Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
kurotera
2025-02-24 08:27:05
174619文字
Public
Clear cache
You are what your back bears
2022年6月に発行したイノセントブレス IB本の再録です。
発行から一年経ち、頒布も終了しているので掲載。
当時手に取っていただいたかた、ありがとうございます。
【概要】
ぼくのかんがえたさいきょうのイノセントブレス本(非公式)
無印三部前提
出てくるメンバー:教会勢、ラプラスの悪魔、ダーククロウ、LL、無銘
ですが無銘の四名とダーククロウさんは本当に一瞬です。あくまでIB中心。
戦闘と日常の比率は6:4ぐらい。当社比。
書き手の趣味が爆発してえらいことになりました。
要素/注意
九割捏造。特に過去。
公式ファンブック旧版と一部キャラクターメッセージカードを元に当時は執筆していますが、未所持のカードもあるので設定にずれが生じています。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
極夜
小鳥の囀る声が聞こえる。春告げ鳥だと思った。夜なのに、春告げ鳥が鳴いている。
どうしてこんなにもうるさくて、騒がしいのだろうか。
夜空を見上げればそれがいるのではないかと顔をあげる。
満天の星が輝いているのが少年の青い目に入った。
ただどうして姿の見えない小鳥がこんなにも騒いでいるのか、分からずじまいだった。
――
この血を捧げます、この魂を捧げます。全てはあなたのもの、神に貶められし、あなたのものです。代償をもって、時を進めてください。
「冬を終わらせてください」
痛みと共に血が滴り、地面を覆う無垢な雪、その一点を赤く染め溶かす。
――
俺が柱になればいい。俺の命と魂で、皆が進めるのなら
――
歪な祈りを濁った悲鳴が引き裂く。呪いの言葉が頭に響いた。
「畜生! なんだお前の血は! 汚れてやがる、あの野郎に犯されてやがる!」
「どういうことです、儀式は執り行われたでしょう! 早くこの子と引き換えに、冬を終わらせてください!」
村の長が戸惑いながら懇願する声にはっと我に返る。目の前の親友は少し驚いた顔で、自分の血で濡れた己の手を、しっかりと握っていた。
「
――
……
そっか」
何かを悟ったように微笑んだ親友がその続きを口にする前に、彼の肩口から夥しい血が噴き出した。え、と少年は目を見開いて、自由な手を親友に伸ばす。
「ち、ちがう。そいつじゃない
……
俺、だろ
……
」
少年の手が目の前の友に触れる前に、彼の腕が、身体が、足が、醜悪な悪魔に食いちぎられていく。温かな血飛沫が少年の身と白い地面を容赦なく、赤く染め上げていった。
少年が叫び、友の身体を取り返そうと縋る。舌打ちをした悪魔がすんなりその屍を離せば、重力に従ってぼとりと、その骸は雪の上に落ちた。
「
……
っ、あぁ、あ
……
」
呻く少年の耳に人々の悲鳴が聞こえ、のろりと顔をあげれば夜の空から炎が降り注いでくるのが見えた。悪魔が嗤う。そら、冬を終わらせてやろう。寒い寒いこの地を、この業火で温めてやろう。獣のような指が夜空を指し示せば炎は流星のごとく降り注ぎ、全てを燃やし尽くしていく。
冬が終わると喜んでいた村の長も、人々も、家も礼拝堂も。少年の周りで炎達は、炎に包まれ半狂乱に踊る人々はやがて燃え尽きて崩れ去っていく。おそらく無事な者がその光景を見れば、それはまさしく地獄が地上に顕れたようだと言うだろう。
そして、遠くの街も。
「やめ、やめて
……
もう、やめてくれ!」
「お前が望んだとおりだ。今まで寒かっただろう、指先が凍り付いて、ひもじい気持ちだったろう。終わらせてやったぞ、お前達の望んだとおりだ!」
澄み切った冬の空から飛来する流星雨の如き炎は、まだやまない。やめてくれ、と叫び懇願する。もう充分だ、充分すぎるほど暖かいからと嗄れた声で叫ぶ少年に悪魔は首を振る。お前はまだ、寒いだろう。
「いや、なに、お前を愛するあいつの真似をしてみただけだ」
あいつもやっただろう? 自由に楽しくやっていた街に、火と硫黄を注いだだろう。悪魔が吐き捨てた皮肉の意味も分からず少年はただ青い目を見開き、がたがたと震えた。
耐えきれず、もう見たくない、と炎から目を背けたがしかし、視線の先で血の海と、転がる肉塊達が現実を突きつけてくる。鼻腔から肺へ、血のにおいが満ち、たまらず嘔吐する少年を悪魔がせせら笑った。
「っ、
……
ぃ
……
」
「ああ、お前のオトモダチはそこにいるぜ」
ついに膝をついた少年は身体を引き摺り、親友だったものの肉塊に縋る。か細くその名前を呼び続け、悪魔に食い散らかされたそれをかき集めてはどうにかしようとする姿は、皿を割ってしまいそれを必死に元に戻そうと頑張るような幼子の姿に似ていた。しかし努力も空しく、傷ついた手を血で汚れた雪泥が冷やすばかりだ。
「ああ、元に戻したいのか。やってみるといい、お前と同じで腕が二つに脚が二本、頭は一個で、胴の中には色々と詰まっていた筈だ。そうそう、心臓も忘れるなよ。あれがないと
……
ああ、そうだった。俺としたことがうっかりしていた」
「あ、あ
……
なん、で、なんで、なんでないんだっ、脚も
……
腕、これ、は
……
?」
「殆ど食べてしまったな」
悲痛な叫びと嘲笑が滅びゆく村に響き渡る。肉塊と血に塗れた手で顔を覆い、許しを請う少年を悪魔は嗤った。
ごめんなさい、ごめんなさい、と泣きじゃくる少年の姿を見れば神を汚した心地になるのに悪魔は舌なめずりをし、満足したのか飛び去っていった。
親友だったものを抱きしめて、少年はいつまでも許しを請うていた。
冬を、終わらせたくて もう村は限界だったんです
今頃は暖かくなって 春告げ鳥が囀ってもおかしくないのに
ずっと吹雪いて 寒くて 寒くて
寒い 凍えそうだ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内