態だった。シロの手によるものではなかったが。だからメンテナンスも受けずにいたという点においては、最も状態が悪かった時期のイトナくんと同じだったとも言える。
とはいえ茅野さんの暗殺は過去の誰より賞金首に迫った。失敗という結果だったが、それは彼女の命を危ぶんだ先生と生徒の協力によるものだ。そして触手は無事に摘出され、さすがに入院することにはなっても、始業式には問題なく出席できる見込みだという。
「あれだけの危険を冒して全治二週間。休み明けには暗殺訓練にも参加できるって話だったか」
「そうでなきゃおまえを
——
」
カルマは
何か
を言いかけて、そこで、はたと顔をあげた。駅の入口だった。彼は足を止めなかったが、速度はやや緩められる。考え事がある様子だ。私は尋ねはせずに、携帯端末をとり出して、時間を確認する。それだけで端末をしまうと、再び同行者が口を開いた。
「飯、食わね」
つぶやくような声量で。
「いいよ」
私はこたえて、足の向きを変える。
私たちは通りに出た。駅周辺にも神社周辺にも飲食店はあるが、どちらからも離れるように道を進む。すると街は一気に閑散としてきた。前にも後ろにも人の姿がなく、右でも左でも店が閉まっている。東京といえども正月である。結局は数駅程度を歩いたところで、チェーンのファストフード店などに入ることになるだろう。数駅程度を歩いたところで、私たちの話が終わったところで、だ。
カルマは白い息を吐いた。
「おまえは最初から全部わかってた」
茅野ちゃんのことだけじゃない、と。私がものを言うより先に、昨年の事件を振り返るように。沖縄で盛られたときだけじゃない、と。
「京都で高校生に襲われたとき、そうなる前から、狙われてたことを知ってたんじゃないの。シロのこともわかってたはずだ。プールの爆破、下着泥棒の真相、イトナが捨て駒だったことまで」
「今さらそんなことを責めたいのか」
「ああ、そうだね。あんなの結果的に助かっただけだ。花屋が殺し屋だったときも、ビッチ先生が寝返ったときも。俺らは死ぬかもしれなかった。おまえも
何か
しなきゃいけなかったんじゃないの」
「そうかもね」
十月に花屋を装った殺し屋は、誘拐した英語教師を籠絡した。英語教師の救出に向かった私たち、そして私たちの救出に向かった担任教師は、まんまと
おり
に捕らわれる。格子は対触手物質で加工されており、尋常な手段による脱出は困難だった。そのうえで、そこに大量の水を流し込むことで、触手生物の肉体を対触手格子に押しつけ、ところてんのように切断するという暗殺計画だ。
結果的に殺し屋たちの計画は失敗した。烏間先生が殺し屋を倒したのだ。私たちは水に脅かされることなく外に出られて、ついでにビッチ先生も教室に戻ってきた。結果的には。
「けど、何もしなかった。正体を隠すためなら周囲の人間を見殺しにできるからじゃない。おまえは京都でいざ高校生にさらわれたら、
身を挺して
クラスメイトを守った。殺し屋でもない高校生なんかを相手に、わざわざ力を使ったんだ。だから
——
そうする必要がなかったんだ。だから何もしなかった。『結果的に助かる』って、わかってたんでしょ。殺せんせーが必ず俺らを助けてくれるって」
そしてカルマは口を閉じた。ひゅうと風が吹き抜ける。ちょうど私たちの間を、冷たい空気が通り過ぎる。その行方を追ってみたら、自然と空を見あげる形になって、真昼間から三日月が視界に入る。もはや驚くことではない。だが隣の同行者も同じ場所を見あげていた。足が止まって、私は白い息を吐く。
「おまえは妙に回りくどいな。
——
わかってたよ。最初から全部、とは言わないが。いずれにせよ、そんなことは今さらおまえに隠すことじゃない」
「殺せんせーが話さなきゃ言わなかったくせに」
「先生が隠すのをやめなきゃ、聞こうとも思わなかっただろ」
「
——
おまえが妙に殺せんせーを信頼してる風だったのを、もっと疑うべきだった。おまえは誰も信じない。それは殺せんせーだろうと例外じゃない。おまえは殺せんせーの正体を知ってたんだ」
「お互いに、わかったことはあったよ」
