kurotera
2025-02-24 08:27:05
174619文字
Public
 

You are what your back bears

2022年6月に発行したイノセントブレス IB本の再録です。
発行から一年経ち、頒布も終了しているので掲載。
当時手に取っていただいたかた、ありがとうございます。

【概要】
ぼくのかんがえたさいきょうのイノセントブレス本(非公式)
無印三部前提
出てくるメンバー:教会勢、ラプラスの悪魔、ダーククロウ、LL、無銘
ですが無銘の四名とダーククロウさんは本当に一瞬です。あくまでIB中心。
戦闘と日常の比率は6:4ぐらい。当社比。
書き手の趣味が爆発してえらいことになりました。

要素/注意
九割捏造。特に過去。
公式ファンブック旧版と一部キャラクターメッセージカードを元に当時は執筆していますが、未所持のカードもあるので設定にずれが生じています。


……ふぅん、眺めはいいじゃねえか」
 国境の警備を掻い潜った先、男は小高い丘から景色を眺めていた。そこからはこの国の中央に続く道や、広がる草原、連なる山々が一望出来る。
 故郷は今頃、初夏のじっとりと纏わり付くような空気に満ちている筈だが、この国はからりとした暖かな風が吹いている。鮮やかな新緑は穏やかに揺れ、牧歌的という言葉がぴったりなように思えた。これが、つい十数年前まで戦禍と疫病の名残の苦しみに喘いでいた国だと聞けば、誰もが耳を疑うだろう。あくまでも、表面上の話だが。
 西方の国とその周辺国の動乱により長らく断絶していた国交は未だ回復せず。
 寧ろ閉じた方針をとるこの国を憂えたのは当代の帝である。土産を持たせて遣いをやれども、商いの者を送り込もうともせいぜい入り込めたのは戦禍が残り混沌としている国境付近の交易都市だ。中央に向かおうとした間者も鬼にやられたか、行方知れず。
 いよいよ国交の回復そのものが頓挫しそうになった頃合いで西方の潜入に立候補したのがこの男、桜花だった。しかしすぐに国に入ろうとしたものの、中々難しく、協力者のめどが立った今ようやく、といった所だ。
「どう思う、月香」
……まずは協力者との合流が先です。むやみに動けば向こうに勘付かれるでしょう」
 隣に侍っていた懐刀に問えば、静かに返される。
「聞く限りじゃあこの国は歪んでやがる。国境の都市も見て回ったが酷えもんだ。お綺麗な布の下から死の匂いがプンプンしてやがる。それ取っ払うのが、俺の役割だ」
「ええ、そうです。その貯めに貴方はここに来て、そしてそれを支える為に僕達がいる。ただ……桜花、二つだけ心に留めておいてください」
 側近、月香の薄桜の瞳がじっと桜花を見つめる。黄金色の双眸が鋭く見返してきたのにも臆せず、月香は言葉を続けた。
「この国のありようを決めるのは、あくまでこの地に住まう者達です。そして桜花、あなたの最終的な目的はこの国の平定ではない」
 それを忘れないように。全てを口にせずに訴える月香の眼差しから目を逸らし、再び風に揺れる草原を眺める。
「おう、もちろんだ」
 おそらくそろそろ、二人が協力者を伴って帰ってくるだろう。そこから始まるのだ。