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kurotera
2025-02-24 08:27:05
174619文字
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You are what your back bears
2022年6月に発行したイノセントブレス IB本の再録です。
発行から一年経ち、頒布も終了しているので掲載。
当時手に取っていただいたかた、ありがとうございます。
【概要】
ぼくのかんがえたさいきょうのイノセントブレス本(非公式)
無印三部前提
出てくるメンバー:教会勢、ラプラスの悪魔、ダーククロウ、LL、無銘
ですが無銘の四名とダーククロウさんは本当に一瞬です。あくまでIB中心。
戦闘と日常の比率は6:4ぐらい。当社比。
書き手の趣味が爆発してえらいことになりました。
要素/注意
九割捏造。特に過去。
公式ファンブック旧版と一部キャラクターメッセージカードを元に当時は執筆していますが、未所持のカードもあるので設定にずれが生じています。
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初陣
空が白み始めた頃にベッドから抜け出し、支度を済ませる。
おそらくはまだ眠りについているルームメイトを起こさぬようにこっそりと、寄宿舎を出た。目指すのは神学校の聖堂である。
すっかり秋も深まり、冷え込みが強くなってきた。寄宿舎の近くに植えられた木がオレンジ色の花を咲かせ、甘い芳香を漂わせている。見たことのないその木はキンモクセイと呼ばれる東洋の木だとシスター・ゴーが教えてくれた。
神学校の聖堂は常に開放されている。それは神学校の生徒である使徒達が昼夜を問わず活動しているという事が理由になるのだろう。主の懐はいついかなる時も信徒を迎え入れると示すように、傷つき、迷い、悔恨する生徒達の為に開かれていた。しかしこんなにも早い時間にそこを訪れる生徒は殆どおらず、静謐さを保っている。
朝の祈りと聖歌が、サンダルフォンにとっての日課だった。故郷で暮らしていた頃からの習慣で、朝に目が覚めれば出来うる限り、聖堂や礼拝堂に訪れ神へ祈る。
そしてひとつ、聖歌を歌うのだ。
「
――
御身の加護が皆に等しく吹き渡りますように」
歌い終えて、まことにかくあれかしと祈りを結び十字をきる。礼拝堂の柱に飾られた二対の天使像は外から取り入れられた光を吸い込んで、柔らかく輝いている。
「おはよう皆、朝食に行く支度は出来てるかい? ラジエル、寝癖がついてるよ。
……
ザドギエル、ザドギエルは?」
「あー、多分まだ寝てる」
「ハニエル」
「は、はいっ」
サンダルフォンに命じられ、ハニエルがぱたぱたと階段を上がっていく。一人で大丈夫だろうかとラジエルが髪を弄りながら天井を見上げたが、かと言って寝起きのザドギエルを構う気にもなれずにその場にとどまった。
「怪我を
……
するんじゃないか」
サマエルがぼそりと呟く。
暫く沈黙が三人を包んだが、やがてバタン、と扉を開く音が頭上でして、すぐにばたばたと階段を下りる足音が聞こえてきた。
「あ、う、おまたせ、しました
……
!」
「
……
おはよう」
今にも泣きそうな顔で降りてきたハニエルの後ろで、顔を顰めたザドギエルがのそりと現れる。サマエルの心配は杞憂だったようで、ハニエルは無事である。
「寝起きのザドギエル、相変わらず人殺しそうな顔してるなぁ」
「ああ?」
「ごめんなさい」
ラジエルのからかいにザドギエルが低い声で返せば慌てて謝罪するのに苦笑いして、サンダルフォンがハニエルの頭を撫でる。
「ありがとう、ハニエル」
「は、はい
……
