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camellia57
2026-02-01 18:27:30
67473文字
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火アリSSメーカーまとめ
2024~2025年に書いたSSのまとめ。全年齢のみ。ごちゃまぜ
話は独立していてつながっていません。基本的にはページが後ろの方が古いです
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「君、前に朝食用意してくれたときに新妻になったような気がしたって言ったやろ?」
「そんなことあったか?」
珍しく先に起きたアリスが用意してくれたトーストにピーナッツバターをたっぷり塗りながら火村が記憶を辿る。ああ、あの時のことか。あれは確かアリスが『ダリの繭』と名付けた事件のときだった。
「記憶力のいい君にしては珍しく忘れたんか?」
「いや、いつものことながら締切に追われているどこぞの作家先生の妙な性のおかげで思い出したよ。今日と同じメニューだったことも」
「偶然にもな。まあ冷蔵庫の中のもんは大体同じやからそらそうなるんやけど」
それがどうしたのかと火村は目で問いかける。
「その事自体は関係ないんやけど、新妻って言うのは客観的事実に基づいてるよな? 結婚して間もない、という期間については人によって解釈が分かれるところやけど、それが一致していれば誰から見ても新妻になる」
「それで?」
「次に人妻や。これは他人から見た状態を指している、と思う。余談やけど意味を調べようと人妻で検索したらよろしくない画像がずらっと並んでびっくりして閉じてしまったわ
……
」
「なにやってるんだよ
……
」
アリスのことだからこれだけでは終わらないだろうことは予想がつく。オチはなんだと続きを促す。
「じゃあ愛妻は? と考えてみたんや。大事にしている妻、ってことやけどこれは誰目線なんやろか。夫からの主観なのか、客観的に周りからそう見えたら愛妻家ってことになるんやろうか? でもそれやったら本当のところはわからんやろ? 他人からはそう見えんくても夫は大切に思ってるかもしれんし」
言葉の定義についてアリスが問いかけてくるのは珍しいことではない。正解を導き出したいと言うよりは、そのことについて火村と議論を交わすのを楽しんでいる節がある。今回は朝食を準備しながら過去の出来事を思い出して『新妻』から連想していってたまたまそんな気分になったのだろう。
「夫が大事にしていようとそれが妻に伝わってなかったら愛妻とは言えないんじゃないか? だから本当に愛妻家なのかどうかは妻側の判断になるんじゃないか?」
「君はそう考えるか」
「アリスは?」
人に聞くからには何らかの答えがあるのだろうと問いかけると、それには答えずに席を立ったアリスがキッチンの方から小さなトートバッグを持って戻って来る。
「これ」と差し出されたその中には巾着袋が入っている。もしかしなくてもこれは、と火村が期待を込めた目でアリスを見つめる。
「
……
弁当。味の保証は、せんけど
……
。早く起きてやることなかったから
……
なんとなく
……
」
ぷいっと横を向いて火村の顔を見ずにぼそぼそと話すアリス。髪のせいで耳が隠れてしまっているのが惜しい。きっと赤くなっていただろうから。
アリス自身は普段食べないのに『ちょっとええとこの』ピーナッツバターを用意してくれたり、淹れてくれるコーヒーはミルクを多めにして火村の飲みやすい温度にしてくれたり、そういうところが本当に
……
。
「アリスからの愛をバチバチに感じるな」
「さよか」
「冷たいな、ダーリン」
「君がハニーなん? ま、どっちでもええけど」
「午後から京都に行く用事があるなら一緒に乗って行けばいいのに」
玄関まで見送りに来てくれたアリスを誘っても「早く起きたからもう一回寝たい」と断られてしまい、火村がやれやれとため息をつく。
仕方がないかと「行ってくる」と火村が言いかけたところでアリスが爆弾を落とす。
「あ、今日は婆ちゃんと一緒に夕飯作って待ってるからできるだけ早く帰ってきてな」
ずっと照れ隠しのようにむぅっとした顔をしていたアリスが無邪気に笑う。
思わず抱き締めたくなる衝動を堪えて蹲る火村。
「
……
仕事、行きたくねぇなぁ
……
」
「アホなこと言うてんとはよいきや」
「オンライン授業に変更してぇ
……
」
「いつもと背景違うってバレたら女子学生に騒がれるで?」
「別にいい」
アリスが絡むと稀に火村が聞き分けのない子どもみたいなことを言い出してしまう。
こうなってしまうと面倒でしかなくなるのが困りものだ。
「いいわけあるか! もう、はよいけ!」
火村を立ち上がらせて背中を押して部屋から追い出し、玄関ドアを閉める。
「ねむい
……
」
ふらふらと寝室に戻り、キャメルの残り香の漂うベッドに身体を沈めて、アリスがゆっくりと目を閉じた。
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