kurotera
2025-02-24 08:27:05
174619文字
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You are what your back bears

2022年6月に発行したイノセントブレス IB本の再録です。
発行から一年経ち、頒布も終了しているので掲載。
当時手に取っていただいたかた、ありがとうございます。

【概要】
ぼくのかんがえたさいきょうのイノセントブレス本(非公式)
無印三部前提
出てくるメンバー:教会勢、ラプラスの悪魔、ダーククロウ、LL、無銘
ですが無銘の四名とダーククロウさんは本当に一瞬です。あくまでIB中心。
戦闘と日常の比率は6:4ぐらい。当社比。
書き手の趣味が爆発してえらいことになりました。

要素/注意
九割捏造。特に過去。
公式ファンブック旧版と一部キャラクターメッセージカードを元に当時は執筆していますが、未所持のカードもあるので設定にずれが生じています。


 ちょっとした修正があったもののラジエルの課題は無事に終わり、夜も更けたので皆寝静まった。自室の窓辺、雪明かりをたよりにサマエルは掌の上のロケットの蓋を開く。
 そこに収められた小さな絵を、今は亡き故郷の葡萄畑を描いたそれをじっと眺めていた。
 絵の中の故郷は、穏やかだ。
 ロケットの中では時も流れず、戦乱も、人の醜さも、毒も、なにもない。
 ただあの実りの季節のまま瑞々しい果実を木々に飾らせてサマエルの掌に収まっている。いや、もう手の中でしか存在し得ないものだった。彼が死ぬまで、死のうとも、それこそ悪魔の炎か人の炎か、それとも自らの身体に宿る業火で我が身が焼き尽くされる時まで、時よ止まれ、あの日々は美しかったとこの若い使徒の懐に、この若い使徒が抱く懐かしさのまま、そこにあるだけなのだ。
 もしも自分が使命に殉じたとして。悪魔の手により身が引き裂かれ、身のうちの毒と共に大地に還る日が来たとして。ロザリオがこの地に還っても、この絵だけは最期まで自分のものであってほしい。そんな願いをサマエルは密かに抱いている。自分が死ぬ時こそ、あの今は亡き故郷、実り多き葡萄畑が真の意味で滅ぶ時だと、勝手に思っていた。
 ぱちん、と蓋を閉める。
 思い出を閉じ込めてまたそれを首にかけた。寝台に伏して目を瞑り、微睡んでいく。
 帰ってこないものを思った。帰ってきてほしいものを、思った。
 それは、彼の手では最早どうにもできないものであった。