ザドギエルさん、ちゃんと起きてくれました
……
!」
「いつも悪いな
……
どうしても朝は弱い
……
」
「知ってるよ。ザドギエルももう少し努力することだね」
サンダルフォンの苦言に頷き、のそのそと顔を洗いにいくザドギエルに急いで、と声をかける。基本的に朝のザドギエルはひどく不機嫌だ。中々起きられないらしく、サンダルフォン達四人も手を焼いていた。
「ザドギエルの部屋に雄鶏を放して見たら? 一番うるさいやつ」
「雄鶏が毎朝絞め殺されるだろうね」
ラジエルの提案にサンダルフォンが首を横に振る。やがて未だ覚醒しきらないザドギエルが戻ってきた。四人を見渡して、サンダルフォンが頷く。
「さて、行こうか」
学び舎には食堂がある。基本的にはそこで食事を済ませ、遠方の任務に赴く時もここから旅の糧を受け取るのだ。五人でテーブルを囲む。ポリッジ、スープ、野菜が詰まったオムレツ。ここでは食事に困ることは無い。
「そうそう、食事が終われば厩に来るようにとシスター・ゴーが言っていたよ」
「厩? ってことは乗馬の授業かなんか?」
サンダルフォンの言葉にラジエルが少し興奮した声をあげる。
馬ですか、とハニエルが首を傾げた。
「ハニエルって飼育委員だったよな。何か知ってる?」
「あ、はい、でもオレは鳩さんの係なので
……
」
ハニエルがゆるりと首を振る。敷地内で飼われている白鳩の世話をするのが神学校の飼育委員であるのは古い習わしらしい。その白鳩達は聖都外に点在する教会への連絡手段としても使われていた。
「馬って見たことはあるけど乗ったことはないんだよな。サンダルフォンは?」
「オレ? あるよ」
故郷で乗せてもらったことがあるとサンダルフォンが答えればラジエルがいいなぁと零す。その隣で不安げな顔をさせているのはハニエルだ。
「馬さん
……
大きくて怖い、です
……
」
「大丈夫、彼らは優しい生き物だよ」
励ますようにサンダルフォンが笑う。そんな三人の傍らでザドギエルは未だにぼんやりしながらパンを囓っていたし、サマエルはどこか渋い顔をしていた。
「おはよう、坊やたち」
食事を終えたあと、厩に赴けばシスター・ゴーが出迎えに来た。こっちにいらっしゃいと歩き始めたシスターについていけば、柵に囲まれた馬場に着く。
中には何頭か馬が放されていて、体格の大きなものから小柄なものまで様々だった。
「ここに来るようにと言った時点で察しはついてるとは思うけど、今日はあなた達用の馬を選んで貰うわ。
……
使徒はそれぞれ自分の馬を持つの。この国は広く、急を要する場合が殆ど。自分達の足で歩くよりも彼らの力を借りるのが一番ってわけね。まぁ
……
使徒の中には馬よりも速い子もいるけれど、あなた達はそうじゃないでしょう?」
「馬より速い奴って
……
?」
ザドギエルの呆れた声にくすくすとシスターが笑う。馬場の中で草を食み、気ままに駆けている馬達をちらりと見やった。
「それじゃあ一人ずつ選んでいってちょうだい。そうね、飼育委員のハニエルから」
「お、オレですか
……
」
ハニエルの肩がびくりと跳ねる。
シスターと馬場を見比べてと躊躇っていたが、サンダルフォンに背中をそっと押され、ごくりと喉を鳴らし柵へと歩み寄る。
柵の傍では鹿毛の馬が草を食んでいたが、ハニエルが近寄ると同時、ふい、とどこかに駆けていく。
「ああっ
……
いってしまいました
……
!」
情けない声をあげてハニエルがうなだれる。気を取り直してどうしようか、と中を見渡すものの、一番大きな青毛の馬は威圧感があって怖い。その近くにいる大きな黒鹿毛も同じぐらいに怖い。さっきの鹿毛は自分には目もくれず元気よく走り回っている。
「あ
……
」
ふと目があったのは栗毛の馬だった。栗毛だが尻尾やたてがみは白く、他の馬と比べて小さな体躯だったがハニエルにとっては基本的にどの馬も大きいので大差ない。
