camellia57
2026-02-01 18:27:30
67473文字
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火アリSSメーカーまとめ

2024~2025年に書いたSSのまとめ。全年齢のみ。ごちゃまぜ
話は独立していてつながっていません。基本的にはページが後ろの方が古いです


「帰る前にどこかに寄らないか?」と火村に言われ天王寺駅近くのファミレスへ入ることにした。駅から近いし、喫煙ルームがあるのだ。なんとやさしい心遣いだろう。
 ピーク時間は過ぎているようで店内は空いていて、周りに先客のいない奥の席に通された。
 一目でわかる外観、ウエスタン調の内装、そして木製の重くて大きい観音開きのメニュー表……だったはずが。
「タブレットになってしもたんやな……」失ったものを悲しむようにぼやくと、
「時代の流れだな。端末で注文してもらえる方が双方にメリットがあるんだろう」
 まあ、仕方ないことだろうと言われた。
「これ、慣れへんのよな。どこになにがあるんかいまいちわかりにくいし、ほんまに注文できてるんか? って思うわ」
「おいおい、年寄りくさいこと言うなよ、先生。今からついていけないんじゃこの先どうするんだ?」
 仕事の機械関係では担当の片桐に頼りっぱなしだし、スマホに関しては火村に世話になった。
 どうにも苦手なのだ。
「小言はやめてくれ。そんなことより注文を決めようや。夕飯にするには早いし、俺はコーヒーだけでええかな」
 ハンバーグがメインではあるが意外にもコーヒーにも力を入れているのだ。サイドメニューのおつまみ系も結構うまい。そしてスイーツメニューも充実している。ちょうどそのページを見ていた火村が「俺はこれで」といちごパフェを注文するので思わず突っ込んでしまった。
「君、その、『たっぷりいちごのきらきら王冠パフェ』を頼むんか?」
「頭が糖分を欲してるんだよ。アリスはジョッキパフェにでもするか?」
「いや、俺はええ。見てるだけでお腹膨れそうや」
 カカオ99%のチョコレートが好きです、みたいな顔をして案外火村は甘党である。
「じゃあこれで注文完了だな」
「店員さん、絶対パフェを俺の方に置くと思うで?」
 席で個別に注文するのとは違い、タブレットでは誰が何を頼んだかはわからない。
 パフェを私に、コーヒーを火村の前に置かれる光景が予知しなくてもわかる。
「そんなことはないだろう。カフェインが必要そうな顔と糖分を欲してる顔の違いくらいつくはずだ」
 随分と大きく出たものである。
「ほな、結果発表を楽しみにしてるわ」
 
 
 結果は当然ながら私の勝ちであった。
 パフェとコーヒーが運ばれてきて「置いておいてください」と言うと私の予想した通りに置かれた。苦い顔をしている火村を見ていると笑いを堪えきれなくなる。
 店員が去った後で火村に「肩が震えてるんだよ」と突っ込まれた。いや、ウケるやろ、こんなん。
「俺の言った通りやったやろ?」
「見た目の印象で決めつけるなって話なんだよな、チクショウ」
「もっとにこやかにしてればええんちゃう? そんな眉間に皺つくらんと」
「レポートの締切を全員が守って適切な内容で出してくれりゃあ、皺も寄らねぇよ」
 そうは言いながらもきちんと全部に目を通して――当たり前だと言われそうだが――ひとつひとつにコメントを書いて返すのだからマメなやつである。
「ほら、上のソフトクリーム溶ける前に食べた方がええで?」
 パフェのグラスを火村の方に動かそうとすると、「ん」と口と開けた。
 ……。まさかとは思うが食べさせろということだろうか?
 躊躇っていると「誰も見てないよ」と火村。
 いや、見てるとか見てないの問題ではないのだけれど。
 スプーンを手にして固まっているとまた口を開けて強請ってくる。
 もうどうにでもなれといちごを載せて火村の口に突っ込んだ。
「ん、うまいな」満足そうに笑う。
……それはなによりやな」

 こいつ、こうなることまで予想してたんやないやろうな?
 疑わしげな目で見ていると「それはどうだろうな?」と意味ありげに微笑まれた。

 勝負には勝ったはずなのに負けた気分で、コーヒーの苦味が増した気がした。