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kurotera
2025-02-24 08:27:05
174619文字
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You are what your back bears
2022年6月に発行したイノセントブレス IB本の再録です。
発行から一年経ち、頒布も終了しているので掲載。
当時手に取っていただいたかた、ありがとうございます。
【概要】
ぼくのかんがえたさいきょうのイノセントブレス本(非公式)
無印三部前提
出てくるメンバー:教会勢、ラプラスの悪魔、ダーククロウ、LL、無銘
ですが無銘の四名とダーククロウさんは本当に一瞬です。あくまでIB中心。
戦闘と日常の比率は6:4ぐらい。当社比。
書き手の趣味が爆発してえらいことになりました。
要素/注意
九割捏造。特に過去。
公式ファンブック旧版と一部キャラクターメッセージカードを元に当時は執筆していますが、未所持のカードもあるので設定にずれが生じています。
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少年と聖都に護送して、数日後。
「この者は悪魔と契約した背信者の一人である。この者の村は愚かにも神に背き、悪魔とのサバトを執り行った」
神の代わって背信者の罪を断ずる厳粛な声が、室内に響き渡る。さざ波のようなざわめきが起こり、幾人かの視線が部屋の中央に立つ銀髪の少年に注がれた。
少年は俯き、黙ったままでいる。己に注がれる侮蔑の視線に何も言えずにいるのか、それとも精神が虚ろのままであるのか、ただそこに立ちすくんでいる。
証人としてベリアル達三人もそこにいた。ベリアルは相変わらず仏頂面で少年の背を見つめ、カスピエルは欠伸を噛み殺し、クザファンはそわそわと落ち着かない様子で少年と異端審問官達を見つめていた。
「隣の城下町も燃えた」
「愚かな」
「村の生き残りはこれだけか」
「子ども一人の命だけでは償えまい」
「いや、子どもの姿をしているが村をそそのかしたのはこれかもしれないぞ」
「忌ま忌ましい奴め、何人の命を奪った」
「火炙りだ」
「そうだ、火炙りだ」
「これが償うすべはそれしかあるまい」
「火炙りに」
「この子どもを火炙りに処せ」
罪を責め立てる言葉を浴びながら、少年は目を伏せる。いっそ火炙りの刑に処されれば凍えたままの身体も暖かくなるだろうかと期待すら抱いてしまう。悪魔に命を捧げるのも、神に裁かれ命を失うのも、そこに差はないように思えた。故郷は、潰えてしまったのだから。手を握りしめる。包帯の下にある手のひらの傷口が痛んだ。
「おい」
審判の木槌が叩かれようとするのを、低く鋭い声が遮る。その一声は瞬く間に周囲の空気を凍り付かせた。
「何だ、使徒ベリアル。今お前の発言は許可していない」
厳粛な声が苛立ちを孕んで答える。小さなため息が二つ、部屋の隅で聞こえた。
「
……
こいつの言い分ぐらいは聞いてやってもいいんじゃねえのか?」
トパーズの瞳が異端審問官達を睨み付ける。一方的な断罪を不満だと言いたげな声色で不服を申し立てる使徒に、周囲から怒りの声がわき起こる。
「教皇ミカエルに信を受けし我々の裁きは主の裁きと同じ。それに異を唱えるか」
「我らが主はそこまで不寛容なのか?」
「使徒ベリアルよ、この子どもに誑かされたか? 返答によってはお前も異端審問にかけなければならない」
「せ、僭越ながら!」
睨み合うベリアルと審問長に割って入ったのはクザファンだった。室内の人間すべての視線が彼に注がれ、思わずごくりと喉が鳴る。カスピエルのへえ、と少し楽しげな声を耳にしながら、クザファンはきっと視線を上げて人々を見上げた。
「僭越ながら、くだんの村に派遣された使徒として申し上げます
……
!」
「申してみよ、クザファン」
彼の出自からか、彼らも無碍に出来なくなったのか、一転態度が柔らかくなったのにベリアルが舌打ちをする。
「我々があの村についた時、確かに村人はすべて死んで、いました
……
生き残っていたのは彼だけです。彼は、礼拝堂前に作られたサバトの祭壇に
……
」
クザファンが言葉を詰まらせる。ちら、と少年を見やり言うか、言うまいか逡巡した。しかし言葉を続けたのは、カスピエルだった。
「祭壇には一つ、死体があった。悪魔に食い散らかされて見る影もなかったけどね」
