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kurotera
2025-02-24 08:27:05
174619文字
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You are what your back bears
2022年6月に発行したイノセントブレス IB本の再録です。
発行から一年経ち、頒布も終了しているので掲載。
当時手に取っていただいたかた、ありがとうございます。
【概要】
ぼくのかんがえたさいきょうのイノセントブレス本(非公式)
無印三部前提
出てくるメンバー:教会勢、ラプラスの悪魔、ダーククロウ、LL、無銘
ですが無銘の四名とダーククロウさんは本当に一瞬です。あくまでIB中心。
戦闘と日常の比率は6:4ぐらい。当社比。
書き手の趣味が爆発してえらいことになりました。
要素/注意
九割捏造。特に過去。
公式ファンブック旧版と一部キャラクターメッセージカードを元に当時は執筆していますが、未所持のカードもあるので設定にずれが生じています。
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南部地域は比較的温暖な気候だ。まだ寒さの厳しい聖都から南に近づくごとに温かな風が一足早い春を運んできている。
「ラジエル、あまり飛ばさないで! 君の馬は速いんだから!」
少し先を駆けていく駿馬の背に乗るラジエルにサンダルフォンが叫ぶ。おっと、とアプリコットの髪を揺らしながらラジエルは手綱を引いた。
「悪い! 久しぶりに外に出たからこいつも走りたいって!」
ラジエルの言葉にやれやれとザドギエルがため息を吐き、サマエルも眉を寄せてラジエルを睨み、苦々しげに口を開いた。
「いくら悪魔祓いの任務でないとはいえ、はしゃいでいいとは言っていないだろう。それに道中で奴らに襲われるかもしれない、もっと慎重に
……
!」
「とはいっても、今の所は本当に穏やかな旅程です
……
」
ハニエルが周囲を見渡し、そよいでくる温かな風に頬を緩める。どうどう、とラジエルが愛馬を宥めるのを眺めながら、サンダルフォンも頷いた。
「南部地域はこの国の中では
……
比較的復興が早い地域だ。国に認められた他国との交易が盛んで、治安もいい。だからこそ『教会』は南部地域の養護院の運営に力を入れることが出来ているのだろうね」
「
……
はい、北部地域周辺は隣国との諍いが長く続いていましたし、それに永い冬がありましたから
……
復興が遅れていると聞いています」
程度はどうあれ、国の復興に向けて人々は動いている。そんな彼らを狙っているのが悪魔だ。惑わせ、誘い、害をなす。彼らの魔手にどれだけ無辜の人々が犠牲になったのか計り知れない。しかし、それを未然に防ぐのが使徒の役目だ。
「そういえば目的地ってさ、どんなところなんだ?」
ようやく追いついてきた四人の馬達に愛馬の歩調を合わせながら、ラジエルが訊ねる。
「山間部の麓にあるそうだ。元々そこには村があったのだけど
……
ずっと前に疫病で廃れてしまってね。それを知った教会が養護院を建ててそこに従事する修道士や修道女、それからそこに住む彼らを相手にした商人たちが暮らす居住区に発展したみたいだね」
「悪魔憑きの人間を何人も受け入れる村なんてあるのかと思っていたが、そういうことだったのか」
サマエルは合点がいったらしくそう言えばサンダルフォンが続ける。
「教会の活動が軌道に乗り始めた数年前、悪魔憑きが各地で発生してね。酷いところでは孤児院の子ども達の全員に悪魔が取り憑いたそうだよ。当時の使徒によって事態は収められたけど
……
悪魔憑きの後遺症から完治しない子達もいた。それを重く見た教皇が悪魔憑き専用の養護院を作った、というのが始まりなんだって」
「教皇様
……
すごいです」
「慈悲深い方だね」
感心する皆の横で先ほどまで賑やかだったラジエルはじっと黙り込んでいた。何やら考え込むようにううん、と唸っていたかと思えば、あっ、と顔をあげて。
「それならさ、俺の友達も居るかも!」
「友達?」
ラジエルの言葉にサンダルフォンが聞き返せば、ラジエルはうんうん、と頷く。
「神学校に来る前は聖都の第三孤児院に世話になってたんだけどさ。俺にとってそこは二つ目の孤児院で、一つ目は
……
正直あんま覚えてねえんだけど、とにかく南部地域にある別の場所だったんだ。だけどそこは悪魔憑き騒ぎで潰れちまって、皆離ればなれ!唯一そいつだけは覚えてたみたいで今どこにいるんだって聖都の孤児院のおばちゃんに聞いたら悪魔憑きになって療養しているらしいって言ってた気がする!」
「おい、初めて聞いたぞ。なんで忘れていた」
サマエルの呆れた声にラジエルはあっけらかんとしている。だって今の今まで思い出せなかったんだし、と答えればサマエルは片眉をあげる。
「やっぱ悪魔憑きになっちまうとさ、手紙とか会いに行ったりとか探したりとか
……
難しいって言ってたような。それにそいつが本当に悪魔憑きになったのか分かんないし、俺も専用の養護院があるだなんてゴーちゃんから聞くまで知らなかったな」
「ああ
……
確かに悪魔憑きの件はあまり表には出しづらいからね。元悪魔憑きというだけで忌む人々も多い。情報が出回らないのも頷けるよ。でも、もしかしたら今回の村にラジエルの友達がいるかもしれない。もし療養が終わっていたとすればそれはそれで喜ばしいことだし、今どこに住んでいるのかも教えてくれるかもしれないね」
サンダルフォンの言葉にラジエルの表情がぱっと明るくなる。そうだよな、と得心のいった顔でベイビーブルーの瞳を細めた。
「よっし、じゃあ早く行こうぜ!」
「こらラジエル! 村まであと数日はかかるんだぞ!」
再び馬を走らせるラジエルを追うべく、ザドギエルが手綱を振るう。その様子にサンダルフォンはくすくすと笑い、そしてはたと空を見上げた。
日が傾き始めている。そろそろ町にはいるべきだろう。
「オレ達も行こう。早く休みたいしね」
「は、はいっ」
「まったく
……
」
続いて三人も馬を走らせる。軽やかに駆ける馬の蹄が、道を蹴っていく。
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