camellia57
2026-02-01 18:27:30
67473文字
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火アリSSメーカーまとめ

2024~2025年に書いたSSのまとめ。全年齢のみ。ごちゃまぜ
話は独立していてつながっていません。基本的にはページが後ろの方が古いです


  『神へ繋がる情報求む』

 英都大にある現役生限定の招待制SNS、そこでは主に講義に関する情報交換がされ、投稿者を守るために匿名が原則。内容を信じるも信じないも自己責任、誹謗中傷の類をしたものはアカウント停止措置というルールで運用されている。
 そこで今ある手掛かりを元に『神』と呼ばれる存在を突き止めようとする動きが起こり、SNSだけでやり取りされていた情報が次第にリアルの世界にも広がりはじめていた。


 私がそれを手に取ったのは資料を探しに訪れた母校の図書館。目星をつけていた本を手に取り、空いている席を探しているときに目に入った。前期試験前のせいかほどほどにテーブル席は埋まっていて、座席確保のために置かれているのかと思ったがしばらく経っても取りに来る者がいないので忘れ物だろう。
 裏返しに何枚か重ねられた紙、板書とその内容をまとめたノートのコピーだった。一部薄れてしまっているのは何度か複製されたものだからなのだろう。
 書きかけの小説であることをほんの僅か期待していたがさすがにそんな奇特な人間はそうそういないらしい。
 書かれているのは私の知る範囲でのものではないので法学部の講義ではなさそうだ。しかし……
「有栖川さん?」
 呼ばれて振り返ると貴島朱美が立っていた。
「貴島さん、お久ぶりですね。試験勉強で来たんですか?」
「はい、少し調べたいこともあったので。有栖川さんは火村先生に会いに来られたんですか?」
「私も調べものがあって。研究室にも寄らせてもらうかもしれないですけれど」
 朱美の視線が私の手元に向けられていることに気づき確認すると彼女のものではないと言う。
「私のではないんですけれどそのノートは一部で有名なんです。『救世主のノート』って呼ばれているんですよ」
「救世主ぅ?」
 宗教じみた表現に間抜けな声が出てしまう。朱美も苦笑しながら説明してくれた。
「そのノートのおかげで単位が取れたって人がたくさんいるんだそうです。私は使ったことないですけれど色んな講義で残されていて、先輩から後輩に代々受け継がれているって聞きました」
「へぇ、なんだか秘伝のレシピみたいですね」
「たしかにそうですね。それで今、元の持ち主を探そうとしている動きがあるらしくて」
 詳しく話を聞くと、受け継がれてきた流れを逆に辿ればノートを書いた人に到達できるのでは? と考えたやつが情報を集めているそうだ。
「ノートの内容から社会学部の人だろうってことで私も聞かれたんですけれど心当たりはなくて。もう卒業されている方だと思うので本当に正体が判明するかは難しそうですけれど」
「貴島さんもどんな人かは気になるんですか?」
「一つのものを手掛かりにルーツを辿っていくって少し探偵みたいじゃないですか? どんな人なのかは興味あります。色々噂はあるんですよ。かなり前に首席で入学した方だとか、残されたノートの量から何年も英都に在籍していたヌシみたいな人じゃないかとか、きっととても優秀な人だろうから今はどこかの大学で教授をしているんじゃないかとか」
 朱美の語る架空の持ち主に思わず笑ってしまいそうになる。
「これくらいのことは名探偵やなくても解決できますよ?」
「有栖川さんは心当たりがあるんですか?」
「逆に聞きますけれどこの字に本当に見覚えはないですか?」
……ない、ですけれど、もしかして……
 そう、これは。
「火村の字、だと思いますよ」
……火村先生は、気がついているんでしょうか?」
「それを探るのも探偵みたいやないですか?」
 ふふっと朱美が笑う。
「藪蛇になってしまいそうです」


「でも持ち主を探している人はなにが目的なんでしょうね? あなたのおかげでこんなに多くの学生が救われました! ってお礼を伝えたいわけでもないでしょうし」
「そうですね……。元のノートを見せてもらいたい……とかでしょうか」
「真面目に勉強に励む、って相手やったら無碍にはしないでしょうけれど、私利私欲で利用しようというなら痛い目にあうかもしれませんね」
「有栖川さんから火村先生にはお伝えしないんですか?」
「結末が気になりますけれど私からは何も言わないことにします」
「じゃあ私も黙っておきます」
 共犯ですね、と普段よりも幼い笑顔で朱美が言う。


 そのやり取りを陰から見ていた人物が火村准教授の研究室を訪ね、ノート原本のコピーをデータ化したけれどそれを販売開始する前に掲示板に全データが掲載され、計画が崩れてしまったのはまた別の話。