camellia57
2026-02-01 18:27:30
67473文字
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火アリSSメーカーまとめ

2024~2025年に書いたSSのまとめ。全年齢のみ。ごちゃまぜ
話は独立していてつながっていません。基本的にはページが後ろの方が古いです


「今回もあかんかったわ」

 そう報告したっきり黙り込んだアリスの様子を横目で伺うと両足を投げ出してぼうっと空を見上げていた。快晴とは言えない空模様――日本海側出身者に言わせると雲の間から青空が見えていれば『晴れ』になるそうだ――でも眺めていれば気が晴れるのだろうか。
 それとも言葉も出ないくらい落ち込んでいるのだろうか。
 アリスは感情の動きが顔に出やすい割に考えていることが分かりにくいところがある。
 一服ひろばだというのに煙草も取り出さずに、こちらも見ずにただ隣に座っている。
 そう言えばアリスの横顔をこんなに近くで見るのは久しぶりかもしれない。普段は向かい合って座ることが多いし、学年が進んで講義で顔を合わせる機会も減っていた。
 もう少し眺めていたいけれどそのことに気づかれてしまうと少々気まずい。
 以前、執筆中のアリスを見ているときにバチリと目が合ってしまい、下手な誤魔かしをしたことがある。その時は素直に信じてくれたけれどそう何度も騙されてはくれないだろう。でもこの横顔をはじめて見たときから――

「なぁ、火村」
 不意にアリスが口を開いた。
……どうした?」
「君の意見を聞きたいんやけど。正直に言ってな?」
「あぁ」
 落選となった投稿作の感想だろうか? 推敲を重ねて磨かれていく様子を見ていたからあの作品に悪いところがあったわけではないと思うが、やはり推理小説の素人は口出しすべきでもないのかもしれない。そんなことを考えてたけれど予想外の質問を投げかけられた。
「あの雲、猫みたいやない?」
 あれ、とアリスが指をまっすぐ差す。
 ……なんだって?
……どこだよ」
 見当たらないが?
「あれやあれ、あのぺしゃってなってるみたいなやつ。両手伸ばして溶けてる猫に見えん? 構内でも見たことある気ぃするんやけど」
……見えないこともない」
「そんであれは君の部屋で雪崩を起こしている本の山やな」
 斜め上を指しながらそう言って笑う。まあ……そう見える……か?
「アリスの部屋にもあるんじゃないのか?」
「俺は一応本棚には収まってるし」
 そこからはみ出すのも時間の問題な気がするが言わないでおこう。
「じゃああれは大皿に山盛りの唐揚げだな」
「お、ほんまやな。そんなこと言うと食べたくなってくるわ。まだ学食に残ってるやろか?」
「あるんじゃないか? 今日はもう講義ないだろ? ちょうど生協の本屋も見たかったし寄って帰るか?」
「せやな。……なあ火村」
「ん?」
 さっきまでのぼんやりした顔を捨てたアリスが「がんばるしかないよな」と言う。俺への問いかけと言うよりはきっとこれは決意の表明なんだろう。
「ああ、がんばれ」
 アリスならきっと――