じ、とその尾花栗毛の馬は窺うようにハニエルを見つめている。
「お、おいで
……
」
意を決して呼びかける。軽やかな足取りで向かってくる馬から逃げ出したくてしょうがないが、ぐっと我慢する。
ついに近くまで来た馬はその鼻面をハニエルに近づけ、鼻息をかけてきた。
「っ、
……
しすたぁ!」
どうすればいいのでしょう、とべそをかきながらハニエルがシスターに助けを求めれば撫でておやりなさいよとシスターが笑う。おそるおそる頬を撫でれば、ぐいぐいと頭を押しつけてきた。
「気に入られてるじゃない。その子にする?」
「は、はい
……
」
ハニエルが頷けばすぐにその馬は飼育係によって馬場から出された。また後でね、とシスターに言われてハニエルはほっと安堵した。
「じゃあ次は?」
「はい! はい! オレ!」
「いいわよ、ラジエル」
シスターが許せばラジエルが柵をひょい、と越えて馬場に入る。ぐるりとあたりを見渡して、馬を一匹ずつ品定めしていく。
「蹴られないようにするのよ」
「大丈夫だって!」
心配そうなシスターの声にひらりと片手を振る。
速いのがいいな、と駆けている馬を見繕っていると、ふいに影が降りた。
「へ?」
ラジエルが焦って振り向けばそこにはハニエルから逃げた鹿毛の馬が佇んでいる。
「うわわ、なんだよ?」
そのまま馬はラジエルの袖を噛んで、ひっぱってきた。落ち着けって、と慌てながら宥め、額を撫でれば機嫌良く嘶く。
「あー、何、オレがいいの?」
そう問いかけながらよしよしと撫で続け、ラジエルが思案する。お前、ちゃんと速いんだよな、と聞けばそのまま少年を引っ張っていきそうな力に、わかった、わかったよ、と首筋を軽く叩いた。
「シスター、こいつにする!」
「わかったわ、そのまま一緒に出ていらっしゃい」
ようやく袖を離されたラジエルが鹿毛馬と馬場から出てくる。飼育係に引き渡してハニエルの隣に戻ってきた。
「次は?」
「ザドギエル、行ってくれないか」
「俺? どうして」
「俺は最後がいい」
「
……
気が乗らないけど、わかったよ」
サマエルの言葉にザドギエルが肩を竦める。馬場に入る途中でシスターにそっと耳打ちをすれば、シスターは驚いた顔で、それから少し眉をひそめた。高く結ったムーングレイの髪を揺らして入るザドギエルの背中を心配そうに眺める。
「シスター?」
「
……
ザドギエルが言うのよ。荒れるかもしれない
……
って。あの子、何をしでかすつもりかしら」
ザドギエルがシスターに耳打ちした言葉を、六人が理解するのはすぐだった。ザドギエルがそこに立った瞬間、馬達の様子が変わったのだ。まずのんびりと草を食んでいた大人しい馬は怯えたように嘶き、馬場の端へと逃げていったし、そうしなかった馬も入ってきた少年をあからさまに警戒しているようだった。
「なにあれ」
「
……
どう見ても怖がられてるわよ」
「ど、どうしてでしょう
……
ザドギエルさんは何もしていない
……
ですよね?」
ハニエルがおろおろとしている横で、サンダルフォンは黙ってその様子を眺めている。当の本人はこうなることが分かっていたらしく、やれやれとため息を吐きながら逃げなかった馬を品定めしていた。
ふと目に付いたのは一番大きな体格の、青毛馬だ。ハニエルとラジエルにも目に入ったがすぐにこの馬は気性が荒そうだと判断して、候補から外した個体だった。
他の馬も近寄ろうとしても、耳の後ろを倒して睨み付けるので避けてしまう。
「ねえ
……
あの子にするのかしら。中々人に慣れないって飼育員も言っていたし、それにザドギエル自身もこれだと
……
リーダー、どうする?」
「
……
もう少し様子を見たいです。ザドギエルも自分の性質
……
動物に怖がられるということは分かっているみたいだし、無理はしないかと」