同じ教室で過ごすうちに、私は先生のことを把握していった。同じように先生も私のことを把握していった。すべてではない。ただ、私は先生に地球を壊してほしかった。だから個人的に先生を殺さなかった。先生は生徒に自分を殺してほしかった。だから積極的に怪物としてあり続けた。
「もうわかってると思うけど、生徒の殺意が鈍ったら、暗殺教室は簡単に崩壊する。だから私も先生を怪物として扱った。先生が私を生徒として扱ってくれたから。個人的に暗殺しないことを、とやかく言わずにいてくれたから」
それだけの協力関係だ。
カルマは口を閉じてしまって、何も言わずに歩き出した。私も追うまでもなくついていく。
だから
渚くんや奥田さんを誘わなかったのだろう、とでも言ってやればよかったか。だが、私は次にカルマが口を開くまで、何も言わずに歩き続けた。
幾つもの店を通り過ぎた。幾つもの店が閉まっていた。いつか通り過ぎたばかりのファストフード店から、五人組の客が出てきた。私たちと同年代のようだった。彼らは午後の予定を話しながら、私たちに背を向ける。足音と一緒に話し声が遠ざかる。それらが十分に聞こえなくなったところで、
「おまえってさ、結局幾つなの」
そんなことを尋ねられた。
「体感のうえでは十五歳かな」
我ながら妙な言い回しだが、元より妙な問いかけで、カルマは
前の私
のことを知っている。アルファコンプレックス市民がクローン槽で教育を受けることも、十二月の期末テストの後に話してあった。前の私は成年になって初めて意識と自我を知ったのだ。
「ああ、でもアルファコンプレックスの成人年齢を教えてなかったのか。正直、実感はないが、前の私は十四歳だったらしい」
したがって厳密に計算すると、二十九歳ということになる。
「そっか」
反応に困ったのか、カルマの返事は短く小さかった。
まあ二十九歳となると、E組生徒つまりカルマと比べて、ほぼ倍だ。教師陣でさえ担任教師はともかくとして、英語教師が二十、二十一歳、訓練教官が二十八、九歳。たしかにカルマとまったく同年代という気はしない。しかし烏間先生と同年代だという見方はともかく、二十九年を生きた自覚も持てない。あくまで覚醒してからの約十五年
——
前の私が拡張クローニング施設を出てからの三か月と、その
次の私
のこの十四、五年が、私の活動した年月である。
カルマは返事をしたきり黙り込んで、かわりに幾らかの物音をさせた。神社の売店の袋である。彼は袋の口に手を差し入れた。購入した物の確認だろう。先刻の彼は少々買い物に時間をかけていた。
と、視線を外したところで、ちょうど、そこから物が飛んできた。
「何だ」
あえて捕らえるまでもなく片手を出せば、軽い音とともに透明の包装が手の平に落ちる。お守りである。白色のお守りだ。刺繡が金色で入っており、
「『えんむすび』
——
何だこれ」
「見たまんま」
「いや何の嫌がらせだ」
「
前世
は縁に恵まれなかったみたいだから」
カルマは悪びれず言い切った。それが嫌みだと私は言っているのだけれど、カルマが気に留めた様子はない。そのまま売店の袋を閉じたからには、もう私に与えたつもりなのだろう。実際、後から「あげる」と声も聞こえた。
「要らないんだが」
返事に合わせて、笑い声も聞こえてきた。隣から顔を見られている。
「すっ、げー、嫌そうな顔」
肩も震わせていた。
私は無言で手元に目を向ける。手の平に載せたままの、えんむすび守。当然に無料ではなかっただろうに、どうやら私のしかめ面のためだけに購入されたらしいそれ。包装ごと握り潰してやろうか。指に力を込めようとしたところで、まあまあ、と制止の声。
「
今世
は良縁に恵まれますようにって、ほんの気持ちだと思ってよ」
「笑いながら言われても伝わらないな」
しかし気は削がれて、歩みは止まり、顔は空を向いた。
「言ってみろ、こんな物で何の取引だ」
カルマは声をあげて笑い、目を細める。
「さすが
——
。俺、昼飯ラーメンがいいな」
「
——
開いてたらな」
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内