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kurotera
2025-02-24 08:27:05
174619文字
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You are what your back bears
2022年6月に発行したイノセントブレス IB本の再録です。
発行から一年経ち、頒布も終了しているので掲載。
当時手に取っていただいたかた、ありがとうございます。
【概要】
ぼくのかんがえたさいきょうのイノセントブレス本(非公式)
無印三部前提
出てくるメンバー:教会勢、ラプラスの悪魔、ダーククロウ、LL、無銘
ですが無銘の四名とダーククロウさんは本当に一瞬です。あくまでIB中心。
戦闘と日常の比率は6:4ぐらい。当社比。
書き手の趣味が爆発してえらいことになりました。
要素/注意
九割捏造。特に過去。
公式ファンブック旧版と一部キャラクターメッセージカードを元に当時は執筆していますが、未所持のカードもあるので設定にずれが生じています。
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陰府の最奥、嘆きの川の終着には、永久に凍り付いた湖があるという。
神が定めた氷の牢獄は反逆者達の為のものだ。
血縁者に対する裏切り。
祖国に対する裏切り。
賓客に対する裏切り。
そして、主への裏切り。
ここに落とされた者は、氷の中に閉じ込められる。首まで、あるいは全て。
凍り付いた湖面を歩く。足下には時折、人の顔があった。己の罪のために、苦悶の表情を浮かべている。もっと下の方にも、人の影が見える。
お前もここに堕ちるのだ。いつか、きっと、かならず。そう神に示されている。そんな気がしたが、ふと首を傾げて薄暗い空を見上げる。
「今じゃないのかい?」
若者の問いは唸る寒風にかき消される。答える者もいない。ただ、どこか遠くから自分を呼ぶ声がして、ザドギエルは振り向き、そして一歩、踏み出した。
「ザドギエルさん! ザドギエルさん!」
頭の上で自分を呼ぶ声にゆっくりと目を開ける。脇腹に響く痛みに眉を寄せながら、自分を心配そうに見つめる仲間を見た。
生きている。死んだと思ったのに。
「
……
ハニエル?」
「よかっ、た
……
生きてた
……
」
――
……
死に損なった
――
ぼたぼたと涙を流す仲間をぼんやりと眺めながら、ザドギエルが小さく息を吐く。
痛みに耐えながら上体を起こすと、ぐい、と胸ぐらを掴まれる。その勢いに驚いた声をあげればハニエルがこちらを睨んでいる。その表情は明らかに怒っていた。
「ハニエル
……
!?」
「またあなたは無茶をして
……
ふざけないでください! 死んでしまうところだったんですよ!?」
「
……
っ」
普段は見せないような勢いでハニエルに詰られ言葉に詰まる。
「オレの気持ちも考えないで
……
サンダルフォンさんやラジエル、サマエルの気持ちも考えてますか!? あなたが
……
あなたが傷ついて、オレ達が平気だって思ってる!?ザドギエルさんの、馬鹿野郎!」
「
…………
ハニエル」
泣きじゃくりながら自分を叱り飛ばすハニエルにザドギエルは返す言葉もない。喉に熱いものがつっかえたような感覚に思わず息を飲む。目の前の仲間は俯いて、涙で地面を濡らしながらふるふると首を振った。
「でも
……
一番許せないのは、あなたにいつも助けられてる
……
弱いオレです
……
! オレが、オレがもっと強かったら
……
あなたがこんなことしなくても
……
いいのに
……
オレが弱いから
……
ザドギエルさんは
……
!」
「
……
お前は弱くないよ。あの悪魔だって、倒したのはハニエルだ
……
」
「それでも! それでも、オレはもっと強くならないと駄目なんです
……
だって、オレ達は、二人で帰るんです
……
みんなの所に
……
、二人で帰ってくるんだよって
……
サンダルフォンさんに言われたんです
……
だから、オレ
……
もっと
……
!」
「
…………
ああ、そうか
……
そうだな
……
帰ろう、二人で
……
」
胸ぐらを掴む手を緩めたハニエルの肩を抱き、ザドギエルが呻く。泣きじゃくる声と、許しを請う声が白む夜空にいつまでも、響いていた。
村に戻れば、そこかしこに村人の亡骸が転がっていた。
それがもう起き上がり、日々の営みを送ることはないだろう。互いに応急処置を施した後、亡骸をできる限り埋葬する。ザドギエルに休むようにハニエルは言ったが、一人じゃ無理だろう、と笑って聞かない。
「
……
主は皆を許してくれるでしょうか」
土をシャベルで掘り下げながら、ハニエルがぽつりと呟く。仲間をちらりと見てザドギエルは首を振った。
「どちらにせよ神父は地獄に行くよ。どんな理由であれ、悪魔と契約をした奴は地獄に堕ちるんだ。それが大切な人を救う為であってもね」
ザドギエルの感情を抑えた声に分かっています、と頷く。それでも、少しでも救われればいいのにと祈らずにはいられない。ザドギエルは無言で土を掘っている。その横顔からは何を思っているのか、ハニエルには読み取れなかった。
一つの村の滅びを見届けた後、二人は駆けつけてきた愛馬と共に、村を出た。
「ガランサスは春告げの花なんです」
ぽつりとハニエルが呟く。そうか、もう春なんだなとザドギエルが頷いた。
地平線の彼方から光が溢れるのを見て、深呼吸をする。
凜とした甘い匂いが肺を満たすのにザドギエルが目を伏せてから、この香りだけがこの凍える身体に春が来たことを告げてくれていることに気づいた。
それを教えてくれたのは、隣の相棒だ。
永い夜が終わり、生者のための朝が訪れる。
村を囲むガランサスの花たちは、どこか雪の名残のようだった。
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