サンダルフォンの言葉にそうね、とシスターが頷く。一人と一頭は睨み合っていたがやがてザドギエルが一歩、踏み出した。
吠えるような嘶きにも恐れずに近寄る。馬の傍に、ザドギエルが立った。
「っ
……
!」
ひゃ、とハニエルが両手で目を覆ったのは、馬が僅かに前脚をあげてもう一度嘶いたからだ。しかしザドギエルはそのまま馬に踏みつけられることもなく、ぱし、と首筋を軽く叩き、青毛の裸馬に飛び乗った。それに逆に驚いたのは馬のほうで、小さく跳ね回りながらぐるぐると歩き回っている。
「大人しくしろって、なあ」
ザドギエルが首を撫でて馬を宥める。抵抗を見せる馬と数分ばかり格闘していたがやがてその悍馬は観念したのか、不意に大人しくなった。
「よし、いいぜ」
ザドギエルが満足そうに頷き、そのまま歩かせていく。荒いやり取りを遠巻きに見ていた他の馬は相変わらず怯えているようだった。
「
……
おや?」
サンダルフォンがふと、ある一頭を見つける。他の馬とは様子が違って、馬場の隅にいたが怯えたようすは見られない。その白い馬は人間と青毛馬のやりとりとただ静かに、眺めているようだった。
「あんたねえ」
「選べたからいいだろ、シスター」
馬から下りて澄ました顔でザドギエルが返す。ひやひやさせるんじゃないわよ、と小言を漏らすシスターに肩を置いて、ザドギエルがサンダルフォンを見つめた。
「サンダルフォン、やりにくくして悪い」
「まだ一緒に暮らして日が浅いけど、君って少し
……
やんちゃだよね」
はは、と苦笑いするザドギエルから視線を外して、サマエルを見やる。
柘榴色の目と視線があえば、先に、と促された。サマエルがどうして最後に選びたがるのか分からなかったが、頷いて馬場に入る。先ほどの騒動がまだ尾を引いているのか、殆どの馬が落ち着きなさそうに歩き回り、こちらを窺っている。駁毛、芦毛、栗毛、黒鹿毛と一頭一頭見ていくがやはり気になったのは、あの白毛の馬だった。他の馬も近寄ろうとしていないが、ザドギエルの青毛馬を怖がっているような雰囲気というよりは、近寄りがたいといった様子だった。
「シスター、あの白い馬は?」
「ああ、あの子は
……
一番難しいわよ。元々最高序列の使徒の為に用意された馬だったんだけど、ほら、さっき言ったでしょ。馬よりも速い使徒がいるって」
「なるほど、少し気位が高そうだけど
……
どうかな」
サンダルフォンがその馬に歩み寄る。向こうもこちらに気がついたらしく、耳を動かしながら様子を窺っているようだった。しかし逃げるような素振りも見せず、また威嚇することもない。アーモンドの形に似た、黒々とした瞳に見据えられれば寧ろ逆にこちらが品定めをされているかのような心地をサンダルフォンは感じた。
ゆっくりと距離を詰める。その様子を柵の外では五人が固唾を飲んで見守っている。ついにサンダルフォンが馬の傍らに立ち、首筋を撫でようと手を伸ばす。
「
……
」
ふと、懐かしさがこみ上げる。何故かは分からないが、懐かしい、そう思った。この美しい毛並みの馬と相対するのは初めてである筈なのに、そうではない気がしたのだ。
指先が彷徨い、その白くがっしりとした首筋に触れるのを躊躇う。しかし彼女は逃げることなく、サンダルフォンを見つめていた。
「
…………
ああ、いい子だね、お前は」
ふ、と笑い、ようやくサンダルフォンの指先が首筋を撫でる。
すると白馬は首を下げて、少年の指先を受け入れた。
「あら、まあ」
シスターが驚いた声を漏らす。今まで誰も近寄らせすらしなかったあの白毛の美しい馬が、初めて出会った少年に近寄ることを許し、しかも撫でられることを受け入れたからだ。おいでとサンダルフォンが軽く首筋を叩く。応えるように馬は一歩、踏み出した。
「シスター、彼女にするよ」
