ユーリ・ローウェルの日記

青年が日記を書く話。


薄気味の悪い幽霊船とやらで魚人をばたばた切っている。カロルは鳥肌が止まらない等々言っているが、オレは暗闇もボロ家も慣れているから特段何も感じない。蜘蛛の巣が多くて髪に絡むからそれだけが鬱陶しい。おっさんはと言うと「こういう場所には女子を連れていけ」とか何とか説教された。全く意味がわからない。おっさんの戯言はさておいて、一番ぎゃーぎゃー言うかと思っていたおっさんが飄々と魔物を打ち倒していくのは意外だった。幽霊やその類を怖くはないのか尋ねてみたら、「この世で一番怖いのはね、ユーレイじゃねえのよ」と言われた。その時のおっさんの顔が、何といえばいいのか、そこにいるのにいないというか――見たことのない顔をしていて。でもそれも、瞬きひとつの間にいつもの表情に変わって「それは美女よ」などと誤魔化された。
誤魔化された、ように思う。
どうしてかわからないが、イライラする。
蜘蛛の巣が取れない。

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ようやく幽霊船を脱出した。澄明の刻晶とやらをヨームゲンっつー街に届けることになった。『義をもって事をなせ』……背負うに不足のない掟だ。
ノードポリカに着いたら駆動魔導器も新調してもらえることになった。がんばったご褒美ってやつだな。闘技場都市ってのも興味がある。今日はよく眠れそうだ。髪の蜘蛛の巣だけが少々気になる。
……
横になっていたら、おっさんが来た。別嬪が台無しだとか言って、櫛を置いていった。見たとこだいぶ上物みてぇだが、蜘蛛の巣まみれになっても構わないんだろうか。いや、というかオレじゃなくて貸すなら女たちだろ。そもそもおっさんが櫛を持ち歩いているのが意外すぎる。どうすりゃいいんだ、この高そうな櫛。
――驚きすぎて礼を言うのを忘れた。悪いことした。