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camellia57
2026-02-01 18:27:30
67473文字
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火アリSSメーカーまとめ
2024~2025年に書いたSSのまとめ。全年齢のみ。ごちゃまぜ
話は独立していてつながっていません。基本的にはページが後ろの方が古いです
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テーブルに置きっぱなしにしていたスマートフォンが震え、ロック画面に新着メッセージを告げる表示がされる。それを横目で見て視線を手元に戻すと「確認しなくていいのか?」と火村に横から声を掛けられた。スマホとは反対側に座る彼からは内容までは見えなかったと思うが私の反応で察したのだろうか。まあ、傍にいたとしても人の画面を無許可で覗くような男ではないが。
「急ぎの用やなさそうやから」
「それならいいけれど。念のために確認しておくが締め切りからの逃避をしているわけではないんだな?」
「俺をなんやと思てんねん。締め切り前やったらこんなのんびりしてへんわ」
「それはそれで
……
」
どうなんだ? と言いたいのだろうが、みなまでは口にしなかった。締め切り前に焦ることにならないようにしろと言いたいのもわかる。私も常々そう思ってはいるのだが、アイディアが湯水のように湧き上がりたくさん育った中から選べるような状態ではないのだ。せめて締め切り前にもう駄目かもしれないと徹夜で仕上げるようなことは避けたいのだが。計画性がない方ではないはずなのに
……
なぜだろう。
「雑誌に載るとか、きちんと締め切りがあるやつは終わってる。あとはまあ、これくらいの時期に出せたらええねって片桐さんと話をしているのがあるけどな」
それの締め切りは正直私の匙加減なところがある。事前に私から伝えている時期より遅くなったところでなんとかなるだろうと甘えているのだ。刊行時期も確定していないし。
「お前なぁ
……
。ずっと面倒を見てくれている有難い出版社と片桐さんを困らせるなよ」
「困らせてはないやろ。第一さっきの連絡は片桐さんからとちゃうし」
私とて片桐に少なからず迷惑を掛けている自覚はある。たまには督促されることなく原稿を送りたいと思ってはいるのだが。
これ以上痛いところを突かれてはこちらは防戦一方なので話を逸らすと、察するものがあったのか火村がそちらに素直に反応してくれた。
「あぁ、そうなんだろうとは思ったよ。あんまり得意じゃない相手なのかなと」
そんなにわかり易く顔に出ていただろうか。自分の頬を摘んだところでまたスマホが点灯した。
「言ってるそばから、そんな顔するなよ」
笑いを噛み殺したような声がする。
「普段の君と同じくらい仏像みたいな真顔やろ?」
「
……
仏像?」
鏡でも持って来てやろうか?
「それはええねん。はぁ、また送られてくるのもなんやし、ちょっと失礼するわ」
相手からのメッセージを確認していると顔のパーツが中心に寄っていくような感覚がある。送られてきているのはなんてことはない内容なのだ。顰めっ面になるほどではない。
しかし。
「頻度が多すぎるやろ
……
」
「
……
俺は、詳しく聞いた方がいいのか?」
「面白くない話でよければ」
眉間の皺を伸ばすようにそっと私に触れると「今更だろ? 聞くよ」と微笑んだ。
珀友社ではない出版社の編集者から直接連絡があって、私と仕事がしたいと誘われたのが数ヶ月前。差し迫った締め切りもなかったので対面で打合せをしてから「またお会いしたい」とそこから何度断っても誘い続けてくる。わざわざ大阪に来る用事を作ってまで会おうとしたがるのだから困ってしまう。先ほどもその連絡で返事をする前にお店の候補を送ってきた、というわけだ。
「原稿の打合せについてはほとんど進んでへんし、断るのも会うのも疲れるからもう諦めて欲しいんやけどな
……
。もう、無視したらええんかな。でも既読になるまで送ってきそうやわ」
「なるほどな」
「きっぱり断ったところで仕事に影響もでぇへんとは思うんやけど」
「その相手は元々有栖川先生のファンみたいなものだったんだろ? 直接会ったらその思いが加速してしまったわけだ」
そうなのだろうか? 私の作品についての感想は特に言っていなかったように記憶しているが。
「俺のっちゅうよりは推理小説全般が好きみたいやったで。俺よりいくつか年上らしいけど読んできた本は相当被ってたし、ミステリ談義をしたそうやった。出版社に勤めてるからって周りがみんな詳しいわけでもないらしいな」
「へぇ、それならアリスと気が合いそうじゃないか」
「相手は楽しかったやろうな。そんなん当たり前やで。俺がどんだけ話を合わせてたと思てんねん。それに気がつかんとず〜っと自分の解釈を俺に語って、いい気分になってるだけや。俺のこと見えてへんから誘い続けられるんやと思うで」
好きなものの話をしているときにスイッチが入ってしまうことは私だってあるが相手の反応に気がつかないほどではない。興味が減退しているとわかっても止まらないこともあるが
……
。
私の偽りのない本音に火村が声を出して笑った。笑いどころだったか?
「あぁ、笑ったりして悪い。その編集者が気の毒だなって思ってさ。ミステリに理解のある自分じゃなくて、無知な俺がアリスの隣にいるって知らないんだもんな」
まるで私が相手を騙しているようではないか。
「話が合うとか、趣味が同じとか、それも大事なことかもしれんけれど、そういうことじゃなくて、同じやなくても一緒にいたいって思うし、それは理屈とちゃうってこと」
『付き合っている相手がいるので二人で食事にはいけません』とメッセージを送って電源をオフにする。火村が虚をつかれたような顔をしていた。
「告白されたわけでもないのに自意識過剰なこと言うてしまったやろか?」
「
……
あ、いや、うん、まあ
……
はっきり言ってよかったと思うけれど」
「俺、連絡来ても面倒やなあ、くらいに思ってた。でも君と一緒にいるときに邪魔されたのは、嫌やった。だからもうどう思われてもええねん。俺、君が隣にいたらそれで。あ、もちろん片桐さんも。あんまり迷惑かけんようにせんとあかんなあ」
スッキリした気持ちで笑うと火村が私の腕を引いてぎゅっと強く抱き締めてきた。
ありがとうと耳許で囁かれたけれど、お礼を言うのは私の方だ。
私の様子に気がついてくれて、面白くない話を聞いてくれて、ありがとうと。
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