嬉しそうなサンダルフォンの声にシスターが頷く。お似合いよ、あなた達、と言えば照れくさそうに少年ははにかんだ。
最後に、ようやくサマエルの番がきた。しかしサマエルは、暫く黙りこくった後静かに首を横に振ったのだ。
「俺はいい」
「えっ、なんでだよ」
驚いた顔でラジエルが聞き返す。気に入ったやつがいなかったとか? と聞けば違う、とやはり首を縦にしない。
「俺は
……
その時にいる馬でいい。それで充分だ」
「
……
理由を教えてくれるかい」
サンダルフォンがサマエルを見据える。使徒にそれぞれの馬をあてがうのは、ひとえにそれが任務に赴く際の移動手段であるだけでなく、自らの命を救う軍馬でもあるとサンダルフォンは理解していた。勝てない悪魔に追われてもラジエルの馬のような駿馬であれば逃げ切れる可能性も生まれるだろうし、ザドギエルの馬のように体格のよいものであれば敵を蹴り飛ばして突破することも出来る。
そしてそれを可能にするのはお互いの絆がものを言うのも、理解できた。それ故にサマエルの言葉をサンダルフォンは簡単に受け入れられるものではない。
「それは
……
」
「サマエルも分かっている筈だから、だからこそ分からないんだ」
サンダルフォンの言葉にサマエルが目を伏せ、逡巡する。
重たい沈黙が六人の間に漂い、ラジエルは二人の顔を見比べ、ハニエルはおろおろとしてついには俯いてしまった。ザドギエルは腕を組み、黙って事の顛末を見守っている。
沈黙を破ったのはシスター・ゴーだった。
「分かったわ、サマエル。一度そうしましょう。あなたの気が変わればいつでも言ってちょうだい」
「シスター?」
サンダルフォンが僅かに抗議の意を乗せてシスターへと視線を向ける。無論、シスターもサンダルフォンの言うことは理解できると頷いた。
「でもサマエル、四人に理由だけは教えてあげてちょうだい」
「
……
毒、だ。俺の毒は強すぎる」
あ、とラジエルが声を漏らす。サマエルの体質を思い出して、そうか、とサンダルフォンが頷いた。
サマエルは赤い蛇という毒を持つ使徒だった。悪魔を殺すほどの強力な毒は人間や動物にも少なからず影響を及ぼす。サマエルが自分専用の軍馬を持つということの意味を察して、サンダルフォンは目を細めた。
「そう、だね。すまない、サマエル」
「
……
気にするな。俺の我が儘だ」
表情を変えずにサマエルが首を振る。それを見ていたラジエルが、口を開いた。
「でもいいなぁ! そんならさ、色んな馬と仲良く出来るじゃん、な、ザドギエル!」
「えっ、あ、ああ、全くだ。俺には出来ないな!」
ラジエルの発言に何か勘づいてザドギエルがそれを肯定する。お前後で覚えていろよ、とじろりとラジエルを睨めば、にやり、とラジエルが笑った。
「ふふ、ラジエルらしいですね」
ラジエルの言葉を純粋に受け取ったハニエルが頷く。その様子を見て、どこか毒気を抜かれてしまったのか、サマエルの表情が柔らかくなった。
「
……
そうだな」
「へえ、ラジエルもたまには良いことを言うんだね」
「ひでぇ!」
六人が笑い合う。それを見計らったかのように学び舎の鐘が授業の終わりを告げればシスターが切り出した。
「さて、ちょうどいいわね、乗馬の授業はおしまい。今日はあとひとつ、紹介したい人達がいるの」
「紹介したい人達?」
「ええ、あなた達はこの一ヶ月、『教会』の習わしや使徒としての心得をお行儀よく座って学んできたわけだけど」
「え、なに、なに?」
どこか思わせぶりな口ぶりで話すシスターに、ラジエルが身を乗り出す。
「その前に詰め所で休憩しましょ! ラジエル、紅茶を淹れてちょうだい」
シスターが微笑み、ぱん、と手を叩く。詳しくは後でね、と言うシスターに頷くほかなかった。
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