camellia57
2026-02-01 18:27:30
67473文字
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火アリSSメーカーまとめ

2024~2025年に書いたSSのまとめ。全年齢のみ。ごちゃまぜ
話は独立していてつながっていません。基本的にはページが後ろの方が古いです


「なあ、有栖川。俺の勘違いだったら悪いけど、火村と付き合い出したのか?」
 周りに誰もいないことを確認して天農はアリスに小声で尋ねる。
 焦る様子もなくアリスは「なんでや?」と答える。もっとも、否定せずになぜ? と聞き返している時点で半分ほど認めたようなものである。そのことには二人とも気がついていない。
「いや……あいつがやたら浮かれてるからついに念願叶ったのかと」
「浮かれてる?」火村の様子としては想像しにくい状態である。
「機嫌が良さそうなんてもんじゃない。幸せを噛み締めるみたいな顔してたぞ。地面からちょっと浮いてたかもしれん」
 それスケッチしてないん? と聞きそうになったアリスも幾分かは落ち着きが欠けているのだろう。
「あいつ……
 確かに火村とアリスは付き合っている。つい最近、というわけではなく数ヶ月ほど前から。
 まだ偏見もあるだろうから周りには言わないでおこうと言っておきながらバレるような行動をしてどうするんだと心の中で突っ込む。
「心配しなくても他のやつには言わないよ。ただ、よかったなって思ってさ」
 天農はアリスを安心させるように穏やかに笑う。
「ありがとな」
 無意識の緊張を解いて、アリスが静かにふわりと笑う。
 そんな顔もするんだなと思う間もなく、いつの間にか近くまで来ていた火村に背後から声を掛けられて天農は寿命が縮みそうになった。
「なに話してるんだ?」明らかに探るような目つきをしている。怒りからではなさそうだが。
「ひ、火村」
 大きな声で話すような内容ではないから内緒話をするように天農とアリスの距離はかなり近づいていて、頼むから誤解はしてくれるなと思う。
「君が案外迂闊でわかりやすいっちゅう話や。天農にはバレバレやったみたいやで」
 焦る天農に気づいているのかいないのか、アリスが横から口を挟む。
「ああ……
 慌てるでもなく、そのことを特に悪びれるような様子もない火村にアリスは物申したくなる。
「俺に言ってることと、君がやってることが違うやないか。周りには隠すんやなかったんか」
「言わないでおこうとは言ったが隠しておこうとは言ってない」
「ひどい屁理屈やな、火村君」呆れるあまりについ知り合った頃の呼び方をしてしまうアリス。
 確かに火村の言う通りではあるのだが。しかし付き合っていることがバレた相手が天農だとは言え動揺しなさすぎではないのか? もしや始めからこうなってもいいと思っていたのではないか? それならどうして言わないでおこうなど言ったのだ? と火村の言動をアリスは疑問に思い出す。
 アリスの想像は概ね正しく、火村は当初より誰にバレても構わない心持ちだった。けれどそう言ったのは、顔に出やすく負けず嫌いなところがあるアリスが隠そうとしている様子を見てみたいという悪戯心からである。ただ、アリスは火村の予想に反して外ではまったく今までと態度が変わらなかった。切り替えができるタイプだったのである。思った方向には転がらなかったが、新たな一面を知れたことに火村は満足した。
 自ら積極的に言い回ったりはしないが、近しい相手にならもう察せられてもいいかと思い、表に出し始めた結果がこれだ。
「俺は、今までもこれからも変わらんからな」
 腕組みをして火村を睨みつけるアリス。そんな姿も愛しく見えるのだろう。火村の顔はずっと緩んでいる。俺がいること忘れてるんじゃないか? と天農は思ったが邪魔をするのもな、とそっとその場を離れていく。

「それでいいよ」
 恋人としてのアリスの顔も声も、すべては自分だけが知っていればいい。だから、
「帰るか」
 アリスしか見ることのない顔をした火村がそう言って誘った。