camellia57
2026-02-01 18:27:30
67473文字
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火アリSSメーカーまとめ

2024~2025年に書いたSSのまとめ。全年齢のみ。ごちゃまぜ
話は独立していてつながっていません。基本的にはページが後ろの方が古いです


『アリス、用事が終わったから今からそっちに向かうよ』
「ん。わかった。お疲れ、火村」
『コンビニ寄るけれどなにか買っておくものはあるか?』
「う〜ん。特にはないかな。一応冷蔵庫の中はそれなりに入ってるで? ビールも冷えてる」
『お、ありがたいねぇ。じゃあまたあとで』
 コンビニに寄っても天王寺警察署からここまで来るのにそう時間は掛からないだろう。総菜を温め直して、風呂の準備をして、ちょうどいいくらいか。
「寝床は……どうしよか……
 今日もまた、別の部屋で寝ることになるのだろうか。


 火村と付き合い始めたのは専業作家になってしばらく経った頃。きっかけは些細なことだったと思う。
 長年友人だった相手に恋人と言う肩書が追加されたからと言って、そう簡単にスイッチが切り替わるわけもなくしばらくは戸惑いの連続だった。主に私が、だが。
 急に繋がれた手を振りほどいてしまったり、背後から抱き締められて「ひぇぇ……」と情けない声を出してしまったり、ソファに並んで座った間にクッションを置いてしまったり、火村との適切な距離がわからなくなってしばらく混乱していた。
 そんな有り様だったから、所謂恋人らしい行為には中々発展しなくて、数年経ってやっと一線を越えた。それまでよく辛抱強く待っていてくれたものだと思う。
 初夜も当然すんなりとはいかず、電気を点けるか消すかで揉め、隠そうとする私と見たがる火村の攻防があり、初心者なりに準備はしたつもりだったけれどそう簡単なものではなく、身体を暴かれながら羞恥心で死んでしまうかと思った。
 正直なところ、あまりにも必死だったので最中のことはあんまり覚えていない。それでも、火村が同じ性の私の身体に欲情して、求めてくれて、泣きたくなるくらいに嬉しかった。私の身体に火村を刻みつけて欲しくて、自分から強請ってしまったような記憶が僅かにある。大好きな相手に抱かれることを知ってしまった。
 のだけれど……

 あれ以降、一緒に寝ていないのだ。
 当然二度目はない。
 
 北白川の下宿に泊まるときはまだわかる。客間で寝るときもあるし、婆ちゃんもいる。それは仕方がないことだろう。
 でも! 夕陽ヶ丘に泊まるときも別々なのだ。会う頻度が減ったわけではないし、定期的に泊まりにはくる。なのに火村はリビングで私は寝室。付き合う前に戻ってしまったかのよう。お付き合いを始めてからはいつも同じ部屋で寝ていたのに。寝室でベッドと布団に分かれた状態から枕を並べて同じベッドで寝るようになって、そして。
 ……やっぱり、男同士では違ったのだろうか。身体の関係がなくても恋人と言えるとは思う。現にそれまではそうだったわけなのだから。でも……



 悶々としたまま、夕食を済ませた火村とソファに並んで座る。ニュースを確認したいと言うのでリモコンの主導権は火村に渡した。アナウンサーが原稿を読み上げる声が遠くに聞こえる。臨床犯罪学者が呼び出されるような事件はあったのだろうか。
「アリス? なにかあったのか?」
「え? 俺? いや、特になんもないけれど……?」
 黙ったままの私の様子が気になるのか火村が気遣わしげに声を掛けてくる。
 その優しさが今はつらい。
 なにも無くはないけれどそれを正直に伝えるわけにも……。いや、思い返してみればいつも火村からで私はずっと受け身のままだった。火村の気持ちにずっと甘えていた。今回は自分からきちんと言葉にしないといけないのかもしれない。察してくれるのを待っていてはだめだ。二人のことなのだから。
 手を伸ばして、ソファの座面に置かれた火村の掌に重ねる。火村の手の温度が私に伝わってきて、冷えた指先が少しずつ温まる。手も声も震えそうになるのを堪えて、火村の目を見つめながら疑問を口にした。
「あの、な、その……今日も、…………せぇへんの?」
「しないって……なにを?」
 火村が目を瞬かせて聞き返してくる。うぅぅ……。もう、限界なのだけれど……
「俺と、い、一緒に……寝るの、もう、せぇへん……?」
 火村が目を瞠った。
 顔も耳も首も熱い。茹でられたみたいに熱くて、もうのぼせてしまいそう。
「アリス、今のってそういう意味で、合ってるのか?」
 黙って頷くと、火村が頭をガリガリと搔いて困ったように笑った。
「やっぱり、俺やと駄目やった……?」
「それは違う」
 低く唸るように答えた火村が手を裏返してぎゅっと握りしめてくる。
「そうじゃなくて。俺は、アリスに無理させたくなくて……
「無理、してへん」
「してたよ。してたけど」
「けど?」
「無理させてるのに、俺、止まれなかったし……。がっついて……気づいたらアリスがぐったりしてて……だからちゃんと大事にできるまで我慢しようとして」
 火村が言うには気を失いかけている私の姿に血の気が引いたらしい。私自身はそんなことがあったような、なかったような程度の記憶なのだけれど。
「一緒に寝ないのはそれが原因なん?」
「隣で寝て我慢するよりは違う部屋の方がまだマシ」
「我慢せんくてよかったのに」
「そういうわけには」
 変なところで真面目なやつだ。そういうところも好きだけれど今は。
「ええよ。俺、したい。君とまたしたい。君に求めて欲しい……です。君は……?」
 反対の手で顔を覆って深く息を吐いた火村が何かを決意した顔で「したいよ」と言う。
「ここでしていいの? 寝室行く? どっちがいい?」
 欲を滲ませた瞳でソファに押し倒しながら火村が問いかけてくる。
「ちょ、えっ。まっ、て、どっちって……
「それとも風呂?」
「え、え、え、」
 気づいたらシャツのボタンに手を掛けられていて、スピード感についていけない。
 い、言い方を間違えてしまった……
「お、おまかせ、します……
 ぎゅっと目を瞑って火村の身体を抱き締める。

 そこから先は……とても言葉にできない。