カスピエルの言葉に少年の肩がびくりと震える。割って入ってきた使徒達の含むような言葉に苛立ちを隠しきれないまま、異端審問官達が四人を見下ろす。
「つまり、何が言いたい」
「彼が黒幕であるならば彼が自ら生贄用の祭壇にのぼるかということがひとつ。悪魔が、祭壇の生贄でなく、何故その儀式の執行者を食らったのかということも、ひとつ。今まで俺達はいろんなサバトの跡を見てきたけど、ちょっとそこが引っかかりましてね。まあ幸い? 生き残りがいるんだし、聞いてみてもいいんじゃないかなって」
カスピエルの言葉にしん、と沈黙が降りた。罪人よ、と厳粛な声が少年に投げかけられる。その声に静かに顔を上げて、少年は目の前の異端審問官を見据えた。
「その旨について申し開きはあるか」
「
……
悪魔は俺を食えないって言った」
「食えない、だと」
「
……
血が神に犯されてる」
少年の言葉に周囲がざわつく。木槌の音が甲高く響けば、再び静寂が支配した。
「使徒ベリアル」
「ぁンだよ」
「何を見た」
態度を僅かに和らげたような問いかけにベリアルが肩を竦める。
「こいつは使徒適正がある。どういう能力かは知らねえが、その扱い方も知らねえガキを悪魔が食らいたくても食らえなかったっつーのは、そういうことだろ?」
「なんと」
「使徒適正を持つ者が悪魔と契約したということか?」
異端審問官達の狼狽えた声がより一層大きくなる。口々に隣の者と話し合い、独り言を漏らし、少年を見る。
「おぞましい」
「この子どもは使徒なのか? 罪人なのか?」
「神よ」
「しかし使徒ならば神が遣わした者、火炙りの刑に処してもいいのか?」
「どうする」
異端審問官達の視線は冷ややかなものから奇妙な、おぞましいものを見るようなものに変わりつつあった。
「審問長!」
クザファンが再び声をあげる。風向きが変わりつつある、これを活かさなければせっかく生き存えた少年を救うことは出来ない。
「私、使徒クザファンが愚考するにこの者はあの村に試練を与える為に神が遣わした使徒たる者なのではないでしょうか。しかし村は試練に打ち勝てず、滅びました。神に遣わされ、村の者すべての罪を背負うさだめとなったこの無垢なる子羊を罪人として貶め、背信者として火刑に処するのは早計ではないでしょうか? どうか賢明なる判断を!」
「そうそう、この子が聞いた〝血が神に犯されている〟っていう悪魔の言葉も気になるんだよねえ、俺」
カスピエルもクザファンを援護するように言葉を続けちらりと異端審問官を見やる。上はそういうの、好きでしょ、と視線で問いを投げかけた。
「
…………
」
「おい、どうするんだ」
ベリアルが凄む。三人の使徒の言葉は室内を確かに揺るがしていた。
「よかったのかな?」
「
……
さあな」
数日後、どうやら火刑は回避されたらしい事を聞いた三人は、聖都の酒場で食事をしていた。使徒も神に仕える身ではあるのだが、司教や修道士よりも戒律は緩く、平時であり成人しているならば庶民とは何ら変わりない生活を送ることが出来る。
安酒を煽るベリアルは黙っている。口火を切ったのはクザファンだ。
「おそらく、あの子の能力は体質的なものだろう。血と言っていたか
……
」
「きっと色々調べ倒されるよ。うーん、下手したら飼い殺しかもね
……
ま、どちらにせよあの子にとっては生き地獄なんじゃない? 村も全滅、こんな所まで連れてこられて殺されるかと思ったらお前の身体は価値があるから生かしておいてやる、なんてさ?」
「それは
……
正直否定できない、が
……
」
クザファンが眉を寄せる。
彼を村で救い出してから、数日掛けてこの聖都へ向かう間は面倒を見てきたが、魂をどこかにやったような雰囲気だった。
受け答えは問題ないもののあまり眠れていないのだろう。朝も中々起きてこずにクザファンが起こしに行けば地獄の底から響くような
……
呻きか、魘されているのか判別ともつかない声がベッドの中から聞こえてきたのを思い出す。
「しかし、生きてさえいれば、何か良い道が見えてくると思う、俺は」
「
……
そうなるかどうかはあいつ次第だろ、知ったことかよ」
ベリアルの吐き捨てるような言葉に二人が苦笑いを浮かべる。
最初に異端裁判に口を挟んだのは誰だったか。カスピエルが煙草に火を付ける。肺一杯に煙を満たせばそれを唇から吐き出し、ふと口角を上げた。
「生きてさえいれば、ねえ」
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